NAFTAとは...
昨年トランプ大統領が誕生し、テレビや新聞で目にすることが多くなった「NAFTA」はNorth American Free Trade Agreementの略で、北米自由貿易協定と訳されます。NAFTAは、1994年にアメリカ、カナダ、メキシコの3カ国によって発行された自由貿易協定で、もちろん目的は、3カ国間のモノやサービスの貿易を活発化させ、自国の経済を発展させること。通常、他国と貿易をする際には、モノやサービスに“関税”が掛けられますが、現在NAFTAの3カ国間の取引にはほぼ関税が掛かりません。
トランプ大統領が「TPP離脱」と「NAFTA再交渉」を公表したとき、多くのメディアが「TPP離脱」を連日取り上げてきましたが、「NAFTA再交渉」の行方次第ではメキシコだけではなく、日本にも多大な影響を与えることが予想されています。
「何百万ものアメリカの雇用が奪われている!」
2000年代に入りメキシコに拠点を置く日系企業が増えた理由の1つに“NAFTA”があります。比較的労働力の安いメキシコで製品を作り、世界最大のマーケット・アメリカに関税ゼロで輸出できるというメリットがあるからです!もちろんメキシコ国内需要や南米市場を見据えた設備投資でもありますが、NAFTAが日系企業に与えている影響は少なくないでしょう。
そんなNAFTAの再交渉が始まったのが昨年8月。トランプ大統領の「NAFTAの再交渉を要求する。他国が再交渉に応じなければ離脱する!」という発言が発端となりました。下の図(拡大可能)を見れば一目瞭然ですが、アメリカは輸出の倍近くの輸入を行っており、これが顕著な貿易赤字になっています。この図の数字を見ると面白いのが、「NAFTAは対アメリカ用の3カ国協定」として機能している点です。カナダ対メキシコの取引量はとても少ないんですね。
もちろんメキシコ、カナダからの輸入品が増え、アメリカ国内で作った製品が売れなくなればアメリカ国内の雇用にも影響を与えますので、トランプ大統領の「何百万ものアメリカの雇用が奪われている!」というメッセージは否定できないでしょう。
日系企業も無視できない!再交渉の行方
NAFTAによって実現しているアメリカの輸出量も少なくないので、NAFTA離脱がアメリカにとっても大きなダメージになることは予想できます。しかし、イギリスのEU離脱やトランプの大統領選勝利など市場の見方に反した出来事が起こり得る最近の政治動向を見ていると、「アメリカのNAFTA離脱」という最悪のシナリオに備える必要があります。
2017年にはメキシコに進出した日系企業の数が1100社を超え、すでにMAZDAやTOYOTAなどといった日本のリーディングカンパニーもメキシコに直接投資しています。もし、アメリカがNAFTA離脱となれば、域内の30万人の雇用が失われるほか、メキシコの経済成長の減速、メキシコ・ペソの約8%下落も予想されています。何より恐ろしいのが、トランプ大統領の権限のみで「離脱可能」なこと。そうなった場合、日系企業はメキシコとFTA(自由貿易協定)を結ぶEU(ヨーロッパ)や経済成長する南米諸国へ活路を見出したり、アメリカ工場への投資額を増やす必要があります。
第6回NAFTA再交渉開催中!
トランプ大統領が「NAFTAの再交渉を要求する。他国が再交渉に応じなければ離脱する!」と述べている限り、近いうちに関税アップなどの大きな動きがあることはほぼ間違いないでしょう。今月23日から29日までカナダ・モントリオールで開催されている第6回NAFTA再交渉の行方に全世界の注目が集まります!