メキシコ大統領選挙についての基礎知識
メキシコ大統領選挙は有権者による直接選挙で決定します。得票数1位の候補者が選出されます。現住所の近くの指定された投票所に行き、投票用紙に印刷された投票したい候補者や所属政党に印を付けます。メキシコには字が書けない人もいるので投票用紙に名前を書くのではなく、印を付けて投票できるように工夫されています。
日本のように18歳で成人し選挙権も与えられます。
次回2024年の選挙は6月2日(日)に行なわれます。
メキシコの大統領の任期は1934年以降、必ず6年と決まっていて再選は禁止されています。そのため、未だに高い支持率を誇るMORENA(国民再生運動)のロペス=オブラドール大統領ですが再選することはできません。
来年の選挙の見どころ
2024年のメキシコ大統領選挙の見どころはメキシコ初の女性大統領が誕生すると期待されている点です。
9月3日、野党連合は国民行動党(PAN)のソチル・ガルベス(Xóchitl Gálvez)上院議員を野党連合大統領候補として選出しました。続いて9月6日、与党連合がMORENA(国民再生運動)のクラウディア・シェインバウム氏(Claudia Sheinbaum)を与党連合大統領候補として選出しました。
他の候補者もいますが、次回の大統領選は事実上女性候補の一騎打ちで、メキシコ初の女性大統領が誕生すると予想されます。
ソチル・ガルベス (Xóchitl Gálvez)
野党連合、大統領候補のソチル・ガルベス氏は現在60歳の現職の上院議員です。
イダルゴ州の貧しい先住民家庭の出身ですが、エンジニアとして起業し、成功した実業家でもあります。先住民の子供や女性を支援する慈善団体も設立しました。
2003~2006年に当時のフォックス政権で先住民政策担当相を務め、2015年にはメキシコシティのミゲル・イタルゴ区長、2018年に上院議員となった経歴を持ち、事前の世論調査においても野党候補のなかではトップとなるなど有力な候補者と見られてきました。
知名度はクラウディア氏と比べると低く、大統領選挙のための準備に出遅れていると言われていますが、カリスマ性があり政治的パフォーマンスなどでメディアを使って注目させるのが上手いと評価されています。
現時点では、まだ選挙活動が解禁されていないので公約は発表されていません。
ソチル氏は公共サービスを改善すると掲げていますが、まだ具体的なことは不明です。自身がエンジニアで実業家のため、グリーンエネルギーを開発するための国営企業を設立したり、メキシコでロボット工学やAIが普及することを望んでいると言われています。
また全てのメキシコ人を尊重し、国民の声を聞くと述べました。ソチル氏が先住民、低所得家庭出身ということアピールしているため先住民や現政権が進めている低所得者層への支援は続けていくと思われます。
また保守派の政党の議員でありながら、中絶の権利を支持したり、フェミニストお支持しているなど女性へ向けての政策が期待されています。
クラウディア・シェインバウム (Claudia Sheinbaum)
与党MORENA(国民再生運動)の大統領候補のクラウディア・シェインバウム氏は61歳でメキシコシティ出身です。ユダヤ系中流家庭の出身で大学で物理学を専攻しエネルギー工学の博士号まで取得した後、エネルギー関連の研究者として活躍しました。2000年にロペス=オブラドール大統領がメキシコシティ市長であった時代に環境局長に就任しました。2015年にはメキシコシティのトラルパン区長、2018年にはメキシコシティ市長となりました。今は大統領選に集中するために市長は辞職しています。
ロペス=オブラドール大統領の側近・お気に入りとされていて、現大統領の路線を継承する考えを示しており、現大統領の人気や支持者を取り込むことができるのがクラウディア氏のアドバンテージと考えられます。一方、彼女が大統領になっても政策は今の延長となり、独自の政策があまりないと考えられています。現政権は「反ビジネス」色が強く外国からの投資を受け入れにくい政策をとっていますが、クラウディア氏もその政策を継承していくと思われます。
女性大統領が誕生することの影響
メキシコではマチスモ(Machismo)という男性優位や男尊女卑の思想や価値観が昔から現在でも根づいています。このような文化の中で女性が大統領になることでどのような変化が生まれるでしょうか?
1日に平均10人の女性が殺害されるという計算になるくらい、女性への暴力が絶えないメキシコですが、2015年から2022年に起きた女性への殺人のうち25%のみが殺人事件として捜査されました。
女性大統領の誕生によって女性への支援の増加、ジェンダー政策の変化に大きな期待が寄せられています。例えばメキシコ人女性には賃金格差、教育格差、家事や介護、無給労働の不均衡な負担、職場暴力、セクシャルハラスメント、女性に対する固定観念などの障害があります。このような女性への障害を取り払い、男性と女性が平等に権利や機会が与えられるジェンダー政策が必要です。
また両氏とも中絶の非犯罪化を支持しています。現在、強姦による妊娠ならば全州で中絶は合法ですが、それ以外の理由(母体に危険がある、未成年の妊娠など)では州法によります。日本のように自由意志で中絶できるのはメキシコシティなど8州のみです。
さらに、女性の人権が向上することも望まれています。例えば教育へのアクセスや、無給労働ではなく社会保障付きの労働などです。特に若い世代の女性たちが男性からの圧力や昔からの風習に邪魔されずに「力」を付けていくことを支援していくようです。
また女性が安心して暮らしていくために治安の改善や犯罪の減少は欠かせません。結果的には老若男女全ての国民にとって有益となることが期待されます。
今後、選挙活動が進むにつれて両者の立場や公約、優先事項などが表明されると考えられます。
参考サイト①参考サイト②参考サイト③参考サイト④参考サイト⑤参考サイト⑥まとめ
今回はメキシコ大統領選についてお伝えしました。メキシコの大統領選挙の基礎知識と2人の女性候補者の人物像について解説しました。選挙は来年2024年なのでまだ具体的な公約の発表や候補者間のディベートが行われていませんが、メキシコでは選挙や政治への関心が高いのでこれから話題になると思います。
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