「スペイン語って、難しい?」と聞かれて、「スペイン語の文法は英語よりも難しい」とよく答える。日本人にとって、英語の文法は受験勉強のせいでとかく難しいと思われがちだが、実際とても簡単だ。独学で習得可能だし、それほど深く悩むような哲学的な問題を抱えていない。
翻って、スペイン語だ。
ラテン語系の文法がそうであるように、大袈裟に言うと形而上学的な問題を多くはらんでいる。日本人が初めて習う悪名高き英文「This is a pen.(これはペンです)」からその点について考察したい。
これをスペイン語に訳そうとすると、「このペンという物体は、果たしてこれからもずっとペンという存在に甘んじるのか?それとも変化して悟りでも開いて、なにか違う物体になる可能性もあるのか?このペンという状態は一時的な状態であるのか、それとも恒常的な状態であるのか?」と考えなくてはいけない。
挙げ句の果てには、「果たしてペンというものはそもそもなんなんだ?」まで考えが及ぶかもしれない・・・・まあそれは言い過ぎかもしれないけど。
1. Ser と Estar について
あなたはこれかもずっとあなた自身であり、明日から急に隣の山田くんになるわけではない。よって、このような「変わることのない、恒常的な状態」を表す場合は、「Ser」を使う。
例: Soy de Japón. (私は日本人です。)
あなたの気分、それに彼女、彼氏の気分、物事などが変化可能な一時的な状態を表す場合、「Estar」を使う。
例:¿Cómo estás?(調子はどう?)
もちろん、例外もある。場所はなぜか「Estar」を使うし、イベントや催し物の場合は「Ser」を使う。
例:¿Dónde estás?(あなた、どこにいるの?)
La reunión es en Meguro, Tokio.(ミーティングは東京の目黒で開かれます)
この時点で日本人の我々は混乱するが、さらに混乱をするのが、「Cuál 」と「Qué」だ。
2. Cuál とQué について
よく「Qué」は英語では「What」であり、「Cuál 」は「Which」であると説明されている。残念ながらこのように理解してしまうと、一生これらを使いこなすことはできない。
上記の理解だと相手の名前を聞くときに思わず「¿Qué es tu nombre?」と聞きたくなるが、正解は「¿Cuál es tu nombre?」だ。
なぜか?
それはあなたの名前は世界中にひとつしか存在しないからだ。
だから正解はひとつであり、複数の正解はあり得ない。そして付け加えるのであれば、名前の数は限られており有限だ。そのなかのひとつがあなたの名前であるから、そのような場合「Cuál (どれ)」を使う。選択肢が無数にあり、正解が複数考えられる場合は、「Qué」を使う。
例:¿Qué hiciste ayer? (昨日、なにしたの?)この場合、昨日なにをしたのかはその人次第だし、選択肢は無数にある。よって、「Qué」を使う。また物事やその定義・意味がわからない場合も「Qué」を使う。
例:¿Qué significa 『metafísica』?(形而上学とはどういう意味ですか?)
3. スペイン語はかくも哲学的である。
陽気なメキシコ人や人の迷惑を顧みないアルゼンチン人と接していると、スペイン語がそれほどまでに哲学的だと思わないかもしれない。コロンビア人の友人がよく「私は英語が嫌い。スペイン語のほうがはるかに情緒的でセクシーだし、スペイン語で表現できることが、英語では表現できない」と言っていたが、たしかに英語よりスペイン語のほうがよりセクシーだし、哲学的でもあり、文法がより複雑なだけ、もっと込み入った表現ができることもたしかではある。
次回もスペイン語の文法をもっと深く突き詰めて、自分自身大いに悩まされた点過去と線過去について語ってみたい。
スペイン語オンラインスクールに興味がある方はこちら!海外在住の日本語通訳と企業のマッチングサイト:ワンズワードコネクト