2016/08/18

スペイン語の摩訶不思議な文法:線過去について尽きない話し

スペイン語には英語にも日本語にもない文法がいくつかあります。日本人にとって理解が難しい線過去について詳しく解説してみました。最後には簡単な問題も出しましたので、より深く理解するためのお役に立てれば幸いです!

あるとき、日本に住んでいる知り合いのアルゼンチン人が自信ありげに「こういうときは、接待というんでしょう!」と言ってきた。その場の状況を考えると、どう考えても接待が必要な状況でもなく、そもそもアルゼンチンに「接待」という概念があるのかどうかも怪しいものだと思った。

彼の地では、「世界の中心は自分」と思っている節があり、相手のために何かをしてあげるという発想がない人が多い。まあ、これはラテンの人々全般に言えることではある。

「貰えるものはもらうけど、恩返しはしない」というのがだいたいのラテン世界でのコンセンサスでもある。「アミーゴ、アミーゴ」と口では言うが、彼らが本当に信頼しているのは親兄弟、あるいは幼少時代を一緒に過ごした親友のみで、意外と赤の他人にはそっけないものだ。

そのアルゼンチン人の意味する「接待」がいまいちよくわからず、また「接待」をスペイン語で説明するのも面倒だと思っていたところ、「接待」をアルファベットで書いたから、見せてあげると言われて見てみた。

そこにはきっちりと「ZETTAI」と書いてあった。スペイン語読みだとたしかに「接待」だけど、日本語読みだと「絶対」だ。ああ、と納得し、たしかにそのときの状況と「絶対」という言葉はしっくりくるなと理解した。絶対に接待ではないことだけは事実だ・・・・

1. スペイン語にしかない概念を理解する。

あれはまだスペイン語を勉強を始めて間もない頃、アルゼンチン人の友人たち数人と連れ立ってブエノスアイレスの街を歩いていたときのことだ。

彼らのうち一人がとあるマンションを指差して、「Vivía allá. (おれは、あそこに住んでいたことがある)」と言った。そのとき、線過去の用法について思い悩んでいた自分は雷に打たれたかのように衝撃を受け、「ああ、なるほど!こういうときに使うのか!」と納得した。

線過去という概念は英語にも日本語にもないので、日本人にとっては非常に分かりにくいコンセプトだ。過去を表すときの選択肢は「点過去、線過去、現在完了形、さらに過去完了形など」が考えられる。

ただこのなかでもそのコンセプトの理解が難しいのが線過去だ。

2. 線過去の使い方

まず線過去を説明するまえに、点過去について簡単に説明したい。

(英語に慣れ親しんでいるならば、現在完了形を使う可能性を考えるが、中南米では現在完了形は「経験」を意味する場合に使う場合が多いので、ここでは説明が長くなるので省略する。)

例: Viví 3 años en Japón. (私は日本に3年住んでいました)→過去に日本に3年住んでいたことがあるが現在は住んでいない。

では、線過去の場合はどんな意味を暗喩しているのだろうか?

例: Vivía en Japón. (私は日本に住んでいたことがある。)

これは、今は日本にはおそらく住んでいないが、日本にとある期間住んでいたことがあるという意味だ。この「おそらく」というのがポイントだ。例えば、「ああ、あの人元気にしている?今、どこに住んでいるの?」とスペイン語で訊かれて、「Vivía en Japón.」と答えると、「今どこに住んでいるかは分からないが、日本に住んでいた事実は知っている。もしかしたら、まだ日本に住んでいるかもしれない」ということも暗喩することになる。

3年などはっきりとした期間が分かっている場合は点過去を使うべきだし、今住んでいることが分かっていれば、現在形を使えばいい。だが、どちらもはっきりしない場合、このように線過去を使う。

3. 線過去の典型的な使用例 その1

これでうっすらと線過去を使う時のコンセプトは理解していただいたと思う。

ポイントは「その状態が今現在続いているかどうか分からず、また特にそれを問題としていない」ときに使うことだ。

また「習慣」を表す場合も線過去を使うという多くの文法書では書かれているが、結局のところ「ある一定期間を行ったこと」すなわち習慣とも言えるので、どちらかというと結果的にそのような意味になっていることが多い。

それよりももっと重要な用法として下記がある。

例: Vivía en Japón cuando conocí a mi esposa. (私が日本に住んでいるときに、妻に出会った)

このときの主題は、「妻と出会った」ことである。そのときに住んでいたのが日本であった、それは副次的な意味しか持っていない。(なんか、難しい言い方で申し訳ないですが、ようは言いたいことは「妻と出会ったこと」であって、そのときに住んでいたのは日本であり、「何年から何年まで住んでいたとか、どのくらいの期間を住んでいたかは重要ではない」ということです。)

なんらかのアクションが起こったとき、やっていたことやそのときの状態を表すときに線過去を使うのだ。では、最後に下記の日本語をスペイン語に訳した場合、どのように書くか考えてみてください。

1. 私は日本に10年住んでいた。

2. 私は日本に住んでいる。

3. 彼は日本に住んでいたことがある。(彼は日本に住んでいたこともあるが、今日本に住んでいるか分からない。)

4. 私がメキシコに住んでいるときに、メキシコ人の彼氏と出会った。

答えを知りたい場合は、FBでもツイッターでも気軽にお問い合わせください!次回は、スペイン語の発音について語りたいと思っています。

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著者情報

紹介文: 2009年よりオンライン英会話・スペイン語スクール「ワンズワードオンライン」を立ち上げる。 https://jp.oneswordonline.com また2011年よりブエノスアイレスに滞在し、スペイン語とタンゴを学ぶ。そして、2013年より世界一周の旅に出かけてメキシコにたどり着き、それ以降2年間滞在する。 2016年5月より「海外在住の日本語通訳と企業のマッチングサイト:ワンズワードコネクト」を立ち上げる。 https://connect.oneswordonline.com

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