メキシコ合衆国中部の高原地帯にあるサカテカス州の州議員グアダルーペ・フロレス(Guadalupe Flores)氏が、地方の伝統料理文化を守るため、そして、ネズミへの嫌悪感を取り除くため、カルド・デ・ラタ(caldo de rata、ノネズミのスープ)の普及に取り組んでいます。料理に使われるノネズミは、下水のねずみとは大きく違い、とても清潔な動物だそうです。
カルド・デ・ラタが食べられていたのは、サカテカス州の植民地時代。トウモロコシやズッキーニのなどの沢山の野菜と、オレガノで味付けしたカルド・デ・ラタは、レストランのメニューにあるほど一般的ではなかったものの、大衆食堂ではよく目にされる料理でした。
高齢者の間ではカルド・デ・ラタは一種の万能薬として、風邪から糖尿病、関節炎にいたるまで、すべてを克服する力があるものだと考えられています。また二日酔いや性欲を高める効果があると評判もあり、過去には授乳中の母親にも与えられていました。
ノネズミを研究しているサカテカス自治大学教授のマヌエル・デ・ジーザス・マシアス・パティニョ(Manuel de Jesús Macías Patiño)氏によると、ノネズミはタンパク質を多く含み、ビタミンも豊富。しかし、カルド・デ・ラタの存在をよく知っている人でさえも、ネズミのスープを一般的な料理として食べることに抵抗感を持ちます。
最近、州議会の決定により、カルド・デ・ラタを試食するフェスティバルが開催されました。多くの批判もありましたが、フロレス氏は「批判も、ある意味では伝統的料理への関心に繋がります。多くの人はネズミのスープをおぞましい料理の様に扱いますが、中にはこれをきっかけに、一度は試してみたいと思う人もいます。今後は観光にも役立つかもしれない」と話しました。
また彼女は、「一度試せば、好きになる人も多いはず。ねずみの肉はチキンよりも、どちらかと言えばウサギ肉のように強い風味があります」とも語っています。
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