メキシコの大富豪カルロス・スリム・エルって誰?

世界の長者番付にいつも名を連ねるメキシコ人がいるのをご存知ですか? 彼の名はカルロス・スリム・エルです。毎年フォーブスが発表する長者番付では2018年に7位であったものの、2010〜13年の4年間はあのビル・ゲイツをおいて世界一の億万長者でした。メキシコの通信王と呼ばれるカルロス・スリム・エルとはどのような人物なのかを調べてみました。

出典 - https://www.rompeviento.tv/?p=13916

幼少期

カルロス・スリム・エル(Carlos Slim Helú)は1940年1月28日、メキシコシティ生まれの実業家です。

彼の父親フリアン・スリム・ハダッドはレバノン系の移民で、14歳の時にメキシコに移り住みました。レバノンでは15歳になると徴兵制度があり、この徴兵を避けるためにフリアンの兄たちも15歳になる前に先に国外へ出ていました。メキシコに渡ったカルロスの父フリアンは、兄たちとともにドライフードを商い成功しました。

カルロス・スリム・エル(以降、カルロス)はフリアンの3男としてメキシコシティに生まれました。カルロスら兄弟は小さい頃より父から数字や金銭感覚を教え込まれました。それぞれの兄弟が出納帳を持ち、毎週のお小遣いの管理を義務付けられていたといいます。カルロスは弱冠12歳で株取引を始めます。その一年後、13歳のときに父フリアンが他界してしまいます。

青年期

父亡き後、カルロスは勉学に励み、メキシコ最高峰のメキシコ国立自治大学に進学。土木工学を学びます。数学者として優秀だったカルロスは大学に通いながら大学で数学の教鞭をとっていました。大学卒業後は、銀行でブローカーとしてビジネスを始めます。そして1965年、25歳の時に自身の不動産投資会社「グループ・カルソ」という会社を興します。建築、不動産、採掘業への投資を手がけ成功し、26歳の時にはすでに4千万ドルの資産を所持していました。

出典 - http://bolsamexicanadevalores.com.mx/ganancias-grupo-carso/

カルソは80年代にはタバコ・自動車部品など企業買収を行い、現在は太陽光発電・石油開発・鉄道などのインフラを手掛ける国際的複合企業へ成長しています。

2度のメキシコ経済危機における成長

1982年、カルロスが42歳の時、メキシコは債務危機に陥りました。株価は下落し、国内は急激なインフレが起こり、メキシコは失業者で溢れました。当時アメリカよりメキシコの金利が高かったため、アメリカで資金を調達し、メキシコで使うといった石油関連の投資が盛んに行われていました。1980年になりアメリカの金利が上昇、メキシコの対外債務の利払いが増大し、利払いの一時停止を行ったのが原因でした。このメキシコを揺るがす財政危機はカルロスにとってはチャンスでした。「投資の鉄則は、良い物件や株式が安くなった時に買うこと。」という父の教えに従い、債務危機で弱気になった市場で優良株を底値で大量に購入。その後、経済が回復し、カルロスの資産は何倍にも増えていました。

そして1982年の債務危機から12年後、1994年にもメキシコは再び通貨による経済危機に陥ります。1994年の財政危機は、メキシコの通貨ペソに対する信認が失われ、ペソ資産からドル資産への乗換えが急速に進んだことが原因になっています。当時、この状況を受けメキシコはペソを15%切り下げましたが、それでも売り圧力には抵抗できず、変動相場制へ移行しました。この過程でメキシコ政府の外貨準備は激減し、ドルに連動した短期短期国債「テソボノス」の債務不履行が国際金融市場で危惧されました。最終的に、米国、国際機関、日米欧の民間銀行から巨額の融資を受けて終息したこの経済危機でも、カルロスは暴落した株を購入し、資産を増やしました。その資産を元手に次々に中南米の携帯電話会社を買収し、携帯電話の普及とともに彼の資産は莫大なものとなりました。

資産の使い道

「不況こそ最大のチャンス」とはよく言われることですが、それを実現するのはほんの一握りの人間です。カルロスはまさに不況を好機と捉え、世界一の億万長者になりました。現在、彼の資金の一部は社会的な慈善事業に費やされています。

出典 - http://www.alminuto.mx/2016/03/noche-de-museos-de-marzo-en-nuestras.html

彼は1994年、メキシコシティに自身の美術コレクションを収蔵する「ソウマヤ美術館(Museo Soumaya)」を設立しています。これはプラサ・ロレト(Plaza Loreto)とプラサ・カルソ(Plaza Carso)の2つの文化施設によって構成されています。亡くなったカルロスの奥様、ソウマヤ・ドミット(Soumaya Domit)の名を冠した美術館で、年中無休、入館料は無料です。2011年に建造されたプラサ・カルソは、メキシコを代表する建築家フェルナンド・ロメロの設計で、メキシコシティのシンボルとなっています。

2007年には「カルロス・スリム・エル研究所」というラテンアメリカの健康問題に関する研究所を設立し、2010年にガンと肝臓病・糖尿病に関するゲノム研究(ハーバード大学とMITの共同研究)に約58億円を出資。

2008年に「テレメックス財団」「カルロススリム財団」を慈善団体設立し、メキシコ国内の公立学校に10万台以上のコンピューターを寄贈。

出典 - https://expansion.mx/empresas/2017/12/19/carlos-slim-reduce-su-participacion-en-the-new-york-times

2009年、財務赤字であったニューヨーク・タイムズに2億5000万ドルを投資。

このように、「教育・文化・健康」へ資産を寄付・投資する社会的な貢献をしています。さらに、40年以上同じ家に住み、質素・堅実な生活を送っているとされ、会社でも複数の幹部と秘書を共有、コンサルタントも雇っていないそうです。

カルロス・スリム・エルの名言

出典 - http://www.achievement.org/achiever/carlos-slim/

・「わたしにとって何の意味もない。世界一でも、20番目でも2000番目でもどうでもいいことです。わたしにとって家族との生活、自分の時間と、仕事を両立させることが、リッチになるより重要なのです」(長者番付で世界一になった気分を尋ねられた答え)

・「世界の競合会社より良い仕事をしてきただけのことです」(億万長者になる秘訣は?と尋ねられた答え)

3月には2019年度の長者番付の発表があります。今回少し人となりを知ったカルロス氏が今年は何位なのか、その発表も楽しみです。

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著者情報

紹介文: メキシコに住み始めて1年、スペイン語を勉強しながら古代遺跡を訪ね歩いています!

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