【インタビュー】スペイン語への興味から辿り着いたメキシコ。通訳職の魅力とは。

コアウイラ州、トレオンにてTB(トヨタ紡織)ソーテックメキシコで通訳職として働く沖田有麻(ゆま)さん。今回は沖田さんに渡墨の経緯、普段のお仕事についてや通訳職の魅力についてお伺いしました。

メキシコに来られたきっかけを教えてください。

日本にいる時スペイン語を使う機会が欲しいと思い、大阪にあるメキシコ料理屋で働いていたのですが、そのお店で今の主人であるメキシコ人と出会います。その時はまだ結婚していなかったのですが、主人がメキシコに帰ることになり、私も一緒に行ってみようと思い渡墨しました。主人の出身地であるコアウイラ州、トレオンに住み始めて、最初は一年ぐらいで帰ろうと思っていたのですが、気づいたら今年でメキシコに来てちょうど10年が経ちました。

そもそもスペイン語に興味を持ったきっかけは何だったのでしょう?

小学6年生の時、当時福岡に住んでおり、私と妹・弟の兄弟3人だけで、広島に住む祖父母の家を訪ねることがありました。その時に私達が子供だけで新幹線に乗っていたこともあり、隣に座っていた知らないおじいさんが声をかけてくれたんです。その方がちょうどこれから、「世界一周する」と言っていて。しかも船で。幼いながらに、その「船に乗って世界一周する」という言葉がとても印象的でした。その後も、そのおじいさんが言っていた、「船に乗って世界一周する」という言葉がずっと心のどこかにありました。月日が経ち、19歳の時、街でピースボートのポスターを見た時、あのおじいさんが言っていたのはこういうことか、自分も行ってみたい!と思いました。

そして二十歳の時にピースボートに乗り、世界一周の旅に出ることを決めました。ピースボートでは航海中に船内で様々なクラスやアクティビティがあるのですが、私はそこで英語やスペイン語のクラスを受講しました。クラスを受講する中で、スペイン語の雰囲気がなんだか自分に合っていると感じたんです。発音がしやすかったのもそう感じた理由の一つだと思います。

世界一周の途中で中南米のいくつかの国にも寄港したのですが、実際に勉強したスペイン語がその場で使えることがすごく嬉しくて。寄港したラテンアメリカの雰囲気も自分に合っていると感じました。初めて訪れたのに、「帰ってきた」という印象でしたね。

日本に帰ってきてからも独学でスペイン語の勉強を続けました。メキシコ料理屋でバイトを始めたのも、特にメキシコ料理について知識があった訳でもなく、とにかくスペイン語に触れたいという思いからでした。世界一周から帰国した後も、将来は海外に住みたいという思いがあったので、メキシコに行くことに迷いは全くありませんでした。

振り返ると、もし新幹線でそのおじいさんの隣に座っていなかったら、ピースボートに乗っていたか分かりません。そしてピースボートに乗っていなければ、スペイン語に興味を持つことも主人に出会うこともなかったと思います。

いろんな偶然が重なりメキシコに移住されたのですね。実際にメキシコに来た印象はどうでしたか?

渡墨したばかりのころは大変なことも多かったです。主人の知り合いの紹介で、高校で日本語や日本料理を教える仕事を始めました。ただ、日本語教師の資格があったわけでもなく、完全にオリジナルの授業だったので最初はとても苦労しました。私のスペイン語もまだまだでしたので。メキシコ人の高校生は良くも悪くも無邪気で、その日本語の授業も課外授業という位置付けだったので、生徒が授業に来たり来なかったり。せっかく準備をしたのに、人が集まらない、急に学校側がバンドを呼んで今日はパーティーのため授業は中止、ということもありました(笑)思い通りに行かないことも多く大変でしたが、日本に興味のある生徒も多く、その生徒達に日本のことについて教えるのはとてもよい経験になりました。

通訳としてお仕事を始めた経緯を教えてください。

その高校に二年ほど勤めた後、知り合いから現在勤めているトヨタ紡織での仕事を紹介してもらい、通訳としての仕事を始めました。

正直、最初の3か月は大変すぎて、当時の記憶がほとんどありません(笑)

通訳の経験があったわけでもなく、最初は「何を言っているのか分からない」と言われることもしばしばでした。スペイン語の語学力もまだまだでしたし、専門用語は日本語で言われても理解できないことばかりでした。悔しい思いもたくさんしましたが、当時は会社内で日本人も少なかったので、新人の私はとにかく経験を積んで学ぶしかありませんでした。

働き始めて3・4年経ったころ、社内でも日本人が増え始め、気づくと思っていたよりも周りの人から信頼されるようになっていて、仕事をスムーズこなし、周囲の人に貢献できていると感じるようになりました。

現在のお仕事をする上でやりがいを感じるのはどんな時でしょうか?

日本人、メキシコ人問わず、仕事をする上で困っていることをまず誰よりも先に私を頼りにして相談してくれる時です。

「今こういう問題があって、どうしたらいいだろう」「最近こういうことが上手くいってないのだけど、どうしよう」というように、何か社内で問題や摩擦が生じた時、まず私に相談してアドバイスを求めてくれることがあります。問題が大きな時には、双方の意見をまず私が聞いた上で話合いの場を設けます。お互いしっかり話をすることで、双方が分かり合えて問題が解決し、みんなの満足そうな顔が見れた時は本当にやっていてよかったなと思います。

本当に重要な役割を担っているのですね。特に印象に残っている仕事はありますか?

トヨタ紡織では年に一度、全世界から各国の従業員を集めて縫製やメンテナスの技術を競う技能コンクールを日本で開催しているのですが、参加するメキシコ人スタッフに同行し、引率通訳として、日本に一緒に行かせてもらった仕事はとても印象に残っています。

トヨタ紡織は本当にグローバルな会社で、ヨーロッパ、アジア、アフリカなどの世界中各国から代表者がコンクールに出場するために集まります。全社的な大きなイベントに参加させてもらえることに感謝するのと同時に、その場にいられることが大きな自信にも繋がりました。競技に参加するメキシコ人にとっても本当に貴重な経験なので、大会で力が発揮できた時は、彼らの努力や自分のサポートが報われる瞬間でした。

通訳として苦労することや、それを乗り越える上で大切にしていることを教えてください。

通訳という仕事は本当に経験がものを言う仕事だと思います。

毎日が勉強の連続です。これはどの業種や会社にも共通して言えることですが、その業界ならではの専門用語や、その会社でだけ使われている独自の言葉があると思います。また、メキシコ人はすぐに元の言葉を変えて、通称で呼んだりします。こう言ったその土地や会社ならではの言葉を、日々の仕事の中でどれだけ覚えて自分のものにできるか。

この会社で働いて8年が経ちますが、まだまだ学ぶことはたくさんあると日々感じます。

どれだけ経験を積んでも、向上心は忘れてはいけないと日々思っています。

沖田さんのメキシコで生活する・働く秘訣を教えてください。

生活・仕事をする上でメキシコのネガティブなところにぶつかった時に、結局は自分がそれをどう捉えるかが大事だと思います。

悪いところをどうこう言うよりも、その中で何を選んで自分がどうなりたいか。メキシコのここが嫌だ、と悪い所に目を向けるのではなく、反対にメキシコには日本にはないこんな良い所もある、と転換するようにしています。

日本の良い所も悪い所も、反対にメキシコの良い所も悪い所も知っているからこそ、良い所を見て「おおらか」になるしかない。こんな良い所もあるから、悪い所も許そうと思うようにしています。

例えば、こちらの女性は美意識も高く歳を重ねても、綺麗でいたい!と思っている方が多く、とても魅力的だと思います。私も服装は割と派手な柄が好きなのですが、日本だと、どうしても人の目を気にしてしまいます。日本にいる時はその感覚があまり合わなくて。好きなものを着て何が悪いの?というメキシコの雰囲気をとても気に入っています。

このように、自分のメキシコの好きなところに目を向けて、どれだけ「おおらか」になれるかが大事だと思っています。

現在お勤めのTBソーテックメキシコでの具体的な仕事内容について教えてください。

会議での通訳が私達が主にしている仕事です。TB(トヨタ紡織)ソーテックメキシコでは、トレオンに3つの工場があり、出向者が参加する会議があれば随時それに対応するという形で、工場間の行き来もあります。

会議の通訳に加えて、業務上での日常的な日本人とメキシコ人の間のやり取りや、出向者の生活周りのサポート、出張者や来客に対するホテルやレストランの手配など、仕事内容は多岐に亘ります。翻訳も一部ありますが、常時あるわけではなく通訳の割合が多いです。

メキシコやトレオンで働く魅力を教えてください。

トレオンは車があれば生活する上で特に不便はありません。都会ではありませんが、大型ショッピングセンターなども充実しており、買い物も十分できます。治安も良く、人も親切です。外国人自体があまりいないので、みんな興味を持って親切に話しかけてくれます。親日家の人や日本に興味のある人も多いです。小さい街だからこそ、スーパーマーケットや、病院、公園などの生活に必要なものはだいたい車で15分圏内のところにあるので便利です。あと、お肉が安くて美味しいのも嬉しいポイントです。ゴルディータやローンチェ(豚肉のサンドイッチ)なども有名です。基本的に何を食べても美味しいです!またトレオンはルチャリブレの聖地で、多数のルチャドールスターの出身地です。毎週木曜日と日曜日はローカル選手とスター選手が一緒に試合をしています。ルチャリブレは生活の一部と化しています。

最後に通訳を目指す人やメキシコでの就労を考えている人に一言お願いします。

私は通訳をする上で、ただ言っていることをそのまま伝えるだけではなく、どう伝えたらお互いのためになるのか、ということを常に考えています。その人が何を求めていて、相手にどう伝えてほしいのか。その意識はとても重要だと思っています。

「これを言われたら嫌だろうな」とか「メキシコの文化上こういう風に言ってしまうとダメだな」など、相手のことをよく考えた上で双方の意見や考えを伝えるようにしています。

また日本人とメキシコ人では、時間などに関する感覚が大きく違います。その感覚の相違やずれを自分が間に入っていかに円滑に双方を繋げるかといったサポートも、通訳としてとても重要な役割だと思っています。

また、業務の合間で専門知識を勉強したり、双方が使う用語を覚える等、通訳としてのスキルを磨く努力も惜しまないで欲しいと思います。その努力をみせることで、周りから少しずつ認められ、それが信頼関係構築に繋がります。

日々このような些細なことの積み重ねですが、働く日本人、メキシコ人が少しでも気持ちよく円滑に仕事をするためのサポートができる。それが通訳の仕事の魅力だと思います。

貢献する気持ちや向上心があれば、しっかりと経験も積めるし、とてもやりがいのある仕事です。是非、スペイン語や通訳に興味のある方はメキシコでの就労に挑戦してみてはいかがでしょうか?

メキシコでの就労に興味があるという方、問合せはこちらから

今回はTBソーテックメキシコにて通訳として活躍される沖田有麻さんにインタビューをしました。通訳職に興味がある、メキシコへの就労についてもっと詳しく知りたいという方は下記の人材紹介サービス、amiga trabajoよりお問合せください。

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