クリスマスはメキシコ人にとって、家族や友人がひとつの屋根の下に集まり、この一年の思い出を語りながらみんなで食事をしたり、来年も良い年が過ごせるように願いをかける日です。
しかし、このクリスマスについて、実はメキシコではあまり語られない事実があります。この事実は、あまり聞こえの良いものでなく、どちらかというと不快で、予想し難いことばかりです。今回の記事では、そんなクリスマスに関するメキシコの闇について語っていきます。恐らく読んでいてあまり楽しくないと思いますが、それでもこれはメキシコで起こっている現実です。クリスマスは楽しいことばかりではない、いつも通り光も闇も存在している一日なのです。
支出拡大で家計は火の車
この時期、メキシコ人は友人や家族にプレゼントをあげることが習慣となっています。送ってがっかりさせないように相手が欲しい物を買いたいという考えから、少し奮発したり、今すぐ払えない場合はクレジットカードで分割払いにするなど、この時期に買わなければいけない物を購入するために、計画性など考えず、何とかして資金を捻出しようとしてしまいます。更に追い打ちとして、クリスマスパーティーにかかる費用、逆にそれに出席する際のドレスの購入費などもあっという間にかさんでしまい、お金が足りなくなることがよくあります。つまり、メキシコ人は、この時期稼いだお金以上に消費してしまうのです。そのためにお金を借りたり、クレジットを使用したり、借金を背負いながら何とか乗り切ろうというのが一般的なクリスマスの現実です。
ちなみにメキシコ人の消費行動の一端が伺えるものとして、全国小売業者協会(ANTAD)のデータによると、百貨店などの売り上げはクリスマス・シーズンだけで全体の30%も占めるとの報告があります。
カロリーもうなぎ上り
メキシコ人は毎年この時期になると、友人、家族、または会社が開くものなど、あちらこちらのパーティーに呼ばれます。そこでは伝統的なクリスマス料理が振る舞われますが、大量に用意されているため、全てを食べ尽くすのは至難です。そして、この時期メキシコ人はホテルなどで宿泊する習慣があり、そこでは油と小麦粉の香ばしい揚げものや砂糖たっぷりの甘いお菓子などに加えて、そこそこの量のアルコールも入って良い気分です。そしてカロリーはと言うと、どうしても高くなるのは仕方ありません。また、メキシコでは12月12日の聖母グアダルーペの日から1月6日の東方三博士の日までの26日の間、至る所でお祭りが開かれるため、いつも以上にたくさん飲んで、食べてしてしまうのが例年の行いです。
ある調査によると、メキシコ人はこの時期だけで3〜6キロも太るという報告があります。このようなカロリーの過剰摂取で一番被害を受けるのがお年寄りです。肥満状態に陥り、高血圧や高血糖で血管や心臓などに大きなダメージを与えます。お年寄りでこうなると、健康な状態に治すというのが難しくなるのです。
交通事故も多発
普段は遠方に住んでいる家族もこの時期は家族と過ごすため、帰郷するのが一般的です。そこで長距離移動の疲れにプラスして暴飲暴食で疲れ気味の体では普段より判断力がにぶり、安全に運転することができなくなります。
それを裏付けるデータとして、メキシコではこの時期の交通事故が通常の時期より38%も増加し、その主な原因がアルコールの飲み過ぎによる判断ミスやスピードの出し過ぎによるものなのです。
疲労+人間関係+別れ=うつ病
家族だけのパーティーだとしても疲れます。メキシコのクリスマスパーティーは親戚一同が集まるので、作る料理も10人分以上を超えることもしばしば。料理を作るだけで、喧嘩の火種となってしまうほどです。折角の家族団らんのはずが、準備にてんてこ舞いになってしまい、思いっきり楽しむこともできずに、逆にドッと疲れてしまう。それに付け加えて日本と同じように夫か妻か、どちらの家で過ごすのかを決めるだけで、かなりのストレスが溜ります。
また、もし家族の誰かが亡くなっていたなら、クリスマスに一緒に過ごした日々のことを思い出す、そんなノスタルジックな感情が包む時間が過ごせる反面、ふと現実に戻ると、そこにはもういない・・・家族を失った人には、このクリスマスは悲しみが蘇る、寂しい時間ともなるのです。
支出の拡大、パーティーの準備、そして家族の喪失など。こういった闇へと導くピースと精神的にも肉体的にもうまく付き合わないと、問題となって大きくあなたにのしかかり、うつ病などで苛まれてしまいます。バジェ・デ・メキシコ大学の心理学者レイモンド・カルデロン氏は複数のメディアで、「メキシコではうつ病の件数がクリスマスの時期に増加しており、特に女性が多い」と、述べています。もし、そのような兆候が見られる、または近くにそのような人を見かけた場合は、ちゃんとした専門医のカウンセリングを受けることをオススメします。
読んでおわかりの通り、光差すクリスマスが、その光が明るければ明るいほど、人によって憂鬱な気分にさせられる季節に・・・そのような現実があることもお忘れなく。
(提供元:mexico shimbun社 原文まま)
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