海外に魅了されたバイオリニスト徃住めぐみ ~メキシコ ハリスコフィルハーモニー管弦楽団を振り返る~

2016年メキシコ、ハリスコ州にあるハリスコ交響楽団に所属していた日本人女性、徃住(とこすみ)めぐみさん。音楽一家に生まれ、幼い頃からバイオリンを習い始めました。高校卒業後にウィーン国立音楽大学に入学されて以来、ヨーロッパを中心に活動。一度は日本を中心に活動していましたが、縁がありメキシコで音楽活動をする事に。今回のインタビューでは、徃住さんの人生や想いに迫りました。

世界中でバイオリンを弾く人生

和歌山県の和歌山市で、大学教授の父、ピアノ教師の母の元に生まれました。

バイオリンを始めたきっかけは、兄がバイオリンをしていたから自分も弾いてみたいと。極々単純な理由でした。

人生の転機は中学生の頃、父の友人のドイツ人ピアニストから音楽留学を勧められた事でした。しかし、留学は高校卒業後になります。

6年間の留学を終えたら日本に戻る事を条件に親の承諾を得て、高校卒業と同時に渡欧。ウィーン国立音楽大学も入試に合格し、留学が始まりました。

ウィーン国立音楽大学大学院修士課程を修了した後、オーケストラのオーディションを受け、ノルウェーのベルゲン・フィルハーモニック管弦楽団から仕事のオファーがあり、ノルウェーに移住することになりました。ヨーロッパに残り、バイオリニストとしての演奏活動を続ける事を決意しました。

2000年、ノルウェーの首都オスロのノーベル平和賞コンサートで、ノルウェー国立放送管弦楽団で演奏、ティナ・ターナーのバックで演奏しました。

2009年、映画「のだめカンタービレ最終楽章」のウィーンロケに参加し、2011年3月にはチェコで東日本震災津波犠牲者追悼コンサートで演奏。

トータルで25年間ヨーロッパを活動拠点にして、様々な演奏を行ってきました。

海外活動に身を置く理由

(質問)バイオリニストの選択肢として、日本でも活動可能だと思います。

何故、徃住さんは海外に身を置くことを選んだのですか?

ウィーン国立音楽大学を卒業後、日本に帰国する事を親と約束していましたが、海外に残りたかった。その理由は、ヨーロッパが日本に比べて女性の社会進出が発展しているからです。たとえば、ドイツのメルケル首相、英国のメイ首相、とヨーロッパに女性の政権トップが二人いる、というのは、女性の社会進出の著しい事の表れですね。

さらに、海外では女性が自由に生活しやすいシステムや音楽をする環境も整っています。

最初は6年のはずが、結局ヨーロッパに25年滞在しました(笑)

(質問)徃住さんの海外活動を通して思う苦悩は何ですか。

まず、仕事のオファーをいただくために、オーディションを受け、一番じゃないとオファーいただけないので、オーディションを受ける時は真剣勝負です。

次に国をまたいでの引越し。移民手続きは勤務先が手配してくれる部分もありますが、引っ越しは自分で動かなければならない為、たいへんです。

あとは海外で移動が多い時、気候の変化に体が順応するまで時間がかかる事でしょうか。

未知なる国メキシコでの挑戦

(質問)メキシコに来たきっかけを教えてください。

ヨーロッパでの活動に一旦終止符を打った後、南アフリカを経て、ブラジルのオーケストラに移りました。しかし、ブラジル滞在中に母の体調が悪くなり、拠点を日本に移そうと決意しました。

帰国後1年程経ち、音楽教室で教えながら演奏活動を行っていましたが、自分の思う様に活動出来ない、という思いがありました。私は18歳で海外に出て、人生の半分以上海外で暮らしていたため、日本での人脈をゼロから作り上げるのに苦労。それで、もう一度海外に挑戦しようと決意。

海外のオーディションを探している際に、メキシコにあるハリスコフィルハーモニー管弦楽団の応募を見つけ、オーディションに応募し、そして合格。

メキシコに拠点を移す事になりました。

(質問)様々なオーケストラに在籍してきた徃住さんだからこそ思う、他国とメキシコのオーケストラの違いは何ですか?

たとえばヨーロッパのオーケストラの中で、ドイツ、英国、フランス、北欧、東欧や南欧のオーケストラ、と演奏スタイルはそれぞれ異なり、さらに個々のオーケストラ、指揮者によって変わってきますが、ドイツと英国、北欧はオーケストラ伝統が根付いています。

ドイツや英国国内のプロフェッショナルのオーケストラの歴史が長い、ということなのですが、具体的には、使用する楽譜は質の良いものが使用されていたり、演奏者同士で一緒に合わせるコツを得ているというか、お互い演奏を楽しみながら合奏(アンサンブル)をやってきた歴史が長い、という事です。

質の良い楽譜とは、編集加工が加えられていない原典版(作曲家による初稿あるいは原典版に基づいて編集された楽譜)のことで、ヨーロッパでは演奏家がこういった楽譜を好んで使うのが主流です。

一方、メキシコではそのような伝統はありませんので、演奏家が勝手に楽譜に書き加えたり、といった“加工”もあり得ます。

そういったことは改めなければいけませんし、ヨーロッパやアメリカに留学経験のある演奏家の意見は尊重していただけます。

(質問)メキシコに来て何か苦労した点はありますか?

一番苦労したのは食べ物です。ようやく胃薬無しでご飯を食べられる様になりました(笑)

また、メキシコ人との関係もなかなか苦労しました。何時にどこでと約束をしていても忘れられたりする事が多かったです。その一方、メキシコ人はとても親切に接してくれたので、メキシコの生活文化に比較的早く溶け込むことができました。

多くの人へ自身の演奏を届けたい。

(質問)今後の演奏活動を行う上での目標を教えて下さい。

私が受けたインスピレーションや感動を音楽であらわしたい。より多くの方々に、音のメッセージを発信していきたいです。

また、ソロ活動や室内楽にも積極的に取り組みたいと思っています。

たとえばソロ活動をする際には、自分の音が全部お客さんに聞こえる為、演奏する音への責任感が、オーケストラで百人のうちの一人として演奏する場合の百倍、増します。その一方で演奏がうまくいったとき、お客さんの喝采は全部自分に向けられるので、やりがいを感じます。

2017年春、ハリスコフィルハーモニー管弦楽団を辞め、2018年8月、ノルウェーの室内楽アンサンブルMunorに新メンバーとして参加するため、ノルウェーに移住しました。世界各地で演奏して、最初に演奏活動を始めたノルウェーにずっと戻りたかったという徃住さん。「ノルウェーは自由で暮らしやすく、マイペースの私にピッタリ」と笑みがこぼれます。

Munorホームページ徃住めぐみさん ホームページ

みなさん、ノルウェーに来られたら、フィヨルド見学やダイナミックな自然を体験も素晴らしいですが、ぜひ私たちの演奏を聴きに来てください。

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