【インタビュー】和牛でメキシコのマーケットに挑む日本人ー新田翔ー

国民食といえばタコス!というイメージ通り、お肉が大量に消費されているメキシコ。そんなここメキシコで和牛を売る一人の日本人がいます。2018年にメキシコで和牛の卸売り事業を起業した新田翔さんです。なぜ彼はメキシコで和牛を売っているのか、インタビューを通してその理由に迫ります。

amiga読者の皆さんこんにちは!amiga編集長のRisakoです。

来月12月8日より、レオンの人気ステーキハウス「LA VACA」と、おなじみの日本レストラン「SATO」に和牛を使ったメニューが登場します。そこで今回は、メキシコで和牛の卸売りをしているMr.Wagyuこと新田翔さんにインタビューをさせて頂きます。

新田さん、こんにちは。本日は宜しくお願いします!

新田さん(以下:新)

こんにちは!こちらこそ宜しくお願いします。こちらは相棒のイスマエルです。

R)イスマエルさん、宜しくお願いします。後ほどイスマエルさんにもお話を聞かせて頂きます!では早速新田さんへ質問をしていきたいと思います。

メキシコで起業をしたわけ

Risako(以下:R)

新田さんはいつメキシコに来られたんですか?

新)私がメキシコへ来たのは4年半前でしたね。その時は某商社の駐在員としてメキシコに来ました。

R)最初は駐在員としてメキシコに来られたのですね。それまでは日本でサラリーマンをされていたということですか?

新)実は商社に入ったのもメキシコに来る直前でした。それまでは愛知県でトヨタ自動車の下請けメーカーでサラリーマンをしていました。

R)私、出身が愛知県なんです!新田さんも愛知のお生まれなのですか?

新)私の出身は東京なのですが、小学生の頃は父親の仕事の都合でアメリカに住んでいました。その後、中学時代は静岡県で過ごし、その後再び父親の都合でアメリカへ行きました。それで、16歳の時に日本に戻ってきたのが愛知県の豊田市でした。

R)東京→アメリカ→静岡→アメリカ→愛知ですか・・・。ほぼ帰国子女のようなものですね。

新)そうですね。アメリカに住んでいた時に身についた英語が、今の仕事にはものすごく役に立っています。

R)そして愛知に移住して、トヨタ自動車関連の会社に就職されたのですか。

新)いえいえ。愛知に移住したのは16歳の時で、高校卒業後は大学に通っていました。でも、僕には大学で勉強するということが全然合わなくて、中退して豊田市の市街地にある「パンチーズハウス」というメキシカン料理のお店で働き始めました。これがメキシコとの最初の出会いでした。もともと美味しいものを食べることと料理が大好きで、小さい頃から家でもよく料理をしていました。アメリカに住んでいた時から、隣国のメキシコにも何か不思議な縁を感じていて、メキシコ料理にも興味がありました。理由は自分でもよく分かりませんが、それまでメキシコに行ったこともなかったのに、なぜかメキシコに惹かれていました。

パンチーズハウスのオーナーがとても面白い方で、21歳で働き始めてから3年半そこで料理を学びました。そして、いつか起業して自分で飲食店を経営したいという思いがあったのですが、なにせ当時の私は頭が悪くて(笑)。起業するためには仕事の勉強をしないといけないと思い、トヨタ自動車関連の会社に就職しました。

R)当時からメキシコで起業することは決めていたんですか?

新)うーん、なんとも言えませんね。漠然と起業したいという気持ちがあったんですが、何をしようかは探り探りの状態でした。けれど、自動車関連の企業に勤めていたためメキシコの産業、経済が発展していることは知っていて、メキシコに行けばチャンスがあるのではないかと思っていました。そして、海外に飛ぶチャンスのある商社に転職することを決めました。するとその商社に就職後、本当にメキシコに行くことが決まりました(笑)。就職してから本当にすぐだったので、やはりメキシコとは何か縁があるのだな、と思いました。

R)メキシコに来てから起業しようと決めたのは、どんなタイミングだったんですか?

新)メキシコのレオンに駐在員として来てからこっちのマーケットを見て、「これはいけるな」と早い段階で気づきましたね。実際、商社はすぐにやめて和牛を使って起業しようと決断しました。やろうと決めたらすぐに行動に移すタイプなんです。

なぜメキシコで和牛を?

R)メキシコで起業を決めた時に、なぜ和牛の卸売りをしようと思ったんですか?

新)最初は自分で飲食店をやろうと思っていたんです。メキシコ在住の日本人も増え続けていることと、メキシコ人の中でも質の良い食材を好む中間層や富裕層が増えていることから、焼き肉屋なんていいんじゃないかな、と最初は思っていました。メキシコ人もお肉と脂っこい食べ物が大好きですからね。2001年から海外への和牛の輸出は禁止されていたのですが、2014年にメキシコへの輸出が解禁されて、メキシコにもわずかですが出回るようになっていました。また世界的な和牛ブームの影響もあって、和牛=高級肉というイメージがメキシコ人の間にもありました。それじゃあ和牛を使った焼肉屋を開こう、と考えていたのですが、メキシコ人が和牛に対して正しい知識を持っているかというと、そうではありませんでした。和牛を知っていても間違った知識が蔓延していたんです。正しい知識がないお客さんへ向けて和牛の焼肉屋さんをやるより、メキシコ人が経営するレストランに向けて和牛の正しい知識を提供して卸売りをする方が、メキシコで和牛の価値を広く知ってもらえるのではないか、と考え始めました。しかも、僕がメキシコに来た当時も今も、メキシコで和牛を取り扱っている業者は1つしかなかったんです。競合が少ないこの中で、日本人である僕が正しい知識を伝えながら和牛を売る。これだ!と思いました。

R)どんな間違った知識が蔓延してたんですか?

新)1998年に和牛の遺伝子が日本からアメリカに渡り、アメリカ人が現地の牛と配合し、その牛肉は神戸アメリカンと呼ばれるようになりました。アメリカで育っても和牛の遺伝子を持っていればその牛も和牛だ、という認識が生まれてしまったんですよ。同じようにメキシコのドゥランゴという地域でも和牛の遺伝子を持った牛が育てられているそうですが、育っている環境が日本産の和牛とは全然違うんですよ。本来和牛は日本では狭い牛舎の中でなるべく動かないようにして育てられ、餌も特別に配合した物を食べるので、筋肉の中であれだけの脂肪が発達するんです。けれどもメキシコやアメリカで育った和牛は広い牧地で育てられているため、かかっている手間、コスト、肉質も日本産の和牛とは全く異なります。しかし、海外産の和牛を食べてそれが本物の和牛の味だと勘違いしている人が沢山いたんです。

R)それで、メキシコ人の和牛に対する間違った知識を払拭して、正しい知識を広めるためにはレストランへの和牛の教育が必要だとお考えになったのですね。

もともと和牛の知識や業者とのコネクションはお持ちだったんですか?

新)お肉が大好きというだけで、知識や業者とのコネクションがあるわけではありませんでした。なので一から和牛の基礎を勉強して、メキシコに和牛を輸出してくれる生産者も自分で見つけました。

R)凄まじいバイタリティですね(笑)

新)そうですね(笑)。それもそうなんですが、起業当時から相棒としてビジネスを支えてくれているメキシコ人のイスマエルのおかげもあって、複雑なメキシコでの輸入手続きなども通過できました。彼にはものすごく感謝しています。

R)イスマエルさんとはどこで知り合ったのですか?

新)彼と出会ったのは偶然のようなものでした。家族でレオンの日本食レストランSATOで食事をしていた時に、僕たちが日本人ということで話しかけてきたメキシコ人に僕がやろうとしている事業の事を話したところ、「それなら紹介したい人がいる」と言われて紹介されたのが彼だったんです。彼は自身でメキシコの産品をアメリカやアジアに輸出する事業をやっていて、いわば輸出入のエキスパートだったのでとても頼りになっています。

R)イスマエルさんにもいくつか質問させて頂いてもいいですか?

イスマエル)やっと僕の番ですね(笑)。なんでも聞いてください!

R)新田さんの和牛の卸売事業の話を聞いた時、なぜ事業を一緒に立ち上げることにしたのですか?

イスマエル)翔から和牛の卸売事業を聞いた時、とても興味を持ちました。まず、メキシコ人はお肉が大好きですし、保守的な人間が多いと言っても新しいものに興味を持つ人もたくさんいます。和牛は世界的ブームになっていましたし、メキシコでも和牛ブームを起こせる可能性を感じました。翔が輸入している和牛は日本で育った正真正銘の和牛なので、素材の品質にこだわるメキシコ人の中間層や富裕層には絶対に刺さると思いました。

R)イスマエルさんも和牛は好きですか?

イ)大好きです。メキシコで一般的に食べられているお肉と全く違って、初めて食べた時は「あんなに柔らかいお肉が存在するのか」と驚きました。個人的にはメキシコ料理にも合うと思います。モレなんかとよく合いそうですね。

R)新田さんとイスマエルさんは今も一緒に和牛を売っているんですよね?

新)レストランへの営業に一緒に行ったり、スペイン語での営業は彼に率先してやってもらっています。事業立ち上げから助けられている、最高の相棒です。

R)素敵な関係性ですね!偶然でもイスマエルさんと出逢ったのは、不思議な縁が2人を引き寄せたのかもしれませんね。

お二人は主にメキシコ人が経営しているレストランへ和牛を卸しているのですか?

新)今のところメキシコ人が経営しているレストランにしか卸していませんし、これからもターゲットは中間層や富裕層が集まるレストランに絞ろうと思っています。

R)需要の面や衛生面でメキシコで和牛を売るのは難しくはないのですか?

新)衛生面に関しては、メキシコのイメージからして管理が上手くできないのではないかと思われるかもしれませんが、メキシコへ輸出する和牛は衛生管理の行き届いた食肉センターに送られて、そこで部位ごとに捌いてもらってからメキシコへ保冷剤入りの断熱材に入れて空輸便にて送ります。日本を出てから和牛を冷凍することなく、すべて冷蔵保存したまま輸送しています。和牛の赤身肉の中に水分が含まれているので、一度冷凍してしまうと解凍したときにドリップが出てしまって品質が落ちるんです。品質を落とすことなく、しっかりとした衛生の下で和牛を卸すことができています。

(写真は新田さんがメキシコで卸している和牛。サシが見事です。)

需要の面では、メキシコの和牛マーケットにはほぼ競合はいませんし、和牛=高級というイメージからか実際どのレストランのオーナーもかなり興味を持って話を聞いてくれます。やはり日本人である僕が話す和牛の知識は本物ですし、説得力もありますよね。ただメキシコ人は買うと言っても結局買ってくれなかったりすることもあるので、その辺の温度感を掴むのにはたまに苦労しますね(笑)。しかし、今のところは本当の価値を分かってくれるレストラン数件だけに卸すのが目標ですし、そうすれば必然的に和牛の認知度が上がって需要ももっともっと高まってくると考えています。現に、今回和牛イベントを開催するLA VACAに卸すことになったのも、オーナーさんが和牛に興味があって声をかけて頂いたんです。この開拓の余地がいくらでもあるマーケットに挑むのは難しくないし、むしろ楽しんでいます。

R)これからメキシコにさらなる和牛ブームを起こす日も近そうですね。今回のLA VACAの和牛イベントへの意気込みはいかがですか?

新)めちゃくちゃ気合入ってます!LA VACAはメキシコ人に大人気のステーキハウスですから、多くのメキシコ人の方に本物の和牛の味を知って頂くとても良い機会になると思います。イベントに向けてのメニュー開発から僕も加わって、当日は店頭に立って和牛についてのお客さんからの疑問にも答えていきます。

R)イベント当日が楽しみです!

最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。

新)いよいよバヒオ地区でも和牛を食べることができます。安心の品質の和牛をぜひメキシコでも味わってみて下さい。イベント会場でお待ちしています!

R)新田さん、イスマエルさん、本日はどうもありがとうございました!

最後は3人で和牛ポーズ!!楽しいインタビューでした!

和牛の卸売に関してのお問い合わせがありましたら、新田さんへご連絡ください。

電話番号:4773930550

メールアドレス:contacto@wagyutesorodejapon.com

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