2019/03/13

【今更聞けない】車社会メキシコにおけるガソリン事情徹底解説

長年メキシコのガソリン市場を独占していたメキシコ石油公社(PEMEX)やガソリンの自由化に伴い進出した企業、メキシコのガソリン、その他メキシコにおけるガソリンを取り巻く様々な事情を一挙に解説していきます!

出典 - https://noticias.autocosmos.com.mx/2016/12/27/nuevos-precios-de-la-gasolina-para-mexico-en-2017

ぺメックス(PEMEX)の独占崩壊とガソリン自由化とは?

ぺメックス(PEMEX)とはメキシコシティに本社を置く国営石油企業で、長年にわたりメキシコにおけるガソリン市場を独占していました。2000年に入ってからメキシコ政府よってぺメックスの独占分野であったガソリンとディーゼル燃料の流通が解放され、ガソリンスタンドの経営も自由化され、補助金により市場価格よりも低く抑えられていた統制価格も2018年に完全自由化されました。このようにして急速にペメックスの独占が崩壊し、市場の自由化が進んでいます。

産油国なのにガソリンを輸入??

メキシコで使用される石油の大半はアメリカから輸入しています。実はメキシコは産油国なのですが、残念ながら製油技術がそれほど高くありません。従って現状は需要をアメリカからの輸入に頼っています。昨年大統領になったAMLO氏は「ガソリンの値段を上げないこと」、「数年以内にアメリカからのガソリンの輸入をやめ、国内で需要をまかなう」ことを掲げています。

メキシコといえばPEMEX!!

出典 - https://www.elsoldetoluca.com.mx/local/urge-revisar-permisos-y-legalidad-de-gasolineras-2908801.html

それではメキシコでガソリンスタンドを経営している企業を一部紹介します。

まず、欠かせないのが先述したペメックスです。自由化が行われていると言えども、現状メキシコにおける製油機能を持っているのは国営のペメックスのみで、メキシコのガソリンの輸入の90パーセント以上をペメックスが行っていることを考えると、近年メキシコに進出している企業もペメックスとの関係を完全に断つことはできていないのが現状といえます。たとえば後述するBPは、少なくとも2019年以内には独自のルートでガソリンを仕入れることはしない、すなわちペメックスから購入することを発表しています。

日本でもおなじみのモービルとシェル!

出典 - http://www.noreste.net/noticia/shell-invertira-mil-mdd-en-mexico-para-la-apertura-de-gasolineras/

続いてメキシコだけでなく、日本でも見かけるおなじみのロゴのモービルとシェル。メキシコにおいてガソリンスタンドを経営するようになったのは自由化の後ですが、シェルは60年以上、モービルは70年以上前からオイルのメーカーとしてメキシコでも製品を取り扱っていました。モービルの親会社、エクソンモービルは、ペメックスには頼らず、独自の鉄道網でテキサスからメキシコのグアナファト州までガソリンを輸送することを2017年12月に発表しています。

BP(ブリティッシュペトロリアム)

BPはエネルギー関連事業に従事するイギリスの多国籍企業です。2010年に起こったメキシコ湾における原油流出事故を覚えている方も多いのではないでしょうか。あまり日本では見かけない企業ですが、1960年代から日本でも支社や営業所が設置されています。メキシコにおいては、最も早くガソリンスタンドを設立した国外の企業で、他の国外企業が進出する火付け役となったと言っても過言ではありません。

メキシコのコンビニ、ガソリンも売ります。

出典 - https://www.globalmedia.mx/articles/Falta-de-gasolina-afecta-a-estaciones-de-Oxxo-Gas

興味深いのがオクソガス(OXXO Gas)とペトロシエテ(Petro7)。こちらは名前の通り、オクソとセブンイレブンが経営するガソリンスタンドです。メキシコでナンバーワンのコンビニ、オクソと世界的に確立された地位をもつセブンイレブンがガソリン業界にも進出しているんです。オクソガスは2017年11月にペメックスの最初の提携先としてガソリンを提供することを署名しており、国内の企業ということも重なり、ペメックスとの繋がりは最も強い企業と言えます。

なんでメキシコのガソリンは「ベルデ」なの??

出典 - https://expreso.press/2018/11/23/quitan-estimulo-fiscal-a-gasolina-magna/

ペメックスの独占が崩壊した後にメキシコへ来られた方なら「なんでメキシコのレギュラーガソリンは「ベルデ(緑)」と呼ばれているの?」と思った経験があるかもしれません。日本でのイメージはレギュラーガソリンが赤色でハイオクガソリンが緑色ですよね。メキシコのガソリンの呼び方は、ペメックスの取り扱っている色に基づいた慣習なんです。レギュラーガソリン(Magna)が「ベルデ(緑)」と呼ばれ、ハイオクガソリン(Premium)は「ロハ(赤)」と呼ばれています。また、ディーゼルガソリンは黒地に白い文字で書かれており、この3つの色でメキシコの国旗の色を表しているそうです。その後進出したBPやモービルなどはペメックスのガソリンの色を踏襲していませんが、慣習的にベルデとロハで通じますので、ご安心を。

ちなみにメキシコのガソリンスタンドでガソリンの横にかかれている小さな数字はオクタン価(高いほど異常燃焼、ノッキングが起こりにくい)を表しています。日本では一般的なレギュラーガソリンは90程度、ハイオクガソリンはほぼ100であることを考えると、メキシコのガソリンはやや低めです(ベルデは87、ロハは93程度)。オクタン価を見るとメキシコのロハ(Premium)もどちらかというと日本のハイオクガソリンよりもレギュラーガソリンに近い数値になっています。

Grupo Riveroという自動車を扱う会社によると、ベルデ(Magna)は硫黄の含有量が多く、長期的な車の使用を考えるとロハ(Premium)のほうが推奨されています。ただし、推奨ガソリンはオクタン価のみで決定される訳ではありません。ベルデとロハでは成分も異なるため、あくまでもメーカーの指示に従ってください。

まとめ&ガソリンにまつわるタイムリーな話題

いかがでしたでしょうか。今回の記事ではガソリンにまつわるメキシコの事情をまとめました。

「ガソリンありません」との表示

最後になりますが、本年1月、ウワチコレロ(huachicolero)と呼ばれる燃料やアルコール飲料を盗むグループからガソリンを守るため、グアナファト州サラマンカにあるガソリン供給のパイプラインを封鎖し、輸送車によるガソリンの輸送を行うと発表がありました。その結果、グアナファト州をはじめメキシコ各地でガソリンが手に入りにくい状態が続いています。

メキシコ政府はガソリンが不足しているわけでない、と繰り返し訴えていましたが、いつまでに事態が収拾するという正式な発表はありませんでしたが、1月19日土曜日から、一時的、また部分的にサラマンカのパイプラインを開放するとの発表がありました。残念ながら1月19日現在、パイプライン解放は保留とされています。経済的な影響も指摘されている現在、一刻も早い状況の回復を願うばかりです。

1/1
お気に入り

著者情報

紹介文: メキシコ在住。メキシコという国を日本の皆さんにとって、より身近な国にすることが目標。

特集

amigaピックアップ