2019/07/21

間違えたのは私ではなく指??言い訳必須のメキシコ人の会話術

当然のことですが、メキシコの文化は日本のものとは異なり、メキシコ人の考え方と私たち日本人の考え方が必ずしも一致するとは限りません。今回の記事では私たちの感覚や考え方との違いが表れたメキシコの表現を紹介します。

今が今ではない?

スペイン語で「今」を意味する言葉はahora(アオラ)ですが、メキシコでは日常的な会話の中で縮小辞が頻繁に使われるため、ahorita(アオリータ)の方が好まれています。

※縮小辞とは「小さい」や「かわいらしい」意味を持たせるために使用されます。hoja(紙) ⇒ hojita (小さな紙)になったり、perro(犬) ⇒ perrito(ワンちゃん、小さな犬)になったりし、その対象に対して愛着を感じさせるような使い方もあります。

上記で紹介した例でいうと、ahoritaは「今」よりも時間的に「少なく」なり、本当に「すぐ」であるかのように考えられますが、メキシコでの感覚からするとそうではありません。

例えば、メキシコ人がよく使う例として「Ahorita llego」(アオリータ・ジェゴ)が挙げられます。これはそのまま直訳すると、「今着きます」となるため、私たち日本人からすると「5分くらいで着くのかな?」と思ってしまいがちです。しかしながらメキシコ人がこう言う場合は、少なくとも15分、人によっては1時間以上時間がかかることもあります。

また、何かお菓子などを勧めた際に「Ahorita no, gracias」という返答が返ってくることがあります。これは「今は要らない=あとでもらう」という意味で使われることは少なく、「要らない」という意味であることが一般的です。

この応用として例えば何か仕事をお願いしたとき、「Ahorita」と返答が返ってきてしまった場合、上記の例に従って、すぐにそれを実行してくれる保証はありません。本当に急ぎである場合など、日本人である私たちはストレスを感じてしまうこともありますが、彼らは悪気はありません。すなわち、この「Ahorita」という言葉に時間の幅が見受けられることを理解した上で、コミュニケーションを取ることができればいいですね。

Lo que pasa es queについて

つづいて「Lo que pasa es que」(ロ・ケ・パサ・エス・ケ)です。直訳すると「(今)起きていることは~」となりますが、簡単に言えば「実は」と言った表現です。

この表現が使われた場合、基本的に話し手には理由、もしくは言い訳を伝えたい意図があります。通訳などでスペイン語から日本語へ訳すなどの経験がある方はご理解いただけると思いますが、メキシコ人は基本的に質問された場合にそれに直接的に答えることは少なく、一歩ズレた視点、もしくは始めに状況の説明や言い訳が入ることが多いです。

例えば「例の書類の件、先方への提出は済みましたか」という質問に対して、「実は(Lo que pasa es que)、他の担当者からの相談を受けていました。」といったように、質問に対してはっきり答えず、出来ていないことをほのめかします。そして責任を回避するようにその言い訳を伝える、こういった会話の仕方が見受けられます。

また、ここで使用される具体例もわかりにくいことが多く、結論との結びつきも弱いため、「何が言いたいの?」と思ってしまった経験がある方も多いことでしょう。

スペイン語は責任逃れをしやすい言語!?

何かを忘れてしまったときに使われる表現が「Se me olvidó」(セ・メ・オルビド)です。この表現の面白いところは、主語は忘れてしまった対象であり、あくまで「私」は「me」で表されるように「起点」を表します。すなわち、私はあくまでもそこにいて、ものが私に忘れさせたという意味合いになります。

例えば、「Se me olvidó dinero」と言えば「お金を忘れた」ですが、直訳すると「お金が私に忘れさせた」となります。同様に何かを落としてしまったときには「Se me cayó」(セ・メ・カジョ)、「私から落ちた」が好んで使われます。

もちろん、単純に「Me olvidé」、つまり「私が忘れた」などということもできますが、本当に自分に責任があることを認めてしまうため、使用頻度はかなり少ないです。

「今、ごみ捨てたでしょ?」「違うよ、se me cayó」(捨てたんじゃなくて私から落ちたんだよ)といった冗談めいたやり取りも面白いですね。

指が間違えた??

書き間違いに関しても面白い表現があります。私たち日本人の感覚ですと、「Escribí mal」(エスクリビ・マル)、「私が正しく書かなかった」と言いたいところです。しかしこの場合、よく使われるのが「Fue un error de dedo」(フエ・ウン・エロール・デ・デド)です。直訳すると「(それは)指のミスだ」となります。

すなわち、私が書き間違えたのでなく、あくまで責任は指にあるとほのめかす表現です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。国が変われば言葉も異なるのは当然ですが、その背景にある文化や考え方も異なります。

メキシコ人とよりよいコミュニケーションをとるためにも、メキシコでは日本とは違う考え方、話し方をするということを覚えておくと、誤解やいらだち等も減ることかと思います。

1/1
お気に入り

著者情報

紹介文: メキシコ在住。メキシコという国を日本の皆さんにとって、より身近な国にすることが目標。

特集

amigaピックアップ