2019/03/27

アメリカへの移民は実はメキシコ人じゃない?メキシコの移民問題

トランプ大統領の「国境の壁」建設から、大きな注目が集まるようになった移民問題。移民問題と聞くと、メキシコ人がアメリカへ移住することが想像されるかもしれません。しかし、実際にアメリカへ国境を越えているのはメキシコ人でなかったり、メキシコへの流入移民がいたりすることはご存じでしょうか?

出典 - https://www.businessinsider.jp/post-185410

移民のなかにギャングの構成員が交っているといわれるなど、治安と移民の問題は切っても切り離せないものとして扱われます。なかでも、メキシコに関わる移民の問題は、トランプ政権の国境の壁の政策やその発言によって注目も集まりました。しかし、実際のところ、私たちが耳にするニュースや情報は表面的であり、この問題に関してまだまだ知らないことの方が多いのではないでしょうか。そんなメキシコに関わる移民の問題に今回はフォーカスを当ててみます。

流入移民

メキシコへ流入している移民は、主に中米北部三角地帯とよばれる、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルの人々です。その移民の大群は「移民キャラバン」と呼ばれています。当初、この移民キャラバンはアメリカを目的地とし、亡命を試みる集団でした。しかし、トランプ政権が亡命申請をする移民を減らすために、1日の申請者数に上限を設け、亡命申請ができる資格の基準をより厳しくするなどの政策をとりました。このことから、アメリカへの亡命を諦め、自国に還る、もしくはメキシコに残るという選択肢をとる者も現れました。ニューヨークタイムズ紙によるとおよそ6,000人の移民キャラバンに属していた人のうち、1,000人が自国へ帰国し、1,000人がメキシコに残るという選択をしたといいます。

移民の原因

出典 - https://www.notimerica.com/sociedad/noticia-dos-maras-mas-peligrosas-salvador-podrian-unise-atacar-funcionarios-estado-20170929154602.html

多くの人が自国を離れ、亡命を試みる主な要因は「貧困」と「暴力」です。ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルの3国は貧困率が非常に高いほか、一般的に「ギャング」と呼ばれる「マラス(las Maras)」などの大規模な暴力集団が蔓延しています。若年層の男子はこのような組織に強制的に徴兵され、女子は性的な搾取に遭うなどの被害が出ています。また、特にホンジュラスは、殺人件数が非常に高く最も危険な国の1つに数えられているほか、そのほかの2カ国に関しても「マラス」にかかわる暴力事件や殺人事件が後を絶たないという状況です。このような現状から、人々はアメリカまで約4,000kmをかけてまで亡命するという選択に至っています。

移民キャラバンに対するメキシコの動き

拡大しつづける移民キャラバンに対し、メキシコ政府は参加者のアメリカ行きの意志を尊重はしつつも、メキシコでも受け入れられるような体勢をとっています。自治体や市民が救援物資として飲食物をキャラバン参加者に提供したほか、国としてもオアハカ州かチアパス州にとどまることを条件に一時的な滞在許可証の発行や、医療サービスが受けられる態勢を整えたり、希望する人が自国に無事に還れるような手助けをしたりしています。しかし、滞在許可や自国への還る手助けを受ける者は、少数に留まっていることもまた、現状です。移民キャラバンの人々がアメリカを目指す背景として、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルと比較すると治安もよく働き口もあるメキシコですが、アメリカに比べると低賃金であることなどがあります。

メキシコからのアメリカへの不法移民は減少傾向

出典 - https://www.cnn.co.jp/usa/35073844.html

アメリカ合衆国では、同国におけるヒスパニック系移民の増加が危惧されています。メキシコとの国境に壁を建設するという政策の背景にもメキシコからの不法移民の問題があるとされています。しかし、近年メキシコからの不法移民は減少傾向にあり、現在のヒスパニック人口の増加は自然増加が中心となっています。

まとめ

トランプ政権の国境の壁を建設するという政策によって、不法移民の問題は以前に比べてより広く知られるところとなりました。しかし、その現状は一般的な理解とは少し異なっているのではないでしょうか。メキシコやアメリカ、中南米を取り巻く移民問題は、一つの視点だけでなく、様々な面から見つめることが大事です。

参考

日本経済新聞ニューヨークタイムズ
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紹介文: 旅行とファッションと美味しいものが生きがいで、最近は写真好きが高じてSNSにはまっていたり…そんな私だからこそな記事をお届けします。(amiga編集部所属)

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