「Yogome」とは2010年にマノロ・ディアスとアルベルト・コリンによって設立され、4歳から10歳までの子供のための教育用ビデオゲームを製作していたスタートアップ企業です。創業者は二人ともサン・ルイス・ポトシの出身で、市内の学生向けにデジタル教育コンテンツを開発した後Yogomeを立ち上げました。
アメリカへの挑戦
YogomeのCEOとCCOであった二人は、2011年に資金調達のためシリコンバレーに足を運びました。試作品を持って行ったのですが、投資の可能性があった投資家のなかで、彼らの考えに共感するものは誰一人いませんでした。
傷心してメキシコに帰った二人は、製品の改良に勤しみました。その後Mexican. VCの創業者であるサンティアゴ・サバラの目に留まり、3万ドルの投資を受けました。その資金を基に二人はYogomeの戦略を再構築し、モバイルアプリケーションの開発を始め、2012年に再び渡米しました。
今回は、シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタル、500 Startupsの説得に成功し、10万ドルの投資を受けました。Yogomeは500 Startupsの「加速プログラム」に参加し、500 Startupsのメンターとコラボレーションを行い、シリコンバレーの多くの起業家から刺激を受け成長していきました。
多くの投資により飛躍
2013年にはGoldman SachのマネージャーやOpen Englishの取締役会のメンバーなどから、Yogomeにとって初の巨額投資となる75万ドルの投資を受けました。これにより、さらなる製品の開発と会社の規模拡大が可能になりました。その年の終わりまでに、アプリケーションは60万ダウンロード、合計プレイ時間は110万時間に達しました。同年、マノロ・ディアスは「Entrepreneur Endeavor」に選ばれ、YogomeはEndeavourと加速プログラムを開始しました。
2016年には、Variv CapitalやTopaz Capital, 500 Startupsなどから300万ドルのシードキャピタルを受けました。そして、2017年5月に、660万ドルのシリーズA投資ラウンドを発表しました。
2018年3月、Mexican.VCは彼らが持っていたYogomeの株をInsight Venture Partnersに売却し、投資に対し30,000%のリターンを得ることができました。そしてその5日後、YogomeはシリーズB投資ラウンドを発表し、Exceed Capital Partnersなどから2690万ドルを調達しました。当時Yogomeのアプリケーションは、アメリカ、ラテンアメリカ、東南アジアを中心に50か国、月間600万人のアクティブユーザーを抱えていると発表していました。
マノロ・ディアスに対する詐欺の告発
10年足らずで急激に成長したメキシコのスタートアップ企業「Yogome」は、2018年9月にその創業者、マノロ・ディアスによる詐欺が発覚し、倒産に至りました。ジネスウェブサイト「Expansión」によると、マノロ・ディアスは、Yogomeの投資家やパートナー、従業員に公開していた情報を操作し、さらにApp Storeにおける彼らのゲームに関するデータを偽造していたそうです。Yogomeの従業員が公開されているデータと経営陣から報告されたデータの相違に気付き、調査が行われ、最終的に会社は倒産に追い込まれました。
世界的な問題
Yogomeの事例は、近年ラテンアメリカのビジネスで最も議論されている問題のひとつですが、これはラテンアメリカに限る問題ではありません。企業価値90億ドルとされていたTheranosの創業者エリザベス・ホームズらが研究結果を偽り、詐欺などの容疑で起訴されたのも昨年の話です。実際に、こういった問題が最も先進的なベンチャー企業でもみられています。
Startup Mexicoの投資ファンドDux Capitalのマネージングパートナーであるダニエル・サンタマリナはYogomeで起きた問題を受け「投資家は投資先の製品や市場などの重要な要素を十分に分析し、投資をする前に厳格な予防措置を講じる必要がある」と注意を喚起しました。