メキシコが誇る「アガベベースの蒸留酒」の需要が高まり、近年テキーラ業界における競争が激化し、M&Aが増加しています。アメリカを筆頭とするテキーラ消費国は年々増えており、テキーラの需要も右肩上がりです。
今年は、テキーラの巨大な市場となっているメキシコやアメリカでは1~2%の成長、新たな市場として開拓を進めているアジアや中南米、アフリカでは10%を超える成長が期待されています。このテキーラ業界の繁栄を背景に、テキーラの周りで過去には見られないほどの大きなお金が動いているんです!
有名テキーラメーカーの買収
2018年には、世界最大級の酒造メーカーであるバカルディが、世界的に有名なテキーラブランド「パトロン」を保有するパトロン・スピリッツ・インターナショナルを51億ドルで買収しました。パトロンは、そのリッチかつスムースな味わいでアメリカではもちろん、日本でも人気なプレミアムテキーラです。この騒動はテキーラ市場におけるM&Aの傾向をより強くしました。
同じく2018年、ワイン・スピリッツ界を牽引するペルノ・リカールは、当時残っていた16%の株式を購入しアビオンテキーラの買収を完了させました。価格は公開されていませんが一部の専門家によると、その価格はおよそ1億ドルと推定されています。
ジョージ・クルーニーとその友人によって創業されたテキーラメーカー、「カーサミーゴス」がイギリスの酒類大手「ディアジオ」によって最大10億ドルで買収されたのではというニュースも有名です。
このニュースを受け、アナリストらは、今回の買収価格が高すぎる可能性があるとの見解を表明しました。蒸留酒の分野において、平均的な買収額は、年間売上高の4~6倍なのですが、今回の買収金額は、カーサミーゴスの年間売上高の20倍に相当しているのです。またニューヨーク証券取引所では、ディアジオの株価が1.75%下落しました。
今回の買収は、果たしてディアジオの成長の鍵となるのか、経営の足枷となるのか。ディアジオの今後に注目です。
高級テキーラの人気上昇
ジェフリーズの株式調査アナリスト、エドワード・マンディは、「過去3年間でアメリカのスピリッツの成長が約4%だったことに対し、スーパープレミアムテキーラは約10%、ウルトラスーパープレミアムテキーラは30%以上成長している。そのためテキーラがより高い確立で、より速い成長をする可能性があるという認識が広まり、テキーラ業界のM&Aを推進している。」とコメントしています。
上記の買収を行った3つのコングロマリットは全て、既にその製品の一つとしてテキーラを保有しています。近年のM&Aは、高級感のあるボトリングを扱うブランドに集中しています。この傾向はスコッチウィスキーに似たもので、人気ブランドのテキーラの多くは数量限定で、高値で販売されています。例えば「パトロン・シルバー」は750mlボトルで約40ドルで販売されていますが、パトロンブランド初のエクストラ・アネホテキーラは限定品として2016年に発売され、約400ドルの値が付けられました。そして昨年10月に発売されたパトロンの7年貯蔵限定テキーラは、フランスの高級クリスタルブランドであるラリックによるボトルを用い、1本7,500ドルで販売されました。
これは今後のテキーラ業界にとって何を意味するのでしょうか。
「ハイエンドテキーラに対する近年の関心はテキーラ業界にとって朗報だが、需要の増加を考えるとアガベの価格が圧力を受ける可能性がある」とマンディは言います。長期的に見ればこれは生産者の利益を圧迫し、テキーラ全体の価格を高騰させる可能性もあるでしょう。
今後のテキーラ業界に注目です。