テキーラ輸入大国アメリカ
メキシコの隣国であるアメリカは、メキシコから輸出されるテキーラの80%以上を輸入しています。輸入量だけでなく、消費量でも存在感の増すアメリカ。なんと本場メキシコを抑えてテキーラの消費量が世界一位なんです!
以前はショットやカクテルとして飲まれるのが主流であったテキーラですが、近年では、ウォッカやウィスキーのように『嗜むお酒』として扱われるようになってきています。2016年のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利した際には、メキシコ経済への懸念が高まり、ペソはドルに対し過去最安値に沈みました。それでもテキーラの人気は冷めるどころか、さらに高まりました。
近年では、ハリウッドスターなどの富裕層を中心に、テキーラの原料であるアガベを100%使用した「プレミアムテキーラ」と呼ばれているテキーラの人気が高まっています。ジョージ・クルーニーなどの有名セレブの中には、自らテキーラを手がけるほどテキーラに魅了されてしまった人も少なくありません。
重要な輸出相手、日本
テキーラの消費国と聞いて、日本を連想する人はほとんどいないと思います。ですが、日本はメキシコにとってとても重要な輸出国だということを知っていましたか?輸出量としてはアメリカほどではありませんが、日本を始めとするアジア諸国にテキーラを輸出する場合は、アルコール度数が40度以下でなければならないという条件があります。これに準ずる工程によって価格が上がることや、日本で消費されるテキーラの多くがプレミアムテキーラであることにより、実は日本はテキーラ輸入国のうち、1リットル当たりの輸入額が最も高い国となっているのです。
世界のテキーラ需要
ここ数年、アメリカだけでなく世界中でテキーラ人気が目立っています。テキーラの振興やブランド保護に努める全国テキーラ産業会議所(CNIT)のロドルフォ・ゴンサレス会長によると、今年は、テキーラの生産・輸出どちらも前年比5%増を見込んでいるそうです。テキーラの巨大な市場となっているメキシコやアメリカでは1~2%の成長、新たな市場として開拓を進めているアジアや中南米、アフリカでは10%を超える成長が期待されています。
テキーラ人気によるアガベ不足
テキーラの主原料はアガベと呼ばれる大型の多肉植物です。アガベには様々な種類がありますが、テキーラのための使用が許されているのは、メキシコの定められた5つの州の「アガベ・アスール・テキラーナ(英名ブルーアガベ)」という品種のみです。この原料の栽培から生産、出荷まで全てをテキーラ規制委員会(CRT)が管理しています。
テキーラ造りにはこの植物の茎のみが用いられます。さらに、原料のうち半分以上アガベを使用しなければならないという規定があります。これだけでも大量のアガベが使用されるのですが、加えて近年は、先述した「プレミアムテキーラ」(アガベ100%のテキーラ)の人気が急上昇しているため多くのアガベ必要になっています。
これらの理由から、近年アガベ不足が深刻化しています。それに伴い、アガベの価格が2016年から2018年の2年間で6倍にまで跳ね上がり、テキーラメーカーに大きな影響を与えています。
ビールやウイスキーに使用される穀物などのように、お酒の原料は単年で収穫できるものがほとんどであるのに対し、アガベは成熟するまでに6年以上かかり、より長い期間育てたアガベのほうが価値があるともされています。このため、テキーラの需要が高まったからと、すぐにアガベの供給を増やせるわけではないのです。
アガベ不足は今後も続くとみられている一方で、テキーラの生産も伸び続け、今年の生産は昨年から3.5%の成長し、生産量は3.15億リットルに達すると予想されています。アガベの価格高騰を受けたアガベの窃盗や小規模メーカーの倒産など、様々な現象が巻き起こっている「テキーラ業界」の今後に注目です。