「メキシコのシリコンバレー」と呼ばれているグアダラハラ。スタートアップ企業が数多くあり、インテルやHP、オラクルといった豊富な資金を持つ多国籍企業も進出し、メキシコにおけるテックイノベーションの発祥地になっています。
グアダラハラの発展
現地の地方当局は十分な資金と人材をハリスコに集め、この土地をグアダラハラから沿岸都市プエルトバジャルタへと繋がる産業回廊にすることを、中期的な目標に定めています。さて、今では「メキシコのシリコンバレー」と呼ばれるグアダラハラですが、実は本場アメリカのシリコンバレーとは30年以上も前から密接な関係を築いています。当初前者は後者の製造拠点として機能し、その後ソフトウェアプロトタイピングセンターとなりました。さらに最近では、アメリカ企業のためのソフトウェアとアプリケーションの開発に特化し、「メキシコのシリコンバレー」と呼ばれるようにまで成長しました。そうは言っても、アメリカのシリコンバレーが受けているベンチャーキャピタル(VC)投資はグアダラハラよりもはるかに多く、2つの場所はまだ完全に対等ではありません。しかしグアダラハラの新しい俗称は、実際にグアダラハラが発展しているという現状を表しているのではないでしょうか。ハリスコ州の公式統計によると、15を超える大手IT企業と1,200のスタートアップ企業がこの地域に拠点を置いています。
その発展の裏側には
グアダラハラのIT専門化の成功には、いくつかの根本的な要因があります。それは地理的および文化的にアメリカに近いといった利点など、一般に広く知られていることが大きく関係します。詳しく挙げるとアメリカの多くの地域と同じタイムゾーンであること、バイリンガルの人口が多いことなどです。これらの特徴は、現在同じく発展を遂げている東南アジアの地域よりも、グアダラハラが好条件といえる要素です。トランプ大統領の移民政策による影響はごく最近のもので、今後傾向は強まると予想されています。実際、DACAという違法移民の保護を目的とした法案の撤廃や、シリコンバレーで働くための就労ビザ取得の複雑さに直面し、多くの若者や開発者がグアダラハラで働くことを選択しています。しかし「メキシコのシリコンバレー」は、アメリカから恩恵を受けるだけではありません。 ハリスコ州は、メキシコのデジタル革命を主導するための取り組みを率先して行ってきました。例えば、2018年4月にはインダストリー4.0クラスターが発足しました。知識ベースの経済発展を促進するためのイノベーションモデルの一例として、この産業クラスターは地域政府、学界、民間部門の連携を促しています。この代表は、サンフランシスコにあるハリスコ州の国際機関であるセントロハリスコの一員となり、ハリスコ州のITエコシステムとシリコンバレーの連携係となります。
さらなる発展のために
さらに、公的資金による「ハリスコネクトプログラム」は、いくつかの施策を開始しています。まず、ハリスコ州のIT企業エコシステムに参加する意思のある人の向けに、サンフランシスコのメキシコ領事館から「ハイテクビザ」が、申請から24時間以内に発行できるようになりました。その後も国内外の起業家をグアダラハラのインキュベーター(企業を支援する事業者)と組み合わせるために開始された、デジタルブリッジ施策が続いています。また、様々なサービスを通じて起業家を支援するためのプログラムもされています。
こうしてグアダラハラでは米国企業にITサービスを提供するのみならず、地元のスタートアップエコシステムも繁栄しているのです。ハリスコ州企業振興基金(Fojal)のシコテンカトル・メンデス氏は、「まず、ハリスコとシリコンバレーのITシステム全体の橋渡しをしてからハリスコにベンチャーキャピタルを呼ぶ必要があります。」と述べています。2017年には、11社のVCファンドがハリスコ州のファッション業界およびその他のクリエイティブ業界を中心に投資しました。ハリスコ州は2025年までにエンジニアの需要が250%にまで急増し、グアダラハラにおけるハイテク産業の発展をさらに促進すると推定しています。2018年4月、グアダラハラはラテンアメリカで最大のテクノロジー展示会「タレントランド」を開催し、ハイテク業界に職を求める3万人の学生と若い専門家がこのイベントに参加しました。
まとめ
その市場規模からグアダラハラを「シリコンバレー」と呼ぶには、まだ少し早いのかもしれません。それでも、ITのニアショアリングとスタートアップのグローバルなハブとしての地位を強化するために必要な要素全てが、グアダラハラないしハリスコ州には既に集まっていると言えるでしょう。グアダラハラの今後の発展は要チェックです!