意外と知らない?メキシコの街並みがカラフルな理由

グアナファト、サンミゲルデアジェンデ、プエブラ、パチューカ…カラフルな街並みが数多く存在するメキシコですが、みなさんはその理由をご存知ですか?今回は、世界中の人々を魅了するメキシコの街並みに隠された「秘密」を探りました!

グアファトがカラフルな理由は…家の素材?!

出典 - https://www.cityexpress.com/en/travel-blog/how-to-plan-a-romantic-trip-to-guanajuato-the-essential-guide

まずはお馴染み、「グアナファト」がカラフルな理由をご紹介します。グアナファトはメキシコ中央部の標高約2000mの場所に位置する街で、18世紀ごろまでは、世界有数の銀の産出地でした。バロック様式やネオクラシック様式の豪華な建築物や、コロニアル様式の民家が立ち並び、「宝石箱をひっくり返したような街」とも表現されるグアナファト。そんなカラフルな街並みを有する理由には、2つのことが挙げられています。

1つは、グアナファトが繁栄したちょうどその時代に「ペンキが普及した」ことです。メキシコよりも歴史が長いヨーロッパ諸国には、このようなカラフルな街並みはほとんどありません。というのも、ヨーロッパでは石やレンガを積み上げてモルタルを塗り、その上から塗料を塗るというのが一般的な建築様式でした。例えば同じスペイン語圏であるスペインの街並みを見ても、モルタルを用いた白壁の家が多いです。これは当時のペンキが油性で、アルカリ性のモルタルに直接塗料を塗ることができなかったためです。

一方メキシコの建設ラッシュ当時は、レンガを積み重ねた上からセメントを塗り、その上からペンキを塗るという建築様式が用いられていました。モルタルではなくセメントが使用されたため、このようなカラフルな街並みが広がるにいたったのです!しかし当時は、このような凝った塗装ができたのは裕福な家だけで、貧しい家では採掘場で採れる鉱石を使った、赤や緑のレンガを積み重ねただけだったそうです。

もう1つは、「簡素で似たような家々が立ち並んでいた」ことです。前述のようにグアナファトは銀の生産地として栄え、当時は多くの労働者がここに暮らしていました。彼らが住む家々は簡素で似たようなものが多く見分けがつきませんでした。そのためペンキで色をつけて、オリジナリティを出したという経緯があるようです。

このような経緯で生まれたカラフルな街並みは、鉱山が衰退した後も「建築的資産」として重宝され、街全体がユネスコ世界遺産に登録されています。

パルミタスがカラフルな理由は…ギャングたち?!

出典 - https://www.scoopnest.com/es/user/SEGOB_mx/629690370318700544-palmitas-pachuca-es-emblematico-por-su-macromural-y-por-ser-un-proyecto-integral-de-prevencion-de-la-violencia

お次は最近突如出現したポップな街並み、「パチューカ・パルミタス地区」をご紹介します!パチューカといえば一時期、本田選手が在籍していたメキシコ最古のサッカーチーム「パチューカFC」の本拠地がある場所です。

この地区には452世帯2000人弱の人々が暮らしていましたが、この町が突如カラフルに生まれ変わった理由は…ズバリ「治安対策」でした!

パルミタス地区はパチューカの中でも貧困層が暮らす地区で、ギャング同士の抗争やドラッグの蔓延により、暴力事件が多発していました。地元住民たちも迂闊に外を出歩けないほどの治安の悪さでした。そこでメキシコ政府が思い立った治安対策が「街をカラフルに染める」というものでした。

メキシコ政府は若者アーティスト集団「GERMEN Crew」に協力を依頼し、家々の壁一面を使った壮大なアート作品を作り上げました。まずは、全ての外壁を真っ白に塗り替えてからカラフルに色付け、5ヶ月もの期間をかけて完成にいたりました。街から少し離れて全体像を見てみると、上下左右の家同士がつなぎ合わさって見えるように、デザインが工夫されています。

出典 - http://eltxoromatutino.com/conoce-el-colorido-barrio-de-palmitas/

壁を塗る作業は住民たちと協力して行われ、住民同士の交流も以前より盛んになったそうです。最終的には対立していたギャングたちまで作業に加わるようになり、暴力事件は徐々に減少しました。生まれ変わったカラフルな街と、作業を通して生まれた人の交流が功を奏し、このプロジェクトは大成功を収めました!

こんな「インスタ映え」な街並みですが、実は観光地化はまだ進んでおらず、小さな商店は街中にあるものの観光客向けのレストランなどはありません。今後観光地として発展することも予想されますが、現時点で訪れる際には現地住民への配慮が欠かせません!

このような「ストリートアート」が治安改善に有効との事例は、ここパルミタス地区だけでなく、ブラジルのリオデジャネイロなどでも報告されています。ストリートアートとは街をキャンバスにして、ペンキやスプレーで描くアートのことです。単に落書きとして扱われることもありますが、芸術活動としても認知され始めています。

出典 - https://www.facebook.com/muralismogermen/photos/a.216510695157172/664368263704744/?type=3&theater

一番の理由は…国民の色彩感覚?!

ここまでは、カラフルな街並みが広がっている理由を都市ごとにお話ししましたが、その根底にはやはり「メキシコ人の国民性」がありました!みなさんも「メキシコらしい色使い」と聞くと、なんとなくイメージが浮かぶかもしれません。

メキシコ人は基本的に明色や原色、ビビッドカラーを好む傾向があります。メキシコではこれらの色は「コロール・ビボ(Color Vivo)」と呼ばれ、彩度が強くはっきりした色の総称として使われています。また、色を組み合わせる際には反対色(補色)を合わせることを好みます。これにより色の統一感がなくなり、独特な色の組み合わせのデザインが完成します。メキシコにカラフルな街並みや小物が数多く存在するのには、このようなメキシコ人の「色彩感覚」が大きく関係していると言えそうです。

毎年、聖金曜日(Viernes de Dolores)とその前夜に行われる「Día de las flores(ディア・デ・ラス・フローレス)」のイベントの際にも、グアナファトの街にはビビッドカラーの装飾品や花々が数多く並べられます。また、セマナサンタ、いわゆるイースター休暇にも街中でカラフルなイースターエッグとバスケットが売られています。

まとめ

出典 - https://www.facebook.com/muralismogermen/photos/a.216510695157172/722993811175522/?type=3&theater

以上、メキシコにカラフルな街並みが数多く存在する理由をご紹介しました!メキシコのカラフルな街を訪れる際には、ただ「綺麗!」と感動するだけではなく、メキシコ人の色彩感覚を感じて楽しんでみてください♪

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著者情報

紹介文: 大学3年生を終えたところで休学し、現在エンカウンターでインターン中です!半年間は世界遺産の街・グアナファトで暮らし、現在はメキシコシティ在住。季節によって、日によって、時間によってくるくると表情を変えるメキシコの魅力を、余すことなくお伝えしていきたいです!

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