【インタビュー】「人」の国メキシコ~伯耆田修総領事~

グアナファト州レオン市にある在レオン日本国総領事館にお邪魔し、外交官としての豊富な経験を持つ伯耆田修総領事へインタビューを敢行しメキシコで、中南米での様々な経験に基づいた興味深いお話の数々をお伺いしました。

中南米を渡り歩き、辿り着いた今

―在レオン日本国総領事館の総領事という、現在の職位に至るまではどのような経歴でしたか。

 1977年に外務省へ入省し、日本では外務省のアジア局と領事局で、海外ではコスタリカ、エクアドル、パナマ、メキシコ、スペインの5か国で勤務し、日本と海外が各々20年ほどの勤務でした。最近では2017年までの10年間ほどを外務省領事局で勤務し、海外の大使館や総領事館に勤務する領事の体制強化や、自然災害や事件等で多くの日本人が被害に遭われた際の緊急事態対応を担当していました。その後2018年1月より、レオンにおいて総領事を務めています。

―コスタリカやエクアドル、パナマなど中米他国での勤務経験と比較して、中米の他国の人々とメキシコ人との印象の違いは感じられていますか。

 中南米諸国の人々とメキシコ人との間に印象の違いはあまり感じていませんが、メキシコは親日的な部分があり、多くの方が、日本人は勤勉で誠実で信頼がおけると思ってくださっていると感じます。これは、過去の移住者やその子孫の方々が長年に渡って、誠実にメキシコ人の方と接し、勤勉に仕事をされてきた結果だと受け止め、非常にありがたく思っています。

発展を遂げるメキシコ。~3度の滞在を通して~

―1981年、2001年、現在とメキシコ滞在は3度目でいらっしゃいますが、前回や前々回の滞在時期と比べてメキシコに変化を感じる部分、また感じない部分はございますか。

 明るさや人のよさ、友人や家族を大切にするという、メキシコ人の国民性は変わっていません、寧ろ更に強まったように感じています。これはメキシコ人の良い部分であると思いますので、是非これからも変えずに持ち続けていただきたいと思っています。

 変わった部分でいいますと、メキシコには現在も尚、未発掘の遺跡が多く存在しますが、それらの発掘や整備は昔に比べると非常に進んでいると感じています。観光地として整備された場所は本当に増えたと思います。一方で、カンクンでは自然に触れられる部分が少なくなりつつあるように感じ非常に残念に思っています。変化という点で私が特に驚いたのは、最近の7年間ほどで中央高原地帯(バヒオ地域)を中心に、日本人や進出日本企業が急増していることです。この進出日本企業の増加につれて日本語を学んでいる或いは、学びたいメキシコ人の方が増加していると感じます。

 また、治安面では、誘拐事件の発生件数は減少していますが、麻薬絡みの犯罪や麻薬カルテル間の抗争は増加しています。麻薬カルテル間の抗争は一般の市民が直接被害に遭うというわけではありませんが、巻き込まれる可能性もありますし、強盗は増加していますので、自分の身は自分で守るという意識は非常に重要です。個人レベルでの安全対策の手引きについては各在外公館が作成しており、外務省の海外安全ホームぺージにまとめられていますので、是非皆様にも改めて読んでいただきたいと思います。

在留邦人向け安全の手引き メキシコ

―これからメキシコが発展する上で期待される部分はございますか。

 メキシコは総人口が1億3千万人を越えており、なかでも若年層の人口比率が高い国です。教育というものは、国が発展する上で極めて重要な要素です。そのためメキシコ政府も力を入れていますが、教育の向上に伴う発展は非常に期待できます。また広大な国土があり、自然も豊かであることからそれらを活かせば風力や太陽光などの新エネルギー分野での発展が期待できる国であると感じています。また、新薬は、昔から伝わる薬草から生まれることもあると聞いていますので、メキシコに古くから伝わる薬草などから新薬発見等のビジネスチャンスもあるかもしれません。

 メキシコにおける日本のプレゼンスは今後も益々高まると考えられます。日本政府や進出日本企業は現在、メキシコ人及びメキシコ企業に対する人材育成や技術移転にも力を入れています。将来的には優秀な方々が多く排出され、より高度な技術を備えたメキシコ企業が増え、メキシコが益々の発展を遂げることを期待しています。

歴史と自然の素晴らしさを

―これまでに訪れたメキシコの都市や観光地等で、特に薦めたい場所はございますか。また、これから訪れてみたい場所もあればお聞かせください。

 訪れた場所では、ベラクルス州のエル・タヒン遺跡や、ユカタン半島北部中央の海岸沿いにあるピンク・レイクが好きです。エル・タヒン遺跡はテオティワカンのような遺跡とは異なった形をしており非常に興味深いですし、ピンク・レイクはアクセスこそあまりよくありませんが、真っ青な空とピンク・レイクのコントラストは綺麗でお薦めです。

 これから訪れたい場所といえば、グアナファト州のカニャダ・デ・ラ・ビルヘンとサンルイス・ポトシ州のウアステカ・ポトシーナの川や滝は是非観てみたいと思っています。また一度訪問したこともあるのですが、オアハカは多くのメキシコ人の方々から勧められていますし、オアハカには歴史、伝統、文化があり世界文化遺産にも指定されていますので是非もう一度訪れたいと思っています。

メキシコ人は受けた恩を忘れない

―メキシコ人と働くことの良さや難しさはございますか。また難しさへの対策などがありましたらお教えください。

 今まで海外5か国での勤務を経験していますが、働いている方々に対して国による違いはあまり感じません。日本人と外国人とでは、文化や習慣、国民性が違いますし、考え方や仕事の仕方で相違する部分もあると思います。その違いを互いに尊重し、日本の仕事の仕方についても理解を得、信頼関係を構築できればメキシコ人の方々とうまく働けることができると思っています。

―関係を構築する上で、コミュニケーションの取り方は非常に重要な要素の一つとなると思いますが、メキシコ人とコミュニケーションを図る上で、特別に意識されていることはございますか。

 メキシコ人に対しての限った話ではなく、日本人が相手でも同じことが言えますが、相手の置かれた立場を理解した上でコミュニケーションを取ることが一番重要だと考えています。また日本人とメキシコ人に共通する部分のひとつでもあると思いますが、メキシコ人は「受けた恩は忘れない」と感じることが多々あります。個人の関係性はもちろん、企業のような組織や団体に対してもメキシコ人の方々は受けた恩をしっかりと覚えていると思います。

「本物」の文化を伝えたい

―日本とメキシコの文化の違いを感じる部分はございますか。

文化は歴史とともにあるものだと思いますので、やはりピラミッドを含めた歴史的建造物を見たりメキシコ料理に触れたりしますと、歴史をそして文化の違いを感じます。また個人の慣習のような部分では、時間の使い方に違いを感じています。日本人は常に時間に追われていると思います。それに対してメキシコ人は時間を自分のために使っていると思います。例えば、家族や友人との時間を非常に大切にしており、日常生活の中でしっかりとプライベートの時間を取っていると思いますし、それは素敵なことだと思うので私たち日本人の時間の考え方の違いかなあと思っています。

―文化面の共通点でいうと、日本もメキシコも食文化がUNESCOの無形文化遺産に登録されていますが、日墨交流の上での食分野の可能性についてはどう考えられますか。

 日本食は、豊富な魚介類や海藻、菜、肉類の食材を使用し、蒸す、茹でる、煮る、焼く、揚げるといった料理法があり、昆布、鰹節、煮干しといったダシがあり、味噌、醤油、酒、みりんといった調味料を使用すると行った奥深い料理です。まだまだメキシコでは知られていない日本料理がたくさんあります。また、残念ながらメキシコの日本料理のあるレストランでは、メキシコ人の口に合った味付けに変えられた品が日本料理として出されているケースもありますので、本当の日本料理を味わっていただきたいと思っています。そのため、レオン市内に総領事の公邸が設置された際には「本当の日本料理」をお出ししたいと考えています。同様に、日本で提供されているメキシコ料理も「日本風」や「米国風」にアレンジされているため、文化交流という面では日本でも本当のメキシコ料理を味わえるお店が増やせればと望んでいます。

―大きな国家のくくりとして見たときに、日本とメキシコの関係を保つ上で重要なことは何だと考えられていますか。

 信頼関係だと思います。それは個人的な人間関係であり、企業間の関係であり、ひいては国家間の信頼関係だと思います。相手国の歴史や文化、風習といったものを尊重し、相手の置かれた立場を理解した上で合意できる部分は何かを考えながら真摯に話し合っていく姿勢が重要ではないでしょうか。

メキシコを楽しむこと、違いを面白むこと

―ラテンアメリカの様々な国に滞在されてきたご経験から、メキシコで生活する方へのアドバイスをいただけますか。

 海外で生活する上で大切なことは、「その環境を楽しむ」ことだと思います。日本との違いに目を向けること自体は否定しませんが、それはネガティブな部分に対してではなく、ポジティブな面へ目を向けるということです。日本との違いはあります。しかしそれを否定的に捉えて悲観するのではなく、その違いを肯定的に捉えて楽しむ姿勢を持つことが、海外生活やメキシコでの日々を楽しむ上で必要だと考えています。

―また経済市場としても大きく発展の続くメキシコには、これからの新規進出を考える企業も少なくはないと感じます。そのような企業へのメッセージをいただけますか。

 メキシコは平均年齢28歳という若い労働力があり勤勉で明るい国民性を持った国です。そして、日本人そして日本企業を信頼しています。治安悪化を懸念している企業もあるかもしれませんが、一般的な防犯対策を講じていれば生活上の支障はありません。中央高原地帯(バヒオ地域)には、アグアスカリエンテ日本人学校、準全日制のグアダラハラ補習授業校、グアナファト補習授業校があり、今年4月には、グアナファト日本人学校及びケレタロ補習授業校が開校されました。皆様方の当地進出をお待ちしております。

豆知識:実は「領事館」はない

 そんなことないと思われるかも知れませんが、実は「領事館」という機関は海外には存在しません。以前は確かに「領事館」という機関も存在し、今でも法律上、「領事館」と記載されている法律が存在しますが、現在、日本の在外公館に存在するもので「領事」とつくのは、「大使館領事部」、「総領事館」及び「領事事務所」の3種類です。また、総領事館の仕事としては、日本のプレゼンスを高め、管轄地域政府との関係を強化し、政治や経済の情報を入手し、文化交流、日本企業支援、旅券や証明書の発給、戸籍関係届書の受理あるいは査証の交付そして、在留邦人の皆様が安心して暮らせるよう努めるのが主要な仕事となっています。

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