対中国に引き続き、対メキシコにも
5月5日、トランプ氏は対中国の輸入関税をそれまでの10%から一気に25%にまで引き上げることを発表、10日には実行に移された。中国が米中間の貿易協議上の約束を破ったことが関税引き上げの理由だという。
そして、対中国に引き続いて5月30日に表明されたのが対メキシコの関税引き上げだ。その内容は、中米からアメリカへの不法移民流入をメキシコが止めなければ、最高25%まで関税を引き上げるというものであった。引き上げの発動は6月10日を予定し、メキシコからの全輸入品に対し5%の関税率追加から開始し、数か月以内に最高25%まで引き上げる方針が表明されていた。しかし6月7日、メキシコとアメリカの2か国による3日間の協議の末、その発動を無期限延期すると発表された。無期限延期に至った合意では、メキシコが中米からアメリカに流れる不法移民への強固な対策を打つことが盛り込まれた。
中米からの不法移民への対策を
メキシコは合意後、アメリカを目指す移民の流入を食い止めるため、グアテマラとの国境に国家警備隊6000人を派遣している。
条項の詳細については明かされていない部分もあるが、実行にはメキシコ議会の承認が必要であるとされている。またトランプ氏は、中米からの不法移民流入が止まなかった場合には、米国への難民申請者をメキシコに移送して保護する「安全な第三国」について再協議することもメキシコ側と一致したと表明している。しかし、メキシコ外相は、「安全な第三国」については消極的であり、メキシコ側が講じる対策の有効性を検証する期間を設けた上で、効果が見られなかった場合に再協議することで一致したと公表している。その期間は45日であるが、トランプ氏は「メキシコ議会での承認が進んでいないのであれは、関税の復活も辞さない」などと言明し、無期限延期表明の3日後から既にメキシコに再度圧力をかけている。
また今回行う対策によって、メキシコが中米からのアメリカへの不法移民流入を45日以内に食い止められなかった場合には、アメリカを目指す移民が通過するブラジルやパナマ、グアテマラといったメキシコ以外の国々にも難民申請手続きの分担ができないかの協議が行なわれる見通しでもある。