メキシコにはその歴史を通して、素晴らしい作家たちに彩られた様々な時代がある。最近で言えば、そのうちの1つというのは20世紀前半よりも前に生まれた作家たちの年代であろう。彼らは偉大な古典作家とされている人たち、例えば、フアン・ルルフォ、オクタビオ・パス、カルロス・フエンテス、フェルナンド・デル・パソ、カルロス・モンシバイス、ホセ・アグスティン、ロサリオ・カスティジャーノス、エレナ・ポニアトウスカなどである。
しかしながら、この場でお話しするのは彼らについてではなく、「新世代」についてである。「新世代」の作家というのは、50年代よりも後、すなわち20世紀後半に生まれ、想像力や物語性に富んだ上質な本を出版し続けている。そしてそのおかげで「黄金時代」は維持されているのだ。また、アンヘレス・マストレッタやラウラ・エスキバルのように両世代の結びつきとなっている作家だっている。彼らは40年代終わりから50年代初めに生まれ、世界レベルで広く認知されている。
はっきりさせた方が良いことは、我々がこの場で触れているのはその作品が出版されている作家たちだけであるということだ。なぜなら我々はウンベルト・エーコの「本は死なない」という考えを確信しているからである。それゆえ、作品をネット上で発表する作家たちは含めていない。デジタル時代が作家たちに手軽さをもたらすことは確かに認めざるを得ないのだが。紙はもはや彼らの創作物を発表するための唯一の媒体ではない。また、ネットはブログや電子新世代のメキシコ人作家たち雑誌、そしてクリエーターが自らのコンテンツを掲載できるポータルサイトに侵されている。加えて、ネット上において文学作品は非常に広範にわたっており、その分析は複雑なものになっている。というのも、作品の信憑性を確かめることは時に難しいからである。
以下は、10人の最も読まれている作家たちとその最も優れ、メキシコ国内外で認知されている作品の一覧である。彼らは全員、国内もしくは海外の、物語、小説、エッセイ、詩など様々な文学ジャンルのうちのいくつかの賞を少なくとも1つは受賞している。たくさんいる中でこれらの作家を選ぶことは簡単ではなかった。故に、不本意ながら、そして不公平にも、素晴らしい文学キャリアを持ち、広く知られた他の作家たちが省かれてしまっている。この一覧が、読者の皆さんの興味をそそるものだといいのだが。
1. Juan Villoro フアン・ビジョーロ
Juan Villoro フアン・ビジョーロ(1956)
“El Testigo”,“Arreci-fe”
エラルデ賞 2004
2. Mónica Lavín モニカ・ラビン
Mónica Lavín モニカ・ラビン(1955)
“Yo, la peor”,“Café cortado”
エレナ・ポニアトウスカ・イベロアメリカ文学賞 2010
3. Mario Bellatin マリオ・ベジャティン
Mario Bellatin マリオ・ベジャティン (1960)
“Salón de belleza”, “Damas chinas”
ホセ・ドノーソラテンアメリカ文学賞 2018
4. Cristina Rivera Garza クリス ティーナ・リベーラ・ガルサ
Cristina Rivera Garza クリスティーナ・リベーラ・ガルサ(1964)
“Nadie me verá llorar”,“La Muerte me da”
ソル・フアナ=イネス・デ・ラ・クルス国際賞 2009
5. Xavier Velasco ハビエル・ベラスコ
Xavier Velasco ハビエル・ベラスコ (1964)
“Diablo guardián”,“La edad de la punzada”
アルファグアラ賞 2003
6. Jorge Volpi ホルヘ・ボルピ
Jorge Volpi ホルヘ・ボルピ (1968)
“En buscade Klingsor” (『クリングゾールをさがして』河出書房新社),“Una novela criminal” (『ある犯罪小説』)
アルファグアラ賞 2018
7. Julián Herbert フリアン・ヘ ルベルト
Julián Herbert フリアン・ヘルベルト (1971)
“Canción detumba”,“Un mundo infiel”
エレナ・ポニアトウスカ・イベロアメリカ文学賞 2012
8. Guadalupe Nettel グアダルーペ・ネテル(1973)
Guadalupe Nettel グアダルーペ・ネテル(1973)
“Historias naturales”, “Después del Invierno”
エラルデ賞2014
9. Antonio Ortuño アントニオ・オルトゥーニョ
Antonio Ortuño アントニオ・オルトゥーニョ (1976)
“La Señora Rojo”,“La vaga ambición”
リベラ・デル・ドゥエロ賞 2017
べジャス・アルテスラ
テンアメリカ文学賞 2018
10. Valeria Luiselli バレリア・ル イセージ
Valeria Luiselli バレリア・ルイセージ (1983)
“Papeles falsos”,“Los ingrávidos”
ドイツの批評家は、彼女をラテンアメリカ文学界の注目株と評している。
この作家とその作品の紹介は、メキシコ文化への入門、そして、他の国の人々の想像力を常に魅了してきた国との予期せぬ素晴らしい出会いの可能性を象徴するような、そうした文学作品の発見へと読者の皆さんをいざなうものだ。
我々は、皆さんの中で、メキシコ人作家の本を読むさらなる理由を与えてくれるような好奇心だったり、関心だったり、可能性というものが呼び起こされることを期待している。
それではまた。