メキシコとビートルの歩み
ビートルがメキシコで生産され始めたのは、1961年でした。当初はドイツで生産されたパーツをメキシコで組み立てるという形が取られていました。しかしその後、税制面の規制が厳しくなるに連れて完全現地生産の必要性が高まり、1964年にフォルクスワーゲンメキシコが設立されメキシコ現地工場が建設されました。なかでもプエブラ工場では、他の工場での生産が終了した後も最後までビートルの生産が行われていました。2003年にビートルの生産が完全に終了したのちも「ニュー・ビートル」「ザ・ビートル」と、プエブラ工場では長きに亘り生産が行われていました。しかし2019年7月をもって「ザ・ビートル」の生産も終え、完全にその生産が終了しました。
メキシコのビートル
スペイン語で「Vocho(ボチョ)」または「Vochito(ボチート)」として知られているのは、歴代のビートルのなかでも2003年までの間生産されていた「ビートル」だけを差します。あだ名が付けられるほど、大衆に親しまれていたビートル。「Vocho」という名は社名の「Volkswagen(フォルクスワーゲン)」とスペイン語で虫を意味する「Bicho」が掛け合わされて付けられました。そして、メキシコではお決まりの縮小辞が適用され「Vochito」とも呼ばれるようになりました。2003年に生産は終了してしまっていますが、現在でも大衆車としての人気があり、メキシコ全体ではもちろんですが、生産の拠点があったプエブラでは特に多くのVochoが見かけられます。
幸せの黄色いボチョ…?
メキシコでは黄色いビートルを見ると幸せになれると言われています。その名も「Vocho Amarillo(ボチョ・アマリージョ)」。Amarilloはスペイン語で黄色を意味し、「黄色いボチョ」とそのままの名前なのですが、黄色いビートルは珍しいため見つけると幸せになると言われるようになったのだとか。メキシコ人曰く、友達と道を歩いているときに見つけたら気づいてない人の肩や腕を軽く小突くそうです。
メキシコの文化に、伝統に根付く
これほどまで大衆に親しまれているボチョですが、メキシコの伝統にも溶け込んでいます。メキシコの先住民「Huichol(ウイチョル族)」の伝統工芸であるビーズ細工とコラボした「Vochol(ボチョル)」と呼ばれるものや太陽のピラミッドや月のピラミッドで有名なテオティワカン文明とのコラボ車などが制作されています。写真はテオティワカン文明のが施されたボチョ。どちらもイベントでの展示等でさまざまな街を回っています。運が良ければ出会えるかもしれません。
ちなみに…あの有名な大統領も愛用
世界一貧しい大統領として有名になったウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ氏の愛車も、実はビートルです。大統領時代から公用車を使わず、友人から貰ったという青いビートルに乗る姿は話題にもなりました。アラブの富豪が「1憶円で買いたい」という話がでたこともありましたが、友人に申し訳ないからとその申し出を断り愛用し続けていました。私だったら1憶円なんて言われたら目がくらんでしまいそうです…笑
以上、メキシコで愛される「ボチョ」についてお届けしました。皆さんも是非街中で黄色いボチョを探してみてくださいね♪