日本からメキシコへ、そして世界への挑戦
―世界への挑戦のスタートの地としてメキシコを選んだ特別な理由はありますか?
メキシコをスタートの地として選んだ理由はいろいろありましたが、世界を舞台に活躍したいと考えたときにまず目指したいと思った場所が「ラテンアメリカ」だったんです。ラテンアメリカへの挑戦を本当に心に決めたのは2年半ほど前でしたが、そこに至るまでの様々な経験がその決断を導きました。その中でも特に、世界一周中にコロンビアで現地のアーティストに見初められツアーに帯同し、観客1万人を沸かせられた経験が自分の中で非常に大きかったですね。帯同するなかでスペイン語も少しですが習得して、自分のスペイン語Verの曲も制作しました。思い返すとラテンアメリカの存在が本当に大きかったんです。
その中で「メキシコ」を選んだ理由としては、今回契約を結んだユニバーサルミュージックラテンにメキシコから始めてみないかとの声を頂いたこともあります。メキシコはラテンアメリカの中でも人口が非常に多く、マーケットとしても大きいんです。そんなメキシコで多くの人に知ってもらえれば、他のラテンアメリカ地域でも知られていくのではと思います。今の考えとしてはまず、メキシコでたくさんの人に知ってもらい、その後コロンビアの地にも、もう一度行けたらいいなと思っています。
挑戦への課程~スペイン語~
―メキシコ、ラテンアメリカで挑戦する上では、スペイン語もしくは英語は必要になってくるかとは思いますが、語学面に関してはどうですか?
観客に、聞く人に思いを届けるうえでは、現地のことばで伝えることは非常に重要だと感じます。英語でライブパフォーマンスをしてもある程度は伝わりますが、まずラテンアメリカで挑戦する過程では「スペイン語」を大事にしていきたいと思っています。まだまだボキャブラリーが少なく、正直なところ思いの丈をスペイン語ですべて伝えることは難しいです。しかし、スペイン語と日本語は「R」や「J」などの一部の例外を除いて、発音がとても似ています。そのためスペイン語は日本人に向いている学習言語なのではと感じ、スペイン語学習自体は好きです。まだまだ学習過程ではありますが、音楽に関する会話であれば、ある程度スペイン語でも理解できるようになり、習得も実感できていて勉強することがとても楽しいですね。
「日本が好き?」J-POPの可能性
―日本から離れ、海外の地で日本人アーティストが活躍するためには、様々な苦労もあるかと思いますが、日本の音楽を発信する上での思いや考えはありますか?
海外に出ると、日本人とわかると「日本好きなんだ」「日本に行きたいんだ」と言ってくれる人が非常に多いと感じませんか。これは音楽に限った話ではなく、日本文化や日本全体への関心が世界的に高まっていて、日本ブームのようなものが最近起きているように思います。その中で2020年には東京オリンピックも開催され、その注目がさらに高まることが予想できます。
しかし、まだまだ「日本のエンタメ系」の発信は少ないのではないでしょうか。アニメが好き、ビジュアル系が好きという人は確かにいる一方で、日本は好きだけど日本については全然知らない人が実際のところまだまだ大多数なのではないですかね。
そんな今だからこそ世界に「J-POP」を発信したいと思っています。といっても、ラテンアメリカで闘ううえでは「日本のJ-POP」をそのまま行うことはできないですが。やっぱり文化圏ごとに違う価値観があって、好まれるリズムが違うため、その地に適応させることも非常に大切なんですよね。だからと言って現地の音楽、つまりラテンの音楽をそのままするだけではいけないんです。ラテンの音楽を「日本人」が作る、日本人が歌う意義をそこに見出す必要があるんです。難しいところなんですが、そこでこそJ-POPの強みが生かせるとも考えています。J-POPの持つメロディのバリエーションって世界一じゃないかと思うんです。その上、日本人はアレンジ力が非常に高いじゃないですか。インドのカレーや中国のラーメンが日本でのアレンジを経て、気づいたら日本食として認識されていたり、パスタに明太子を入れてみたりとかね(笑)。それがラテンの音楽のなかでもきっと生かせるはずです。ラテンの音楽にJ-POPのメロディを重ねる、素敵だと思いませんか。J-POPのローカライズ版とも言えるんじゃないですかね。J-POPのメロディはラテンのアーティストでは作れないものなので、そこから「このメロディなんだ」とラテンの人には感じてもらえて、その地に住む日本人にはどことなく日本を懐かしんでもらえると嬉しいです。また、その経験をきっかけにオーセンティックな日本のJ-POPにも興味を持ってもらえたら本望ですね!
あとは、J-POPの可能性とは少し違うかもしれないですが、今BTSなどK-POPの音楽が世界的にヒットしていたりするなかで、同じアジアの音楽としてJ-POPも良いところが沢山あってK-POPに負けていられないと思っていたりもします(笑)。
今回の「El Japonés」もそうゆう部分を意識しているので、是非聞いてみてください。
Naoto Inti Raymi Official Channel次のステップへ「Naoto」の挑戦
―ナオトインティライミとしてではなく、「Naoto」としてデビューすると伺いましたが、その理由はなんでしょうか?
Naotoは簡単に言うとラテンの服を着た「ナオト・インティライミ」なんです。Naotoとして活動してもナオト・インティライミとしてでも、別の人間が作る別の音楽に変わるわけではないです。あくまでも作るのは自分自身であり、そこが軸であり、これはぶれないところだと考えています。どちらであっても基盤には「POPの音楽」があり、それにトレンドであったりその地域の特性だったりという「テイスト」を加えているだけです。
Naotoでの挑戦は、ある意味セルフプロデュースであり、表現者としてのマーケティングかなと考えています。中村直人(本名)がラテンの服を着て、ラテンの波に乗るためのスイッチですかね。
―「これは大切にしていきたい!」と考えていることはありますか?
その地の音楽らしさを取り入れることですかね。ラテンのエッセンスを日本人だけで作ろうとしても、「ぽいもの」しかできず、「らしいもの」はなかなか作れないんです。だから、現地のトラックメーカーやスタッフたちと制作し、歌でもスペイン語の発音に少しでも違和感があったら全て指摘してもらい、ナチュラルなスペイン語で歌えるまで何度でも取り直すぐらいにはこだわりたいです。
「肩書は旅人」ナオト・インティライミの強み、そして夢
―世界への挑戦との意味では日本そして日本人らしさという部分は大きくなってくるとは思いますが、個としての強みは何だと考えられますか?
自分個人としては、やっぱり世界を旅したことが大きいかなと思いますね。旅をする中で世界中のメロディを聞いているため、他の日本人では思いつかないようなバリエーションのメロディ使うことができます。例えば普通のJ-POPの中にもちょっとアフリカ、ちょっとカリブのメロディを加えるみたいなことができると思うんです。また、世界を見て違いを知ったことによって、自分に立ち返ることができました。そのなかでアイデンティティを見出し、改めて「さくら」の旋律だったり和楽器だったりに立ち返るようになったことも大きいんじゃないですかね。
―世界に向う上で、これからの夢をお伺いできますか?
これからの夢を語る上でもやっぱり「旅人」としての自分が軸になってくるんですよね。世界を旅していると、よく人に助けられて人の優しさに触れる機会が多いんです。そうするうちに自然と、受けた恩は返さなければならないという気持ちが芽生えてきました。これって旅人の自然なマインドなんですが、それで僕は自分の得意な分野「音楽」を使って社会貢献がしたいと考えています。教育面でも医療面でもなんでもいいんですが、何か社会に貢献できることがしたいです。そのためには、まず現地のアーティストと対等にコラボができるまでに成長したいですね。そうすれば自分がその地に落とせる良い影響の大きさも変わってくるはずだと感じています。
当面のところだと、まずはメキシコの日常に自分の曲が溶け込むようになりたいです。自分の曲がカーステレオから、ショッピングモールから地元の人々に自然と流れ込む。そんな風になれば理想ですし、地元のディスコテカで僕の曲でメキシコ人が踊ってくれたりしたら嬉しいですよね。
また、音楽としては「ハポニョール(Japoñol)」じゃないですけど、ラテンと日本が融合した新しいジャンルみたいなものを生み出せたらなと考えています。
読者へのメッセージ
日本人の読者の皆さま、特にメキシコに住まれている方々には、日本を感じ、日本や日本での思い出に思いを馳せるきっかけになれば嬉しいです。メキシコの地で共に頑張りましょう。
またメキシコ人の読者の皆さまには、日本人の曲で踊るという体験をしてほしいですね。その体験を通じて日本への関心が高まり、実際に日本を訪れてほしいと思っています。
関連リンク
El Japonés(日本版リンク)El Japonés(メキシコ版リンク)コンタクト:naoto.project@enjing.co.jp