【女優:入山杏奈×Encounter Japan:島田俊一郎】地球の裏側メキシコで戦う2人の挑戦

ドラッグや治安の問題など、ネガティブなイメージのはびこる地メキシコ。日本から遠く離れたメキシコで生活し、戦う2人の思い。2人が追いかけるものとは。そして国民的アイドルであるAKB48が快適に住める実際のメキシコを、現地メキシコから生の声でお届けします。

メキシコを舞台に

入山杏奈さん(以下:入山):初めまして!よろしくお願いします。まず、御社と島田さんのメキシコでの仕事を教えてください。

島田俊一郎さん(以下:島田):こちらこそ、よろしくお願いします!Encounter Japanはメキシコで様々な事業を行っています。僕が責任者を務めている居場所創生部門では、グアナファト市で日本食レストランとホステル(Hostal & Bar Encounter Guanajuato)、レオン市でも2018年の8月から日本食レストラン(GOEN)の運営を行っています。本場の日本料理と日本にいるかのような暖かなサービスをメキシコの地で提供しています。

クリエイティブ部門では、日本人とメキシコ人の制作チームと共に企業が抱える課題を動画制作やグラフィックデザインを通じて「クリエイティブソリューションする」ことを行なっています。

他には広島県の日本酒や味噌の卸事業に加え、メキシコ総合情報メディア「amiga」の運営を行っています。ネガティブなイメージが強いメキシコですが、そんなことばかりではないですよと。もっと楽しいことやワクワクすることが多くあって、それを知ってほしい!、実際訪れて感じてほしい!と思い、amigaを通じて様々な情報を発信しています。このインタビューもamigaで行っているんですよ。

また今後はamigaを活用した人材紹介事業を始める予定です。amigaを運営していて、メキシコで実際に働きたいという方からのお問い合わせが多かったんですよね。メキシコで実際に人を雇用して多様な事業を行うことで「メキシコで日系企業と働くこと」を理解した僕達だからこそ発揮できるバリューがあると考えています。

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きっかけは突然に、縁もゆかりも無かった場所

―メキシコに来たきっかけはどのようなものでしたか?

島田:僕は自分発信のきっかけというものは何もありませんでした。丁度海外に目が向いていた時に、メキシコに行ってくれないかという話を受けて、たどり着いたという感じです。当時僕は渋谷でCafe & Bar Encounter Shibuyaという店の店長をしていたんです。そしたらその店が2号店としてメキシコのグアナファトにHostel & Bar Encounter Guanajuatoをオープンすることになったんです。それでメキシコに店舗の立ち上げに行ってくれないかという話になりました。

入山:なんで渋谷の次がグアナファトだったんですか?!国内でも、他にもいっぱいありましたよね(笑)。

島田:普通そう思いますよね(笑)。Encounter Japanの社長の西側が学生時代にした世界一周旅行で惚れこんだ街が、たまたま「グアナファト」というメキシコの街だったんです。それで、彼はいつかグアナファトで事業を興したいと考えたんです。グアナファトへの思いは、総合商社の内定を蹴ろうかと考えるほどだったらしいんですよね。最終的には、一度そこに就職はしたものの、その傍ら渋谷でグアナファトへの第一歩としてCafe & Bar Encounter Shibuyaという店を始めていたんです。そのため僕自身はメキシコが好きだったとかではなく、メキシコについては何も知らず、スペイン語も「グラシアス」と「オラ」ぐらいしか知らない状態で来ました。当初は飲食店と宿を作るために来たので、スーツすら持ってませんでした(笑)。

入山:そうなんですね!社長さんは素敵な出会いをされていたんですね。私も島田さんと同じでメキシコについてはほとんど何も知らず、本当に「L.I.K.E.」というドラマに出演するために来ました。スペイン語もメキシコも全然知らない状態で、ドラマの話を受けるか自体も即決という訳ではなかったです。AKBでは海外のチームへ移籍という形で日本国外へ出るメンバーはいましたが、私みたいにアイドル以外の立場として海外に出る人はいなかったですからね。

島田:そうだったんですね。入山さんがメキシコに来ると聞いた時はとても嬉しかったのを覚えています。メキシコにいる身としては、ネガティブなイメージが強い中でメキシコに有名な人が来てくれるというのは凄く嬉しいことなんです。以前、サッカー選手としてはもちろん投資家としても有名な本田圭佑さんがメキシコ国内のサッカーチーム「パチューカ」へ移籍してくることが決まった時も、メキシコ在住の日本人達は「メキシコの時代が来たぞ」と、とても沸いていました(笑)。入山さんが日本を出発される時は「メキシコ留学に行ってきます」と言われてたと思うんですが、語学学校とかにも通われていたんですか?

入山:スペイン語の学校には通ってませんでした。スペイン語の家庭教師さんは付けて頂いてたというか今も一応続けてはいるのですが、先の予定がなかなか分からないため、ほとんど授業は受けれていないのが現状です。

島田:そうなんですか?YouTubeを少し拝見したんですが、スペイン語がとてもお上手だと感じましたよ!どうやって習得されたんですか?

入山:ありがとうございます!ドラマを撮影していくなかや、メキシコ人やペルー人などの友達と話しているうちに覚えましたね。ケータイが壊れるなどトラブルが起こったり、ドラマを見ていて法律の話になったりすると理解できないこともありますが、日常生活ではもう困らないほどにはなれました。スタッフを含めて周りには日本人が全くいないので苦労もしましたが、スペイン語を学ぶにはいい環境です(笑)。メキシコにはマネージャーもいないですよ。

島田:マネージャーさんもいないんですか?

入山:そうなんです。日本にはもちろんいるんですが、メキシコにはマネージャーはおらず、仕事のやりとりだったりスケジュール管理も基本的には全て自分で行っています。大変な部分も多いですが、仕事を自分で組み立てていく楽しさはとても感じています。

島田:メキシコに来てからの仕事内容と、日本でのものとは違うんですか?

入山:AKBでもジャンル問わず様々な仕事をさせて頂いていましたが、今とは仕事のバリエーションの方向性が違いますね。以前から演技の仕事に興味があって、日本にいた頃からドラマに出演させて頂いたりと、様々なことにチャレンジさせてもらっていました。与えられた仕事をこなしていくスタイルですね。でも今は仕事を取ってくるのも自分なので、自分自身のアンテナを信じて仕事を選んでいます。またメキシコでは制約されていることが日本と比べて少ないからこそ、自由も利くように感じています。

島田:確かにメキシコ自体にも少し緩い空気が流れていたりと、やりたいことをするにはとても向いている場所だとは思いますね。

サボテンは?砂漠は?想像と違ったメキシコ

―実際にメキシコに来る前はメキシコという国についてどんな印象を持っていましたか?

入山:メキシコに来る前は、サボテンと砂漠の国ぐらいのイメージしかなかったですね。だから実際に来てみると、どっちも全然無いじゃん!と驚きました(笑)。

島田:僕も本当に同じ感じでしたね。僕はバーテンダーをしていたので「メキシコ=テキーラ」みたいなイメージもあったくらいでした。メキシコのグアナファトに2号店を出すと聞いて、日本とメキシコの架け橋になるような居場所を作りたいと聞いて、ただわくわくした気持ちでメキシコに来ました。Encounter Shibuyaのお客さんがメキシコに遊びに来てくれたり、メキシコで出会った人が渋谷の店にも来てくれたりするのって夢を感じましたね。そうは言ってもメキシコに来たときはお店を運営するにも、何せスペイン語ゼロで来ていたので、まずはスペイン語の先生を探すところから初めました。何もかも初めてで、問題だらけの試行錯誤の日々を送っていました。グアナファトのお店では唐揚げを看板商品として扱っているんですが、最初は唐揚げ用のお肉をお肉屋さんに注文するだけでも一苦労でしたよ。「おっけい」って言われたのに全く違うお肉が来たり、頑張って細かくしっかりと伝えられたと思えば「おっけい、じゃあ担当者に繋げるね」と言われたりと散々でした(笑)。そんな経験がいっぱいあったからこそ、本当に色んな人達に出会えたので今となっては感謝もしていますけどね。

入山:スペイン語の問題には私も何度もぶつかりました。ドラマの台詞を覚えることにも一苦労でしたし、最初のうちはスペイン語のインタビューは嫌いでした。インタビューがあると事前に分かっている場合には準備していくんですが、メキシコ人と日本人では考え方や価値観が違うため、日本人的な感覚で準備をしていても予想外の角度から質問をされて答えられないなんてこともありました。そのため始めの頃は、スペイン語のインタビューが本当に嫌で、嫌すぎてインタビューアーから走って逃げたこともありましたね(笑)。今ならそんな質問には「日本人だから分からないな」とかも言えてしまいますけどね。到着当時はそれが言えるほど強くもなかったんです。メキシコでは色んな出会いを通じてメキシコの良いところを感じるとともに、荒波に揉まれて強くなった気もしますね(笑)。日本に帰った時にマネージャーにも変わったと言われたぐらいなので、多分他の人から見ても変わっていると思いますね。

島田:確かに、メキシコに居ると強くなりますよね。僕も生命力というか、生きる力が格段に上がった気がしています。言語が通じない分、トラブルも増えてしまいますしね。苦労は絶えないのですが、言語を勉強する中で、英語よりもスペイン語の方が好きだなと感じています。よく知らない相手にもAmigo(友達)だったりHermano(兄弟)だったりと声をかける、メキシコ人の温かい人間性もありますが、スペイン語っていいなと感じています。

入山:メキシコは本当に温かいですよね!人と雰囲気が本当に良くて、メキシコに来て良かったと感じることが多く、メキシコを大好きにしてくれた要素の一つですね!日本は生まれ育った国としての温かみがあって大好きなんですが、メキシコにはメキシコで「ホーム感」みたいなものを感じています。アメリカなど他の国に行ってメキシコに帰って来たときには空港で「ただいま~」と心の中で叫んでしまいます(笑)。

島田:すごく分かります。メキシコの空港でスペイン語が聞こえてくると「あ、帰って来たな」と思いますし、日本にいても周りの外国人がスペイン語を話していたらこっちから助けに行きたくなるというか、話しかけに行ってしまいます(笑)。実際に住んでみて、色んなメキシコのリアルを自分の目で見て、感じたからこそ分かるメキシコの良さだとは思うんですが、自分の好きなものは周りの人にもオススメしたくなることってあるじゃないですか。だから、今では一人でも多くの人にメキシコの良さを知ってもらいたいと思っています。

入山:私も同じ気持ちです!好きな場所が悪いイメージを抱かれているのって良い気持ちはしないですし、メキシコには本当に魅力がたくさんあるのでみんなに伝えたいですね。人は親切で温かくて、ご飯は安くて美味しくてと…(笑)。

―本当にいい場所ですよね。では逆に困ったことはありましたか?

島田:困ったことと言えば、やっぱり言語の問題ですね。メキシコに来てもう4年が経過し、大体のことはスペイン語でも伝えられるようにはなりましたが、それでも思いを100%伝えることは本当に難しいですね。例えばレストランではスタッフに強く指導したり、怒らなければならない時とかもあるんですが、今でも怒らないといけない時などは日本語で文章を全部考えてから、スペイン語に訳してから話すということをしてますね。文化的な価値観の違いもあるので、それでもなかなか伝わらないこともありますが…。スタッフに遅刻の問題を話した次の日にまた遅刻をされた時には、もう無理だとも思いましたね(笑)。

入山:時間の問題はありますよね。私もメキシコに来て1年以上経ちましたが、まだメキシコ人の時間のルーズさには慣れないですね。平気で2時間とか遅れてきたりしますよね。5分や10分は遅刻でもないみたいですし(笑)。メキシコシティでは特に渋滞がひどいので、それで遅刻してしまっても、私も謝らなくて済むみたいな恩恵も受けていますけどね。でもメキシコシティで生まれ育って何年も住んでいる人なら、ここのこの時間は渋滞って分かってるはずなのに、渋滞で1時間遅れるとか言われるとさすがに「なんで?」となってしまうこともありますね。今では適応もできるようになって、メキシコ人が遅刻してくることを逆算して自分も遅れていくとかもできるようになりましたけどね。でもそれっていろいろ考えた上の1時間後に行こうとかであって、メキシコ人みたいに何も考えずに2時間遅刻とかはやっぱりできないです(笑)。

島田:確かにそれは難しいですね。でも今はメキシコ人の性質も理解して、付き合い方も分かったから、もうそれも苦だとはあまり感じないですね。

メキシコを知って、今したいこと

―これからしたいことや、夢はありますか?

入山:メキシコを知って大好きになったいまだからこそ、やっぱりメキシコをしっかりと伝えたいと思っています。「メキシコ」の文脈で夢がなにかというと「日本とメキシコの架け橋」になりたいと考えています。その1つの手段として最近YouTubeの活動を始めました。メキシコを伝える中で、一般的な文化やカルチャーだと難しいところもあると感じるんですけど、食の分野だととっかかりやすいのかなと思っています。メキシコ料理は美味しいですしね!

島田:そうなんですね。僕たちの会社も実は理念が「日本とメキシコを繋げること」なんです。グアナファトと広島が姉妹都市として交流していることもあり、現状では日本からメキシコへの矢印を作ることは結構できてきてはいると思っているんです。そのため次はメキシコから日本への方向に繋げていきたいと考えています。映画のリメンバーミーがあって、最近では死者の日が日本でも祝われたり、日本の有名人がメキシコに遊びに来てくれたりもしていますが実際まだまだと思っています。地理的な距離の問題は仕方が無いことで、変えられません。それでも中南米でもブラジルやペルーの人は日本でもいるけどメキシコ人には会わないじゃないですか。そういう部分を変えられないかと考えています。来ないことには距離やお金だけではない問題もあると思うんです。そのため、せっかく日本とメキシコに拠点を持っていて、日本語とスペイン語ができる人がいるわけなのでそれを使って、来日のハードルになっているものを解消する手助けをしたいです。

入山:そうですね。日本からの部分でも人はまだまだかなという部分も感じています。もう1年以上いるのにメキシコには本当に全然友達が来てくれないですよ。AKBのメンバーも誰も来てくれないですし(笑)。これは悔しいです。もし私がフランスとかに留学してたらいっぱい来てたんだろうなとか思うと余計に悲しくなります…。あと「メキシコって危ないんじゃないの?」「外歩けるの?」ってよく聞かれるんですけど、そうゆうイメージも変えていきたいです。そこは私が普通に生活している様子を伝えることで、しっかり守られてそうな日本の普通のアイドルが1人でも住めちゃうんだよというところを感じてもらえないかなと思っています。あと日本人とメキシコ人って真逆の存在で、補い合える部分も多く日本人がメキシコ人から学べる部分、学ぶべき部分も多いと感じているので、メキシコ人の良さみたいな部分も多くの人に知ってもらいたいです。

夢への挑戦。目指す先

―メキシコに限らずこれからの夢や目指す場所はありますか?

入山:今すぐにというところではないのですが、ゆくゆくはアメリカに挑戦してみたいと思っています。女優という仕事が好きで、やっぱりエンタメの世界では1番はアメリカなので。でも住みたいというよりは英語を学びに行ったり、仕事をしに行ったりするぐらいがいいですね。将来はスペイン語も英語も使って仕事が出来るようになりたいです。アメリカとメキシコは近いので、英語を学び終えたらメキシコに帰ってきてメキシコに拠点を置きながら、両方を使っていろんなところで仕事をするのもありかなとも思います。もちろん日本も好きなので、日本・メキシコ・その他を行き来するみたいな感じがいいですね!

島田:いいですね!Encounter Japanは現在日本とメキシコに拠点を持っているので、やっぱりそれらをベースにしながらも、スペイン語を使って活動を広げていきたいですね。ラテンアメリカの他の国だったり、スペインだったりやっぱりスペイン語が使えるところで頑張りたいです。ブラジルも大きな国ですし、日系人も多いので興味はありますが、ポルトガル語ですしね…(笑)。

さいごに

今回は、メキシコの地でご活躍されるお二人にお話しを伺いました。お二人の話からはいかにメキシコが好きなのかという部分がひしひしと伝わってきました。ご活躍されている舞台は違いますが、どちらも「日本とメキシコの架け橋」になりたいという共通の軸を持つお二人。それを実現する手段は違いますが、同じところを目指す者同士、またメキシコ好き同士とても息が合っているようでした。これからのお二人のご活躍に注目です!

リンク@入山杏奈さんYouTubeページGoogle map Hostel & Bar Encounter GuanajuatoGoogle map GOEN
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