メキシコへ影響のある政策
それでは、トランプ氏にかわって米国新大統領となったバイデン氏は具体的にどのような政策転換を行うのでしょうか。メキシコに影響のある政策をピックアップして解説していきます。
①移民政策の転換
バイデン米大統領は、優先的に前政権による過酷な移民政策の転換を行うことを表明しています。1月22日、移民政策と新型コロナウィルス対策に関してメキシコのロペスオブラドール大統領と電話会議を行い、今後両国が協力していく姿勢をみせました。具体的には、アメリカ - メキシコ国境間の壁の建設の中止や親子を引き離す措置の見直しを行う文書に署名をしています。
今後それらの政策転換が実際に円滑に進んでいくのか疑問ではありますが、『トランプ前政権が導入した幾重にも絡み合う政策を解きほぐし、移民寄りの政策を確立するには時間を要する』とバイデン氏の側近らは述べています。
参考ウェブサイト記事(2) へ参考ウェブサイト記事(3) へ参考ウェブサイト記事(4) へ②NAFTA見直しと新たな税制度
トランプ元大統領は、米国の大幅な対墨貿易赤字からNAFTAを脱退する方針を示し、代わってUSMCAを2020年7月に発行させました。バイデン米大統領も、「中国・メキシコの貿易赤字を批判しており、トランプ政権同様に生産拠点の国内回帰を促す方向性は変わらない」とのこと。選挙前演説でも、USMCAがそれまでのNAFTAよりもベターだと評価しています。
一方で、バイデン米大統領はその具体的な手法として、米国の多国籍企業を主なターゲットとする法人税改革を志向しています。もちろん、これにはメキシコ企業でなく日系企業の米国現地法人も含まれているので今後も注視していく必要がありそうです。ちなみに、USMCAのゆくえにはTPP復帰可否(次項目にて解説)が大きく関与しており、メキシコ・カナダが加盟するTPP11に米国が参加すれば、USMCAを結ぶ必要がなくなります。
参考ウェブサイト記事(5) へ参考ウェブサイト記事(6) へ参考ウェブサイト記事(7) へ③TPP、パリ協定などの国家間枠組みへの復帰
・TPP(環太平洋経済連携協定)
メキシコだけでなく日本にも大きく影響を及ぼす米国のTPP復帰可否。TPP11は、自動車・部品の原産地規制はUSMCAよりもかなり緩く規定されているため、TPP復帰を望むメキシコ、日系企業も多いかと思います。
しかしバイデン米大統領は国内政策を優先していることから、TPP復帰の優先順位は高くなく、復帰を目指す場合でも、原産地規制の見直しを求める可能性が高いといえます。
・パリ協定
2015年に温暖化対策の国際的な枠組みとして採択された『パリ協定』に関しては、復帰する手続き開始を命ずる大統領令にバイデン氏は既に署名を行いました。前政権下で昨年正式に離脱した同協定ですが、バイデン米大統領は、環境政策を外交・安全保障政策に加えて経済再生の柱に据えると発表しています。他にもバイデン氏は、EV(電気自動車)を連邦政府が優先的に購入し、各地に充電設備を新設するなどして新たに雇用を創出することをアピールしています。
参考ウェブサイト記事(8) へ参考ウェブサイト記事(9) へ参考ウェブサイト記事(10) へ補足:コロナ禍における一時的な政策も・・・
今月1日のバイデン米大統領とメキシコのロペスオブラドール大統領のオンライン会談にて、両国間の移民問題と新型コロナウィルス対策に協力していくことを明らかにしました。
前政権による移民政策の転換を進めると同時に、バイデン米大統領は新型コロナウィルス対策としてトランプ政権が発令した、『違法な越境者の強制退去に関する規定』を廃止する大統領令に署名は行いませんでした。
今後も、バイデン氏は国民のワクチン接種やWHO脱退手続きの停止など新型コロナウィルス対策並びに国内政策を最優先に進めていく姿勢をみせています。
参考ウェブサイト記事(11) へ参考ウェブサイト記事(12) へまとめ
バイデン米大統領がメキシコへ与える影響、いかがだったでしょうか?
トランプ元米大統領による政策の大幅な見直しと新型コロナウィルス流行拡大の影響で、バイデン米大統領による政策が実施され変化が現れるまでにはしばらく時間がかかりそうですね。これからもバイデン米大統領とメキシコとの関係は要チェックです。
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