波紋を呼ぶ、「大麻の娯楽的使用の禁止は違憲」
2017年に医療用の大麻使用が合法化されたメキシコでは、その後2018年に最高裁判所にて大麻の娯楽的使用を禁止することは違憲であると判断し、それ以来議会では嗜好用大麻合法化案立法化を求めて議論が繰り広げられています。
大麻を合法化する必要性は、メキシコに潜む人権侵害にヒントが
大麻が合法化へと進んでいる背景には、麻薬組織(カルテル)を中心とした麻薬戦争と人権侵害の関係性がこの法案に深く関連しています。
長年の歴史に渡り、メキシコ政府は麻薬組織(カルテル)対策に躍起になっており、2006年にはカルデロン元大統領が組織犯罪に「宣戦布告」をしました。数千人規模の海軍・警察と5万人を超える兵士が派遣され、麻薬戦争に参加していると言われています。違法薬物が犯罪組織(カルテル)の資金源になっており、今回嗜好用大麻を合法化することで大麻の生産から流通までを政府下で管理し、犯罪組織の関与を減らすという方針です。
しかし一方でこの法案が通ったとしても、麻薬組織の弱体化にはつながらないとも言われています。というのも、現在大麻の市場価値が以前より落ちているため既に大麻は主要な麻薬組織の取引製品ではなくなっています。そのため合法化したところで麻薬組織の力を削ぐことはあまり期待できないのです。ですがこの法案にはもう一つ、メキシコが長年抱えてきた国家問題を改善させる手立てとなる可能性を秘めています。それが人権問題です。
合法化は腐敗した組織の改善につながる
ヒューマンライツウォッチ(国際的な人権NGO)は、「大麻の合法化は人権を支持する大きな一歩である」と述べています。その理由に、大麻を所持しているという理由で2019年にはメキシコでは24,000人が投獄されている現実があるからです。この数字はメキシコ内の刑務所の総人口の約12%に相当し、そのうち約40%は薬物所持で起訴、または有罪判決が下されています。更に、刑務所で拘置されている人々は職員からの暴力や虐待、外との連絡の欠如、医療の欠如などといった問題に直面しているのです。
以前にもヒューマンライツウォッチは、「メキシコ軍と警察は組織犯罪との戦いにあたり広範囲におよぶ人権侵害を犯している。しかも、それに対し適切な捜査をほとんど全くしていない」と報告書で述べています。主に麻薬組織に宣戦布告をしたカルデロン元大統領の任期の間の拷問・失踪・殺人事件について触れ、「政府関係者は日常的に犠牲者は犯罪者だったとして片づけ、政府関係者側の犯罪疑惑は偽りだと軽視している」と指摘しています。メキシコでの麻薬組織と政治家の癒着・共犯は昔からある問題ですが、人権を無視した無法地帯の取り締まりは多くの犠牲者を出しています。
この問題に対し現大統領のロペス・オブラドール氏もカルテルと政府の間に生じている癒着と不正の取り締まりを強化しています。
この大統領の指揮のもとメキシコ議会も「大麻所持者が警察に虐待されるリスクを減らす為にも、法案を修正しなければならない」と述べています。
まとめ
「薬物政策を前進させることはメキシコの立場を示し、世界が薬物問題を再考する一歩となる」言われているこの課題は現在、上院で審議されている最中です。amigaでは引き続き今後の動向に注目していき、最新情報をお届け致します。
参考文献①<br>
参考文献②
参考文献③