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【土地っ子になれ】海外赴任歴19年のYKK 久保秀之社長に学ぶ海外で働く秘訣

世界各地にオフィスと工場を持ち、ファスニングを中心とした事業で活躍されるYKKグループのメキシコ現地法人 YKK Mexicana S.A. de C.V.様。今回は今年でメキシコ本社創立27周年目を迎えるYKK Mexicana様を取材させて頂き、メキシコ社社長を務める久保様にメキシコに至るまでの人生とメキシコでの事業について迫りました!

今年で27周年目を迎えるYKK Mexicana

今回取材させて頂いたYKK株式会社様は、ファスナーで有名な「ファスニング事業」・住宅、ビル用建材を扱う「AP事業」を中核とした事業を展開しています。ファスニング事業に関しては、衣料品以外に宇宙服や自動車に使われるシートにもその技術が使用され、幅広く商品を展開されています。「善の巡環」を企業精神としてに世界72か国106の地域で事業を行われています。今回はファスニング事業を中核にされているYKK Mexicana様のイラプアトの工場にお邪魔し、メキシコ本社で社長を務める久保様にインタビューをさせて頂きました。

ブラジルで17年の赴任期間を経て情に溢れる国メキシコへ

【amiga】

本日は宜しくお願い致します。

多くの方はメキシコに来る際に言語面や治安面などで不安を抱かれる方が多いのですが、

久保様はメキシコに一番初めに来た際、どういった印象を抱かれましたか?

【久保様】

実際にメキシコに来てからの印象と来る前までの印象はだいぶ違いましたね。というのも日本で放映されているメキシコ映画はいつも影があるように感じるんですよね。それが実際来てみたらみんな明るい。私は来た際にマリアッチで歓迎されたのでそれまでに持っていたイメージと全く違ったのが第一印象です。元々メキシコに赴任になる前はブラジルに赴任をしていたのですが、そこでも持っていた今までの印象が覆される体験をしました。

【amiga】

ブラジルにもご赴任されていたのですね。

【久保様】

はい、2001年に日本を離れ、それから17年間ずっとブラジルで勤務をしていました。元々ラテンの言語は勉強したことがなかったので、ポルトガル語もブラジルで働きながら学びました。メキシコに来た当初は、ポルトガル語とスペイン語は類似している部分があるので意思疎通はできたのですが、従業員が私のポルトニョール(スペイン語とポルトガル語が混じった言葉)を理解してくれるのも大変助かりました。

【amiga】

久保様は海外生活が非常に長いようですが、元々幼少期から海外にご興味を持たれていたのでしょうか。また興味を持たれたのはどういったきっかけからだったのでしょうか。

【久保様】

高校生の時に「世界ふしぎ発見」という番組でイタリアの大聖堂が特集されているのをたまたま見たんです。それから大学に入学したら「海外旅行をするぞ」と思い始めました。入学後はアルバイトをして貯めたお金で春休みの度に海外旅行をしていました。旅をする途中に「やっぱり英語は大事だな」と思い始め、大学を休学してイギリスに1年間留学に行きました。

【amiga】

学生時代に海外思考になったのが現在の会社に入社されたきっかけだったのですか?

【久保様】

そうですね、入社のきっかけは「すぐ海外に行ける」というところが理由の一つでした。早い段階からYKKは海外での展開を拡大しており、1959年にはニュージーランド、1964年にアメリカとオランダに工場を建設していました。会社の創業者が「土地っ子になれ」という言葉を掲げており、「お客様がいる所ならどこにでも行く」、そのくらいの意気込みで昔から人材を海外に送り出していました。

【amiga】

「土地っ子になれ」という言葉は海外での働き方に大きく影響しているのですね。

【久保様】

はい、私もその最たる例ですが一度海外に行くと海外赴任期間が長いのがその証拠ですね。20年くらい滞在する人も多く、それくらい長くなるとその国の事情は色々みえてきます。やはりその国の文化や肌感覚が分からないと事業はできないのではないかと思います。長く海外赴任をすることで、感覚的に分かってくることが多くあります。

例えば私が赴任していたブラジルとメキシコは法律という点でとてもよく似ています。

二国間で労働法など類似する点が多いので、メキシコでもこれまでブラジルで培った知識を活かし、「これはダメなんだ」ということが感覚的に分かってきます。これは海外で長く働く中で段々と分かってくる感覚ですね。

【amiga】

一方で、ブラジルでの人間関係とメキシコでの人間関係で久保様が感じた相違点などはありますか。

【久保様】

ブラジルに関しては、日系の移民が多いお陰で日本人にとっては非常にビジネスがしやすい環境でした。例えば、ブラジルにはポルトガル語で「Garantia japones」=(Japanese guarantee)という言葉が存在します。これは「日本人に仕事を任せれば大丈夫」という信頼の言葉ですね。一方でメキシコにおいても同様にビジネスのしやすさを感じます。日本人に対する偏見もないですし、近所の人によくしてもらったりと メキシコ人社会には相互扶助関係が根付いており、情に熱いイメージがありますね。日本ではメキシコと言えば「犯罪」などのマイナスイメージが強いですが、実際はそのイメージからは想像ができないくらい温かいです。

メキシコにきて衝突した課題

【amiga】

メキシコに赴任されて3年目を迎えられている久保様ですが、YKK Mexicana様での課題などはありますか?

【久保様】

人事システムの修正というのが課題です。今あるイラプアトの工場は2001年に設立されました。出来た当時は周りに何もなかったのですが、2010年以降日系の自動車関連会社が周辺で急増したことで、仕事が溢れ従業員の離職率というのが問題になりました。私が来た2年前も離職率が高く、人の入れ替わりが激しかったので「どうすれば長期的に良い人材が一緒に弊社で活躍してくれるか」ということが課題になりました。その問題に対して2020年に1年近くかけて、人事システムを整備・導入したのですが、今はそれを運用始めた段階ですね。現在のテーマは大きく3つです。「マネージャーや幹部層には成果が出たらボーナスを支払う」、「目標達成度に応じた評価」、「評価の可視化」です。最後に信頼できる幹部とのコミュニケーションです。給料ももちろんですが、YKKのコアバリューに基づき幹部との相互理解を深めるための「語らいの場」を日々の会話で意識し大事にしています。

【amiga】

働く上でコミュニケーションにも重点を置かれているのですね。

【久保様】

そうですね、例えば日本から渡墨したばかりの日本人がスペイン語を話せず、たどたどしくても「どうやって気持ちを届けようか」という気持ちが大事だと思います。勿論通訳を通した方が良い時もありますが、自分で伝えようとすると聞く側も一生懸命聞こうとしてくれるので直のコミュニケーションを大事にしています。

【amiga】

離職率の低下以外にこれまでのメキシコ勤務期間で久保様が注力したことはありますか?

【久保様】

これはまだ現在取り組んでいる最中なのですが業務のシステム化ですね。私が赴任した時は丁度幹部の入れ替わり時期で新しい幹部が大勢いました。なのでまず、仕組づくりに時間を割いたのです。当時私が来たときはIT化が遅れていて、人の手に頼ったオペレーションが多かったです。先ほど言ったように当時は離職率が今よりも高かったのでその人が辞めてしまったらオペレーションが起動しなくなるといった問題がありました。それを改善する為に、自動化に力を入れています。例えば可視化する為のタスクコントロールやマニュアルでやっている部分の自動化ですね。基本的には弊社の工場では受注から生産までと経理でグローバルで使用している統一の基幹システムがあるのですが、ローカル対応が要求されるインボイス、貿易処理などいろいろな部分が繋がっていません。そういったバラバラの箇所をつなぎ自動化していくのも今後の課題ですね。

ファスナーだけじゃない、挑戦し追い求め続けるYKKらしさ

【amiga】

久保様が考えられるYKKらしさとは何でしょうか?

【久保様】

若い世代から挑戦、そして自由活発に仕事をさせてもらえる、そこがYKKらしさだと思います。例えば、毎年のようにアジアに新しい工場が設立されており、若いうちからそういった現地で働く機会を与えられています。新天地でも皆が即戦力にならなくてはいけない、そういった経験が若いうちからできる。

YKKの創業者は「一本一本は若くて細い木でも全員が手を携えて一緒に大きく育つ『森林集団』」を目指していました。若い人も自由に新しいことに挑戦できる環境は正にこの理念を体現していて、YKKらしさに繋がると思います。

【amiga】

久保様は10年後どんなYKK Mexicana にしていきたいと考えていますか?

【久保様】

「善の巡環」精神に基づいた環境保全に取り組みたいと考えています。

現在、パンデミックの影響でアパレル業界では「環境」が非常に重要なキーワードになっています。元々アパレル業界は環境負荷が高い業界で、特にジーンズなどでは水の消費量の多さが課題とされてきました。またシーズンに合わせて売り残しが無いように多めに作るという業界の大量生産大量消費(一部売れ残りは廃棄)を迎合していた時代からの慣行もありました。しかし新型コロナウイルスの影響で服の消費が減ったことに加え、環境への意識が高まったことでアパレル業界も無駄なものを作らない傾向に現在は移行しつつあります。我々も同様に、「YKKサステナビリティビジョン2050」を掲げ温室効果ガス実質排出ゼロを目指しております。その一つに生産に使用する取水量の削減や、再生プラスチック素材を使用したファスナー「ナチュロン」の展開を行っています。具体的には、2030年までに商品の繊維材料を100%持続可能素材(リサイクル材・自然由来材料等)に変更することを目標に掲げています。また、メキシコにおいては現在、水不足が問題になっているので、取水量の削減とリサイクルに取り組んでいます。次世代を意識した企業活動を軸に、時代背景に合わせて弊社は環境に配慮したビジネスを常に形を変えて行っています。「善の巡環」を念頭に置き、10年後も社会に求められる価値を提供し続けるYKKであって欲しいと考えます。

【amiga】

最後に、海外赴任が長い久保様からこれからメキシコに来られる方また、海外で働きたいと思われている方に向けて一言頂いてもよろしいでしょうか。

【久保様】

メキシコに来られる前はほとんどの方が「危ない」といったイメージを持っているかと思うのですが、「不用意に携帯や財布を放っておかない」などの注意さえしていれば基本的に安全です。あとは、自分から溶け込んでいく姿勢ですね。メキシコ人は親切な人が多く、食事も気候も良い。メキシコは日本の土地面積の5倍もあるので色んなとこに行って頂いて本来の「良い部分」を自分で見て判断してもらえればと思います。

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