PEMEX社の石油プラットフォームで起きた火災事故
2021年8月22日(日)午後3時10分に発生したPEMEX社の火災事故。
今回の火災は、メキシコ湾のカンペチェに位置し、PEMEX社が運営している石油精製所の中で最も生産性の高い、ク・マロブ・サップ(Ku-Maloob Zaap)油田、E-Ku-A2精製所で起きたものでした。
今回の火災では、従業員5名が死亡し、その他6名が負傷、少なくとも2名が現在行方不明になっているとPEMEX 社のオクタビオ・ロメロ取締役は発表しています。
事故の原因は、当初プラットフォームの発電設備による火災であると指摘されていましたが、PEMEX取締役のロメロ氏は、「プラットフォームのメンテナンス不足によるものである」と断定しています。
先月7月2日(金)に同じくカンぺチェ沖のメキシコ湾中央部でPEMEX社の海上パイプラインからガスが漏れ、「炎の目」が海に発生するという大火災が起きました。この火災はKU-C施設から150m離れた場所で起きた事故でした。
この事故3日後にPEMEX社は「火災とガス漏れの原因は、暴風雨によるもの」と主張していましたが、今回の石油プラットフォームの事故も重なり、国営石油会社に対して世間では経営に対する非難が叫ばれています。
参照
今回の事故の背景とPEMEX社
PEMEX社のロメロ氏は今後、事故に関する更なる原因追究を行うと述べる一方で、
「前政権での事故件数の方が多かった」ことを指摘しました。
というのも、国営石油会社であるPEMEX社に対し、2015年から2019年の間、過去の政権はプラットフォームなどの設備メンテナンスへの投資を削減していた背景があります。
しかし、過去にあった潜在的な事故や災害へのリスクを減らす為に、現政権になってからというもの2019年には42億6,500万ペソ、2020年には51億8,800万ペソ、2021年には33億1,000万ペソと安全性と信頼性を取り戻すために莫大な投資が開始されました。
ロメロ氏は今回の事故に対して「現政権下以降、事故の要因は偶発的、突発的なものが多く、不注意によるケースではない。現に平均事故関連請求件数は500件を超えるものであったが、2019年は394件、2020年は210件と減少している傾向にある。石油産業は常にリスクを伴う産業であり、事故の発生件数は例年よりも少ないことを確信してもらいたい」と述べました。
参照
火災事故によるPEMEX社への今後の影響
しかし今回の火災は、10年半「生産量を回復させる」ことに特に集中してきたPEMEX社にとって大きな痛手となり、メキシコ国内の主要石油会社の中で最も金額の高い、合計1,150億ドルの負債を抱えることとなりました。
というのも今回の火災事故により、油井125箇所の稼働が停止し、国内生産の25%に相当する42万1,000バレルの石油生産が停止しました。
エネルギー専門の分析者であるアルトゥーロ・カランサ氏は、「生産を滞らせることによる経済影響は1日3,000万ドル程度になる可能性がある」と述べ、「今回の事故は経済コストだけでなく、PEMEX社のイメージダウンにも影響する」と指摘しました。
一方で、PEMEX社のロメロ氏はYouTubeに投稿した8月24日の動画にて
「日量7万1,000バレルを生産する35の油井が復旧した。36時間以内に更に29の油井の活動を再開し、生産量を11万バレル増やす」と述べました。さらに、同社の沖合石油プラットフォームで発生した火災の打撃を受けた石油生産を今月8月30日までに全て再開させることを明らかにしました。
参照
まとめ
今回は、メキシコの国営石油会社PEMEXが保有する石油プラットフォームで起きた火災事故詳細についてご紹介致しました。莫大な経営赤字を以前から抱えている同社ですが、今回の事故は国が発行する国債の信用にも関わる問題かと思います。今後PEMEXと政府がどう動いていくのか注目ですね。