2021/09/21

【中南米共同体CELAC】メキシコ市でサミット開催。中南米統合への新たな試みとは?

9月18日(土)、メキシコシティの国立宮殿にて、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)のサミットが開催されました。今回は、本サミットの詳細についてお届け致します!

CELAC 2021 サミット

出典 - https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1851R0Y1A910C2000000/

2021年9月18日、メキシコシティにある国立宮殿にて、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)の第6回サミットが開催されました。

今回のサミットにはラテンアメリカ及びカリブ諸国の32ヵ国から代表者が参加しました。また、国連の機関の一つであるラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)の代表や欧州機構(EU)の主要機関の一つである欧州理事会の議長も本サミットに参加しました。

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は本サミットで「米州大陸は欧州連合(EU)のような経済共同体を目指すべきだ」と述べ、大陸内での地域紛争の解決や経済的統一に向け、CELACの協力体制を強めていく姿勢を表しました。

本サミットでは

・域内諸国の方向性のすり合わせ

・新たな制度的枠組みの提案

・2021年7月に調印されたラテンアメリカ・カリブ海宇宙機関(ACLE)の合意

・気候変動に対する包括的災害対応基金の合意

・医薬品の他地域への依存を減らすための健康自給計画の承認

・犯罪組織への対策

・パリ協定に基づく排出削減への取り組み

などが話し合われました。

参照
出典 https://www.celag.org/cumbre-celac-2021-renovada-apuesta-por-la-integracion-latinoamericana/

そもそもCELACとは?

出典 - https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Presidentes_en_el_CELAC_de_Caracas_de_2011.jpg#/media/ファイル:Presidentes_en_el_CELAC_de_Caracas_de_2011.jpg

ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(Comunidad de Estados Latinoamericanos y Caribeños:CELAC)は2011年12月に発足した、米国とカナダを除く米州大陸の33ヵ国が加盟する共同体です。中南米共同体とも表記されます。

CELACは、1980年代、中南米諸国で武力紛争が続く中、米国の干渉を排除して紛争を平和的に解決することを目的に始動した「ラ米・カリブ首脳会議」が前身となっています。2011年にベネズエラの首都カラカスで開催された中南米諸国33ヵ国の首脳会議にて、正式な組織としてCELACが発足しました。その際、議長国ベネズエラの反米左派、ウゴ・チャベス大統領は、キューバを除名した*米州機構(OAS)を批判し、CELACと中国との関係強化*を表明しました。

CELACは中南米の問題は中南米で解決するという方針で発足し、将来的な中南米統合を長期的な目標に掲げています。CELACは発足時に首脳が署名した「カラカス宣言」や「カラカス行動計画」が指針となっており、法的な条約に基づいた機構ではなく、緩やかな繋がりの組織となっています。

*キューバは冷戦下の1962年、キューバ危機をきっかけにOASから除名されました。2009年にキューバの除名が解除されたものの、キューバ側はそれを拒否し、未だOASに復帰していません。

*当時中国政府は、左派政権国との間で反米主義において共鳴し合うためではなく、あくまでWin-Winの関係を築くために、(米国への友好的な外交姿勢を意識しつつ)中南米に対して急速に関係拡大を図っていた時期でした。中南米諸国にとっても、中国の支援は、米国政府と協力せずに、中南米の発展を促進するために有益だと考えられていました。

参照①
出典 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/latinamerica/kikan/celac.html
参照②
出典 https://www2.jiia.or.jp/pdf/research/H28_US-China/16_osonoi.pdf
参照③
出典 https://jamestown.org/program/chinas-cautious-economic-and-strategic-gamble-in-venezuela/

なぜ今回のサミットが開催されたのか?

今回のサミットは、米州機構(OAS)に対する不審感や中南米地域統合の弱体化を受け、域内における様々な課題に対処し、地域統合を促進するために開催されました。

米州全体の地域問題に取り組む機関であるOASは、米国の首都ワシントンが拠点で、米国主導の色彩が強いため、米州域内では左派国を中心に反発があります。

今回のサミットで、ロペス・オブラドール大統領は「CELACは域内統合の主要な機関になる」とも語りました。同大統領は、OASによる内政干渉を批判しており、米国とカナダが加わっていない共同体を重視する姿勢を示しています。

今回のサミットでは、キューバのディアスカネル大統領やベネズエラのマドゥロ大統領ら左派の首脳が目立った一方で、ブラジルの右派のボルソナロ大統領は本サミットに代表者を送りませんでした。中道右派であるウルグアイのラカジェポー大統領は「キューバ、ニカラグア、ベネズエラでおきていることを心配している」と、反体制派に対する抑圧行為に懸念を表明して、左派政権の国と距離を置く姿勢を示しました。

キューバ、ニカラグア、ベネズエラでは現在、政情不安や反政府デモが続いています。キューバでは今年7月に同国で過去最大規模の反政府デモが発生しました。デモ参加者らは、自由や民主主義を求めるとともに、新型コロナウイルスのワクチンが必要だと訴えました。ニカラグアでは2018年4月、社会保障改革を発端とした反政府抗議デモが発生し,警察やパラミリタリー*による武力を用いた弾圧等により300名以上が死亡しました。その後、同国のオルテガ政権は、政府に批判的なメディアの閉鎖や国際人権機関の追放など、批判勢力への締め付けを強めています。ベネズエラでは2013年の原油価格の低迷により産業が衰退し、物不足が深刻化。それによりインフレが急激に進行しました。国民の反発が続きましたが、同国のマドゥロ大統領は力で押さえつけ、現在では人口の1割(約340万人)が難民や移民として国外へ出ていくほど、政情不安が続いています。

*国が正規に編成した軍隊以外の、軍事組織・武装組織を全般的に示す言葉です。

CELACは域内における各国の立場や状況の違いなど、中南米の統合において様々な課題を抱えています。しかしながら、今回のサミット開催は弱体化している地域統合を促進するための第一歩となったのではないでしょうか。amigaでは今後もメキシコの最新情報をお届け致します。是非ご注目ください。

参照①
出典 https://www.celag.org/cumbre-celac-2021-renovada-apuesta-por-la-integracion-latinoameric
参照②
出典 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1851R0Y1A910C2000000/
参照③
出典 https://www.asahi.com/articles/ASM4L6TS1M4LUEHF00H.html
参照④
出典 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nicaragua/data.html
参照⑤
出典 https://www.bbc.com/japanese/57801639
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