メキシコとアメリカの国境で何が起きているのか
*「奴隷制時代の黒人取り締まりを思い出させる」と非難を浴びている写真
現在、リオグランデ川(アメリカ・テキサス州とメキシコ・コアウイラ州との国境境を流れる川)を渡り、アメリカに避難しようするハイチ人がアメリカとメキシコの国境付近に集中しています。その数は1万人以上にものぼり、メキシコのコアウイラ州とアメリカのテキサス州の間では大規模な難民キャンプが出来上がり、ハイチ人移民がアメリカへの入国を試みています。
一部の報道では、馬に乗った米国国境警備隊員が「まるで牛を扱うかのように移民を追い払う姿」の映像が流れ、米国国土安全保障省(DHS)のアレハンドロ・マヨルカース長官は、報道をみて「驚愕した」と非難しています。
アメリカへ入国するハイチ人移民は現在、約400人から数日で14,000人まで膨れ上がり、
更にコロンビアには約3万人の北への移動を考えている移民がいると予測されているため、今後も更に増加する見込みが立てられています。
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増加するハイチ人移民ーその理由とはー
現在、急激に押し寄せている移民の数に米国大統領バイデン氏は頭を抱えています。
しかしなぜハイチ移民が1万人まで急増したのでしょうか。
その理由はハイチが政情不安と経済不況に見舞われたことにあります。
今年7月7日に同国では大統領が暗殺され、政治体制が崩れるという出来事が起こりました。更に翌月8月14日には、マグニチュード7.2の地震が発生し、死者は2,200人、けが人は1万2,000人、全壊・半壊は合計で10万戸以上にのぼるなど大きな被害をもたらしました。
このような政情不安と災害に見舞われたハイチ人の多くが新しい生活を求め、北上するといった事態に至っているのです。アメリカ国境にハイチ人が集中している事態に対して、米国国土安全保障省(DHS)のアレハンドロ・マヨルカース長官は誤った情報が移民の間で流れていると指摘しています。
2010年のハイチ地震後、米国から出国できなくなってしまったハイチ人に適用されたTPS(一時保護資格)が「現在も適用される」、「アメリカの国境が開いている」といった誤った情報が流れているというのです。そのため、既にアメリカに親族がいるハイチ人が家族との合流を目指し、米国へ渡るため国境へ押し寄せているという事態に至っています。CNNの報道によると、ハイチ人のティルス家族は、友人からテキサス州デル・リオで国境が開いているという噂を聞きつけ妻と5歳の娘、そして3歳の息子を連れて、米国へ渡ろうとしていました。しかし、国境付近のリオグランデを渡ろうとしていたとき、強制送還にあい「絶望している」と語りました。
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今後のアメリカの対応は
現在アメリカの議会はこのハイチ移民への今後の対応に関して議論の渦中にあります。
9月18日時点で1万4,000人以上の移民が同国テキサス州、デル・リオに詰めかけており、米国バイデン政権は移民を本国に送還する動きを加速させています。
一方で、メキシコとアメリカの国境間では遺棄された幼児が複数人発見され、米国国内では50人超の民主党議員が「強制送還」に対して非難の声を寄せています。
そのうちの一人、マサチューセッツ州アヤンナ・プレスリー下院議員は
「ハイチが政治・公衆衛生・経済面で史上最悪の危機に見舞われている中で、バイデン政権はハイチ人を不当に本国に送還し続けている。バイデン政権が『ハイチ人コミュニティを支えるためにできることは全てしている』と主張することは許されない」と述べています。
マヨルカース長官は今週月曜、9月27日に今後の方針に関して以下のように述べました。
「第一に非正規移民の根本原因に対処することに努めます。第二に亡命申請のために移民が危険な旅をしなくてもいいように人道的な道筋を確保します。そして第三に国内の亡命制度を再構築します。」
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まとめ
バイデン政権の移民対応に議会では批判の声が集中する中、今後の具体的な行動に関心が集まっています。移民を流入させることは犯罪者の流入や違法薬物の取り締まりが難しくなるなどの側面もあり、メキシコ国民や在住者にとっても注目すべき問題です。今後も国境間の移民問題について更新していきますので引き続きご注目下さい。