メキシコ人女優が高級ブランド「プラダ」のモデルデビュー
2018年公開の映画「ローマ(ROMA)」で一躍有名になったメキシコ人女優、ヤリッツァ・アパリシオ(Yalitza Aparicio)が高級ブランド「プラダ(PRADA)」のイメージモデルに起用されました。9月24日に自身のインスタグラムにてプラダの2022年春夏コレクションを身に纏った写真をアップしました。今回の起用は、3年前の映画「ローマ」でデビューしたばかりの彼女のキャリアにとって、大躍進だと言えます。
女優・モデル業に加えて、ユニセフの親善大使としても活躍している彼女。彼女の先住民族やその女性の地位を守るためのさまざまな国際的イニシアチブへの支援は、社会的および文化的側面に大きな影響を与えてきました。そんな彼女が今回、イタリアの高級ブランド「プラダ」のコレクションに抜擢されたことは、国際的なエンタメ業界におけるメキシコや先住民族に対するステレオタイプを払拭するための更なる一歩となったのではないでしょうか。
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ヤリッツァ・アパリシオとは、一体どんな女優?
ヤリッツァ・アパリシオ(Yalitza Aparicio)は1993年12月11日に生まれました。先住民族の多いオアハカ州トラスコで生まれた彼女は、父はミシュテカ族、母はトリケ族と、先住民族の両親を持っています。彼女はミシュテカ語が多く話される地域で育ちましたが、あまりこの言語が得意ではなく映画ローマのために改めて習得したと言います。
映画「ローマ」で女優デビューを果たした彼女は、実は演技の訓練は全く積んでおらず、この映画以前は保育学校に通い、映画への出演が決まる同時期に教員免許を取得したそうです。この映画が演技初挑戦という、珍しい経歴を持つ彼女ですが、この映画の出演を通して数々の賞を受賞しました。彼女はシカゴ映画批評家協会賞、放送映画批評家協会賞、ハリウッド映画賞、ゴッサム賞、サンフランシスコ映画批評家協会賞、サテライト賞、女性映画批評家協会賞の女優賞にノミネートされ、また雑誌『タイム』や『ニューヨーク・タイムズ』の年間ベスト演技にも選ばれました。
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「ローマ(ROMA)」はどんな映画?
「ローマ(ROMA)」は「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」「ゼロ・グラビティ」など、数々の名作を手がけるメキシコ人映画監督アルフォンソ・キュアロン(Alfonso Cuarón)による、米墨合作のドラマ映画です。2018年11月にアメリカで限定公開され、その後12月にNetflixで配信されました。本作はNetflix作品として初めて日本の映画館で興行的に劇場公開された作品となっています。1970年と1971年を舞台にとある中流家庭とその家政婦の日常が描かれています。タイトルはメキシコシティの地区の名前であるローマに基づいており、そこで育ったキュアロン監督の幼少期時代の半自伝的な物語が描かれています。
この映画は2018年8月の第75回ヴェネツィア国際映画祭で、最高賞である金獅子賞を獲得しました。その映像美から、映画評論家からは「痛いほど美しい」「魅力的」と絶賛されています。雑誌「タイム」やニューヨーク映画批評家協会からは2018年のベスト作とされた他、ナショナル・ボード・オブ・レビュー*の2018年トップ10入りも果たしました。第76回ゴールデングローブ賞では外国語映画賞と監督賞を受賞しました。また、第91回アカデミー賞外国語映画賞にメキシコ代表作として出品され、同賞および作品賞を含む同年最多の10部門にノミネート。外国語映画賞・監督賞・撮影賞の3部門を受賞しました。
*米国映画批評会議という米国の非営利団体です。映画の普及促進に関する活動を行う団体としては、現存する世界最古の団体です。
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世界中で活躍しているメキシコ出身女優をご紹介します!
・サルマ・ハエック(Salma Hayek)
サルマ・ハエックは1966年、ベラクルス州に生まれました。22歳の時にメキシコ国内のテレノベラ*でデビュー後、24歳で英語を話せないままロサンゼルスに移り、演技を学び始めました。彼女は不法移民の時期もあり、ラテン系としてハリウッドの中で役を掴むまでは苦労したと言います。しかしその後、同じラテン系の血を引くロバート・ロドリゲス監督と出会い「デスペラード」のヒロイン役を演じたことで、一躍名が知られるようになりました。この縁で、ロドリゲス監督作品のほとんどに出演しています。
2002年年公開の「フリーダ」では、メキシコの画家であるフリーダ・カーロを演じ、アカデミー主演女優賞などの候補にもなりました。2005年にはカンヌ国際映画祭の審査員を務めました。テレビドラマ「アグリー・ベティ」の製作総指揮を務めたり、自身の映画プロダクション「Ventanarosa」を設立しプロデュース業にも乗り出すなど、マルチに活躍しています。
*スペイン語・ポルトガル語で「テレビ小説」を意味する、ラテンアメリカを中心に制作・放映されているメロドラマのこと。
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・ルピタ・ニョンゴ(Lupita Nyongo)
ルピタ・ニョンゴはケニア人の両親の元にメキシコで生まれました。その後すぐケニアに帰国して育ち、現在はアメリカを拠点に活躍しています。。彼女の父親はケニアの元医療大臣を務め、その後は大学教授として働いていたそうです。
彼女はイェール大学で演技を学び、2013年のスティーヴ・マックイーン監督の映画「それでも夜は明ける」での演技が絶賛され、アカデミー賞助演女優賞などを受賞しました。その他、2018年の映画「ブラックパンサー」や、日本でも有名なスターウォーズシリーズの3作、「フォースの覚醒」「最後のジェダイ」「スカイウォーカーの夜明け」にも出演しています。さらに彼女は女優業の他にも、映画やミュージックビデオの監督としても活躍している、マルチな女優さんです。
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・セレーナ・ゴメス(Selena Gomez)
セレーナ・ゴメスは日本でも有名で、多くの方が知っているのではないでしょうか。彼女はメキシコ人ではありませんが、メキシコ人を父に持つ、ラテン系の血を引く女優です。彼女は1992年アメリカ・テキサス州で生まれ、7歳の時に子役としてデビューしました。また、ディズニーチャンネルの「スイート・ライフ」や「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ」、「ウェイバリー通りのウィザードたち」など、多くの作品に出演しています。さらにはモデルや歌手としても活躍しながら、2009年にはユニセフ親善大使に就任するなど、開発途上国の子供たちへの支援活動にも力を注いでいます。
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まとめ
今回は映画「ローマ」及び主演のヤリッツァ・アパリシオを初め、世界を舞台に活躍するメキシコ人女優をご紹介致しました。みなさんご存知の映画に出演している女優さんも多かったのではないでしょうか。
しかしながら、ハリウッド映画ではメキシコの貧しいイメージやドラッグ・暴力などの描写ばかりがクローズアップされる傾向にあります。また、メキシコ人女優の起用がハリウッド映画には比較的少ないことに対しても、批判の声が上がっています。そういったメキシコのステレオタイプが存在する中で、今回のメキシコ先住民族の血を引くヤリッツァ・アパリシオが映画やモデルとして活躍の幅を広げているのは、喜ばしいことですね。今後さらに、メキシコ人がエンタメ業界でセンセーションを巻き起こし続けて欲しいです!
今後もamigaではメキシコに関する最新情報を発信していきます。お見逃しなく!
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参照②【イケメン俳優!】世界で活躍するメキシコ人俳優3人