メキシコ最高裁、中絶犯罪化に違憲判決
9月7日、メキシコの最高裁判所はメキシコ北部のコアウイラ州に対し、人工妊娠中絶を犯罪として罰する行為を違憲とする判決を全会一致で下しました。
メキシコでは、これまで州レベルで中絶を非犯罪化する動きが相次いでいましたが、大部分の地域では人工中絶を制限する厳しい法制が敷かれており、貧困層を中心に何百人もの女性が各地で有罪判決を受け、収監されていました。
今回の違憲判決により、同州では中絶を受けた女性が逮捕・起訴されることはなくなりました。ルイス・マリア・アグイラル(Luis María Aguilar)判事は判決について、「女性の権利における歴史的な一歩」だと述べました。
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メキシコ及びラテンアメリカの中絶の状況
合衆国であるメキシコでは、州ごとに法律が定められています。首都のメキシコシティ、オアハカ州、ベラクルス州、イダルゴ州の4州では妊娠12週目までの中絶が合法であるものの、その他28州において中絶が認められていたのは、レイプ被害者のみでした。
メキシコをはじめ、中絶を基本的に認めないカトリック教徒が多いラテンアメリカでは、中絶に対し保守的な国が多いです。2021年の統計によると、ラテンアメリカには母体に生命の危機がある場合や健康に問題がある場合においてのみ中絶が認められている国々(下図:赤・オレンジ)が多いのが分かります。ラテンアメリカにおいて中絶の自由な選択が認められている国はキューバ、ガイアナ、プエルトリコ、ウルグアイ、アルゼンチンのみです。
赤=中絶が禁止されている箇所
橙=健康に関わる中絶の場合、許可されている箇所
緑=中絶が制限なく許可されている箇所
参照
今後の見通し
今回、コアウイラ州の州法に違憲判決が下されたことにより、メキシコ全土で中絶の非犯罪化が進む可能性があります。BBCメキシコ・中南米特派員のウィル・グラント(Will Grant)記者によると、メキシコでは州法をめぐる最高裁の判決は他州にも適用されるといいます。そのため今回の判決は事実上、各州に中絶をめぐる新しい方針を示したといえます。また、これまで中絶を行い禁錮刑となった女性も釈放される可能性があるといいます。さらにコアウイラ州は、先に妊娠6週目以降の中絶を禁じたアメリカ、テキサス州と国境を接しているため、同州の女性に合法的な中絶を行う受け皿になるとの指摘もあります。
今回の違憲判決や、2020年のアルゼンチンにおける中絶の合法化など、ラテンアメリカ全体で少しずつ女性の権利保護の動きが進んでいます。女性の権利保護に向け、今後さらに中絶に対する規制の緩和が進んでいくことが期待できるのではないでしょうか。
参照