麻薬王の邸宅が景品に…!
9月15日、メキシコの麻薬王「エル・チャポ(El Chapo)」ことホアキン・グスマン(Joaquin Guzman)受刑者の邸宅が政府による特別抽選会の景品として出品されました。メキシコでは押収資産がオークションや販売、抽選に出されることはしばしばあります。メキシコ北西部シナロア州の州都クリアカンにある彼の邸宅は、全国宝くじの景品として出品された20件の押収資産のうちの一つで、推定価格は18万4,000ドル(約2,000万円)に上るとされています。尚、当選者の身元は明らかにされていません。
メキシコ国内最大の犯罪組織であるとされる「シナロア・カルテル」の元最高幹部で、現在アメリカの刑務所で終身刑に服しているホアキン・グズマン受刑者は2014年、メキシコ海軍により逮捕されそうになったところを、この家の地下排水路を通って逃走しました。しかしその後、6日間の逃走の末、再度拘束されました。2015年7月には、警備レベルがメキシコ国内で最も高いと言われているアルティプラノ刑務所から、トンネルを使い脱獄しました。しかしその約半年後の2016年1月に再逮捕され、翌年アメリカに送還されました。
今回の抽選会には、他にも「フアレス・カルテル」の指導者アマド・カリージョ・フエンテス(Amado Carrillo Fuentes)が、メキシコシティに所有していた約380ドル(約4億1600万円)相当の豪邸も出品されました。中南米の大物麻薬密売人の1人とされ、「空の支配人」の名でも知られていた彼は、1997年、同市での整形手術中に死亡しました。
押収物件の管理担当者は、抽選の目的について「高額の維持費がかかる厄介な物件」を「社会に目に見える形で利益をもたらすもの」に変えることだと説明しました。
参照
麻薬カルテルの現在
現在メキシコでは少なくとも16の麻薬組織が存在していると言われています。メキシコ治安当局の報告によると、シナロア・カルテル(Cártel de Sinaloa)とハリスコ新世代カルテル(Cártel de Jalisco Nueva Generación:CJNG)の2つが、現在メキシコ国内で最も勢力を誇るカルテルとなっています。
「エル・チャポ」ことホアキン・グスマン受刑者の率いたシナロア・カルテルは、彼の逮捕後も存続を続け、ソノラ州、シナロア州、バハカリフォルニア州、バハカリフォルニアスル州、ドゥランゴ州、コアウイラ州で主な活動を行っています。
ハリスコ新時代カルテル(CJNG)は主にハリスコ州、ナヤリト州、コリマ州、ミチョアカン州、グアナファト州、メキシコ州、ゲレロ州、ベラクルス州で活動しています。CJNGはフェンタニルなどの合成麻薬を中心に密売を行っており、その原料の取引が行われているコリマ州やミチョアカン州の港周辺では、特に激しい抗争が行われています。また、近年CJNGはサカテカス州にも進出を始め、元々そこを支配していたシナロア・カルテルとの抗争が勃発しています。
今後の行方
アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(Andréz Manuel López Obrador)大統領は、2021年7月「国が統治可能であり、在任中に新しい麻薬組織が創設されていない」と強調しました。しかし現在、規模の大小様々な麻薬組織が乱立しているメキシコ。2006年に政府が麻薬密売との闘いに軍を投入して以来、30万人以上が殺害されており、その大半は犯罪組織に殺害されたとみられています。政府統計によると、必ずしも麻薬組織が関係しているかは分かりませんが、行方不明者数は2006年から全国で約8万2500人に上っています。今のところ、近い将来にカルテルが完全消滅する日が来るとは言い難いのではないでしょうか。
しかしその一方で、危険な地域には近づかない、夜中は安易に出歩かないなど細心の注意を払っていれば一般人が事件に巻き込まれることはほとんどありません。徹底した対策を怠らず、安全に行動しましょう。今後も、メキシコの治安情報や驚きのニュースなど、様々な情報を発信していきますので、是非ご注目ください!
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参照【メキシコ・大麻】嗜好用のマリファナ使用、最高裁違憲判断【治安情報】気になるハリスコ州グアダラハラの治安