クリスマス前、毎年12月12日はメキシコで最も愛されている”褐色の聖母”「グアダルーペ」の日です。今回はメキシコ全土で祝福されるこの特別な日についてご紹介します。
メキシコにお住まいの方やメキシコを訪れた方は一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
メキシコカトリックの象徴でもある聖母グアダルーペは”Nuestra Señora de Guadalupe” 「私達の聖母グアダルーペ」とも呼ばれ、メキシコ人が敬愛する聖母です。
聖母マリアとは違う?
グアダルーペはイエス・キリストの母、聖母マリアのことを指します。ただ欧米で見られる聖母マリアは栗色の髪と白い肌ですが、グアダルーペは黒髪で、肌の色は褐色という点で見た目が異なります。これはグアダルーペがメキシコの原住民インディヘナの聖母として現れたとされているからで、カトリック教会が先住民にキリスト教を受け入れやすくするために、メキシコ古来の宗教がキリスト教と共存することをある程度許容したことに由来するといわれています。 そのため、この「褐色の肌の聖母」はメキシコのあらゆる階層の人々の信仰を集めていき、グアダルーペへの信仰はメキシコだけでなくラテンアメリカ全土へと広がっていきました。
グアダルーペの出現
バチカンの文書によると、聖母グアダルーペは1531年にメキシコシティにあるテペヤック(Tepeyac)の丘で病気の叔父を救う為に奔走する先住民インディヘナの青年ファン・ディエゴ(Juan Diego)の前に突如現れました。
聖母は、ディエゴに教会の司教のもとへいき、テペヤックの丘の上に大聖堂を建設する願いを伝えるよう求めましたが、ディエゴは話しかけてくる聖母をふりきって走り去ろうとしました。
すると聖母は彼を制止し、「叔父の病気は既に回復しているから安心しなさい」と告げたそうです。
ディエゴは実際に叔父の回復という奇跡を目にし、その事実を司教に伝えるよう聖母から告げられます。聖母はディエゴに「私はこの地を守る聖母です。グアダルーペと呼びなさい。」と伝えディエゴにバラの花を持っていくよう指示しました。
ディエゴは言われたとおり、バラの花をマントに包み、教会へ運びました。司教にバラの花を届けた際、真冬にばらの花が咲くという不思議だけでなく、そのバラはスペインにしかない種類のバラで、更にバラを包んだマントの内側には彼が出会ったのと同じ褐色の顔色、黒い髪の聖母マリアの姿がうつされていました。それらの奇跡を目の当たりにした司教は聖母の存在を信じ、大聖堂の建設を認めました。
グアダルーペ寺院
ディエゴが聖母を目撃したメキシコ市近郊のテペヤックの丘には巨大なグアダルーペ寺院( Basílica de Nuestra Señora de Guadalupe)が建てられています。
毎年12月12日にはメキシコ人が敬愛して止まないグアダルーペが掲げられるこの寺院に、何千人ものカトリック教区民と巡礼者が信念に満ちて教会に到着し、神の母に恩恵を求めます。
寺院の外では、人々の巡礼が止まらず、音楽、食べ物や地域の軽食が並ぶ何百もの屋台、そして多くの人々の喜びが、この日を家族の宗教的な集まりとして特別なものにしています。歌と踊りで祝福するところがメキシコ人やラテンアメリカの人々らしいですよね!
グアダルーペの奇跡
グアダルーペについては数々の奇跡が語られていますが、そのいくつかを紹介します。
・エピデミックの停止。 1554年にひどい感染症がメキシコを襲い、1000人以上が死亡したと言われています。グアダルーペ寺院の聖母へ多くの嘆願が寄せられ、流行は完全に消えるまで衰退し始めました。
・グアダルーペの聖母像は長い年月に渡り聖堂に掲げられていますが、全く色褪せません。
・1785年に清掃員が額縁の汚れを落とす際、誤って硝酸をかけてしまったそうですが、マントの部分は無事で損傷はありませんでした。
・1921年には教会の強い影響力を弱体化させる目的で、メキシコ大統領府の職員ルシアーノ・ペレス・カルビオが聖母像の真下で爆弾を爆発させた事件がありましたが、その時は祭壇は破壊されてしまいましたが、なんと聖母像は無傷であったといいます。
グアダルーペにはこの他にも沢山の奇跡があるそうで、どれも真実として語り継がれ、いまも多くの人が奇跡が起こると信じています。メキシコ人の中にはカトリック教会やキリスト教について賛否両論ありますが、筆者はこのグアダルーペについて否定的なことを言う人に出会ったことがありません!それほど敬愛されている聖母グアダルーペをお祝いする日が楽しみですね!
グアダルーペの祭りとは?
11月の最終週から、12月12日までは、メキシコ全土で大規模にグアダルーペの出現が祝われます。
この日、500万以上の人々がメキシコシティ近くのグアダルーペの聖母大聖堂に行きますが、各地にあるグアダルーペ寺院にも沢山の人が訪れ、12月12日には1年に一度、この日だけ先住民インディヘナの仮装をした子供達の姿も見ことができます。
2020年はパンデミックの為に縮小されて祝われたグアダルーペの日ですが、今年はまた違った雰囲気で祝われることになるでしょう。皆様も是非お近くのグアダルーペ寺院を訪れてみてはいかがですか? メキシコならではの明るく楽しい祝福の日を経験できる機会をお見逃しなく!
まとめ
いかがでしたか?クリスマスのこの時期、筆者は一年のうちで一番好きです!家族や仲間をとても大切にするメキシコは街中が愛に満ち溢れた雰囲気になります。イエス・キリストの誕生日であるクリスマスの直前に、その母である聖母グアダルーペの日が祝われるのもどこかメキシコらしくとても温かな気持ちになりますね!
遠く離れた家族と暮らす私達をメキシコ人達は温かくフィエスタに誘ってくれたり、お祭り騒ぎの中で寂しさを感じることがありません。それはどこか聖母グアダルーペがメキシコ人と同じように私達のことも守ってくれている気がします!
12月12日のグアダルーペの日が終わればいよいよクリスマス(Navidad)ですね、読者の皆様も素敵な年末をお過ごしください。