メキシコ リチウム国有化へ。EV、ハイブリッド車など電動車普及への政策と展望

環境問題への関心の高まりや、原油価格の高騰や円安によるガソリン代の値上げから日本でも電動車(電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車)の販売数は年々増加しています。 メキシコでは電動車の普及のためにどのような政策が実施され、どのくらい電動車が製造・販売されているのでしょうか。自動車産業が盛んなメキシコにおける電動車を取り巻く状況についてお届けします。

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メキシコにおける大気汚染と電動車

メキシコ、特にメキシコシティでは大気汚染が深刻な社会問題となっています。その原因の一つは自動車による排気です。

・経済成長による都市の拡大から自動車移動距離が伸び、渋滞も頻発

・登録車両の半分が1990年以前に製造されたもので、未だ低排気性能の車が多く使われている(低排気性能の車から排出されるCO2が全自動車の排出量の68%を占めている。2014年のデータ)

このようにメキシコの大気汚染と自動車は深く関わっており、CO2を多く排出するガソリン車から電動車への移行、普及が急がれています。

※「電動車」とは電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイグリッド車(PHV)等を含む、電気を動力としバッテリーに蓄えた電気エネルギーを動力にした自動車のことを指します。

メキシコにおけるEV移行への政策

2022年現在メキシコで電動車の販売を促進するためにいくつかの政策が行われています。

・新車の電気自動車の関税を撤廃

2024年9月30日までの期限付きですが、電気自動車輸入の際の一般関税率を0%にしました。フォードが既にメキシコ国内で電気自動車の製造を開始、ゼネラルモーターズが販売開始に向けての設備投資をしていることから、国内生産数が増えるまでの2024年という期限が付いています。

・新車税(ISAN)の免除と自動車所有税(Tenensia)の減税

新車を購入する際、通常新車の販売価格に応じて2〜17%が課税される新車税が免除され、車を所有する人は、毎年払わなければならない自動車所有税も減税(メキシコシティでは免税)されます。

・車両検査(Verificaion vehicular)の免除

排気ガスを調べる車両検査が原則検査対象外になります。ガソリン車の場合、排ガス評価と車の年式により半年、1年、2年に1回お金を払って検査しなければなりません。

・充電スタンドの設置への優遇

電気自動車の充電スタンドを設置した場合、その投資額の30%が当該年度の法人所得税から税額控除されます。

・走行規制の対象にならない

大気汚染対策のためにメキシコシティで実施されている、ナンバープレートの末尾の数字によって市内を走行できない曜日を定める制度”Hoy NO Circula”。電動車はこの制度の対象から外れるため、規制に関わらず毎日走行することができます。

市場の変化

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メキシコでの電動車販売数は年々増加しており、2017年に10,000台強だった販売台数は2021年には約47,000台となりました。その内訳はハイブリッド車42,447台、プラグインハイブリッド車3,492台、電気自動車1,140台でした。

自動車の国内総販売数に対して電動車の割合も0.7%(2017年)から4.6%(2021年)と増加しています。

出典 - https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2022/b3ac6b25782b084d.html

ハイブリッド車の売上が大半を占めており、2020年の販売数トップがトヨタ プリウス、2位がトヨタ プリウスCでした。

また2021年の電動車販売を州ごとに見るとメキシコシティが23.5%、メキシコ州が13.4%と大気汚染問題のある首都圏での需要が高いことがわかります。

しかし電気自動車のみの販売台数でみると2021年にようやく1,000台を突破しましたが、日本での販売台数の21,139台と比べるとかなりの差があります。ハイブリッド車も日本では936,793台販売され、これは自動車総販売数の43%に当たるため(メキシコは4.18%)、メキシコでは全ての電動車の普及がまだまだ遅れています。

今後の展望

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メキシコ自動車工業会(AMIA)はメキシコの電動車普及のための今後の施策や展望について下記の通り発表しました。

・新技術の利用を促進・管理するための適切な法的枠組みを提供できる包括的な公共政策を実施する

・ ハイブリッド車や電気自動車の潜在的な消費者を税制および非課税で優遇して支援する

・ 充電スタンド網の整備を推進する

・ 競争力のある価格での再生可能エネルギーの供給は、電動車の新たな投資プロジェクトを誘致するために不可欠である 

電気自動車の生産とリチウム

メキシコではすでに電気自動車の生産が始まっています。

フォードがメキシコ州で2020年から電気自動車の生産を行っている他、2023年からはゼネラルモーターズがコアウイラ州で電気自動車の生産を開始する予定です。

また電気自動車の部品もメキシコで生産しています。電気自動車専門メーカーのテスラは部品の20%をメキシコで生産しアメリカで組み立てをしています。

しかし上記のようにメキシコ国内での電気自動車販売は極わずかで、ほとんどはアメリカへの輸出向けとなっています。

また今後の電動車需要の拡大にむけてバッテリーとして使われるリチウム資源をメキシコは国有化するために鉱業法改正しました。

リチウムは「新しい石油」「白い金」と言われ、これから電動車が普及すると需要が高まる鉱物と言われています。

メキシコには世界最大規模のリチウムが埋蔵されていることがわかり、その価格は近年高騰しています。今までは外国のリチウム開発企業に開発権が譲渡されていましたが、それをすべて国有化し、今後はメキシコが独自に開発していく予定です。

しかし今まで外国企業が開発、採掘に向けて準備をすすめていたものを、まだノウハウのないメキシコが本当に採掘、加工、生産する技術を開発できるのか、どのくらいの年数がかかるのか、それに伴う投資への疑問が持たれています。

参考サイト
出典 https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2022/b3ac6b25782b084d.html
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出典 https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/09/f0fcfd4df309e04e.html
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出典 https://www.amia.com.mx/2022/03/04/reporte-de-venta-de-vehiculos-hibridos-y-electricos-a-diciembre-2021/
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出典 https://amia.com.mx/2022/03/11/informe-sobre-el-panorama-de-la-transicion-a-la-electromovilidad-en-mexico/
参考サイト
出典 https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/11/634f39255f90013c.html

まとめ

今回はメキシコでの電動車についてお伝えしました。大気汚染の問題が深刻なメキシコでは電動車の普及が急がれています。販売台数は年々増えているものの、2022年現在まだまだ普及しているとは言い難いのが現状です。

政府は普及のために様々な政策を出してはいますが、充電スタンド網の充実やインフラ整備など行政の事業も今後更に必要になります。

世界中でこれから電動車の需要が増えると予想されるため、メキシコでの電動車生産・リチウム開発はこれからのメキシコの経済の大きな要になるのではないでしょうか?

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