中南米ってどこよ論争
皆さんこんにちは、amiga編集部のこぐちくんです。
中南米政治を勉強する自分にとって、とっても気になってしまう「会話」があります。
~とある大学4年生の会話~
A子「卒業旅行どこに行こうか~」
B男「そうだねー、折角だし、学生のうちにしか行けない場所に行きたいよね~」
A子「そうねー!どうせなら私、中南米とか行ってみたいなー!」
B男「分かるわ~、メキシコとかチョー良くない?」
A子「メキシコあり!!絶対インスタ映えするし!!」
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皆さん、上の会話の気になるポイントが分かりましたか?
A子が一生の思い出となる卒業旅行の行き先を、「インスタ映え」という理由で選んでいる事ではありません。
A子もB男もメキシコを「中南米」だと思っていることです!しかし正確に言うと、実はこれは間違いなのです。今回はこの「中南米ってどこよ論争」について徹底解説致します。
メキシコは中南米じゃなくて北米!
まずアメリカ大陸を地理的に分けた時、「北米(North America)」「中米(Central America)」「南米(South America)」の3箇所に分けることができます。南米は皆さんもイメージできるのではないでしょうか?いわゆるブラジルやアルゼンチンなどの国がある大陸です(最北端がベネズエラ、最南端がアルゼンチンです)。
しかし、問題は中米です!中央アメリカとも呼ばれるこの地域は、実は地理学上は北がグアテマラ、南がパナマまでの小さな国々の一帯のみの名称なのです。
(出典:https://www.thoughtco.com/central-america-and-caribbean-by-area-1435133)
つまり、メキシコは中米でも中央アメリカにも入らないため、実は「北米・北アメリカ」の国と学術的には考えられているのです。
その証拠に…
例えば何かと話題になりがちな、NAFTA( 北米自由貿易協定)に参加しているのは米国、カナダ、そして「メキシコ」ですし・・・。その他にも、メキシコも管轄内の外務省中南米局の「中米カリブ課」は、英語表記がきちんと「Mexico, Central America and Caribbean Division」と、メキシコと中央アメリカを分けて表記しています。このように意外と細か~い使い分けがきちんとされているのです。
「ラテンアメリカってどこよ論争」勃発
~とある大学4年生の会話~
A子「そっか!メキシコは中南米じゃなくて北米なんだね!」
B男「まあそんな細かいこと、どっちでも良いけどねー(笑)」
A子「で、話を戻すとやっぱり卒業旅行はどうせならメキシコみたいにラテンの国がよくない?」
B男「うんうん、ボリビアでウユニ塩湖見たり、ジャマイカでレゲーとか聞きたい!」
A子「やば!!ウユニ塩湖見たら絶対人生観絶対変わるし!!」
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おっと…どうやらA子とB男がまた気になる発言をしているのですが、皆さんこの会話の気になるポイントにお気づきになりましたか?A子が塩の塊を見る事で変わるほど、薄っぺらい人生観を持っている事ではありません。B男がジャマイカを“ラテンアメリカ”と勘違いしていることです!しかし、とーっても細かい意味では、これは実は間違っています!
「えっ?ジャマイカってラテンアメリカの一部じゃないの?」と思ったみなさん、そんなみなさんのためにも、続いて「ラテンアメリカってどこよ論争」について解説致します。
メキシコはラテンアメリカ、でもジャマイカは違う!?
さて、中南米と同じくらいよく聞くこの地域の呼び名が、「ラテンアメリカ」です。英語で言うところのLatin Americaですが、この名称が広まる1850年以前、元々この地域はイスパノアメリカ (Hispano-America)ですとか、イベロアメリカ(Ibero-America)と主に呼ばれていました。イスパノアメリカは「スペイン語圏のアメリカ」を意味し、イベロアメリカは「イベリア半島(スペイン・ポルトガル)のアメリカ」ということを意味します。後者は特にブラジルを含めるために作られた言葉のようです。
しかし、1850年以降フランスのナポレオン三世(あの超有名なナポレオン一世ではありませんよ)が積極的にラテンアメリカという言葉を広め、この言葉がよく使われるようになります。(もの凄ーく細かい話をすると、ラテンアメリカとい言葉自体を作った人はまた違う人です。)フランス人の彼がイスパノアメリカではなく、ラテンアメリカという言葉にこだわった理由は主に2つありました。
①中南米地域で影響を強めていたスペインだけでなく、フランスも同じラテン人として、この地域を支配しているよーということをアピールするため。
②主に北米で強い影響を持っていた、アングロサクソン(イギリス人系の総称)の土地ではなく、俺たち「ラテン語を語源とする人たちの地域だよ!」とアピールするため。
この2つの理由から、フランス人のナポレオン三世は「ラテンアメリカ」という言葉を積極的に使い、次第にそれが「イスパノアメリカ」よりも浸透していったのです。つまり、英語(ラテン語がルーツでない言語)を公用語とするジャマイカをラテンアメリカと呼ぶことは間違っているのです!
最後に
と、ここまで偉そうに書いてしまいましたが、あくまでこれは「中南米」、「ラテンアメリカ」という言葉の解釈の一例に過ぎません(狭義の中南米・ラテンアメリカにこだわっています)。例えば言語や文化を重視する国連は、メキシコも「中米」と定義しています。
(参考:https://unstats.un.org/unsd/methodology/m49/)
大事なことは、つまり卒業旅行は好きなところに行くべきだということです。
他の解釈を持っていらっしゃる方、是非facebookのコメント欄でお知らせください!