メキシコには数多くのピラミッドが存在します。
どのピラミッドに行っても、それぞれ似ているようで全体の形やディティールが異なり、見飽きることがありません。かっこいいピラミッド、ユーモラスなピラミッドなど、それぞれ建造した人々の感性を見ているようで、遺跡巡りを楽しませてくれます。
古代遺跡だけではなく、現代の街中でも傾斜を利用した建物の建て方や、鮮やかな色彩の建築群に魅せられます。メキシコの建築といえば現在に残るスペインのコロニアル建築が注目されがちですが、グアナフアトの色とりどりの家や、ケレタロやサンミゲルアジェンデで見られる家と路地の景色が、メキシコの魅力を引き立てています。
今回は古代のピラミッドとあわせて現代のメキシコの素敵な建築をご紹介します。
ピラミッドの形
エジプトとメキシコのピラミッドの大きく違う点は、エジプトのピラミッドは王の墳墓であるのに対して、メソアメリカのピラミッドは神殿であることです(パレンケように神殿と墳墓を兼ねているものもあります)。メキシコのピラミッドは土を高く盛り上げて造り、外側を石で覆います。四角錐の上に神殿があり、周囲には神殿に登るための階段があります。おおむね共通した形式で造られているのですが、ひと口にマヤのピラミッドといってもその形は大きく異なります。例えばマヤの代表的な遺跡は、「チェチェン・イッツァ」、「ティカル」「ウシュマル」などが挙げられますが、それぞれその形や装飾には異なる特徴が見られます。
チチェンイッツァのようにほとんどのピラミッドは正四角錐の形をしています。チチェンイッツァは4面に階段が設けられ、階段の数が一面91段、四面で364段、神殿への1段を足すと365段と1年の日数になります。また春分と秋分の日にはピラミッドの傾斜の影が蛇に見えることでとても有名ですよね。
一方、「魔法使いのピラミッド」の名で有名な「ウシュマル」は、同じマヤの建築物でもプウク(Puuc)と呼ばれる建築様式が用いられており、ご覧の通りチチェンイッツァとは形が大きく異なります。
ピラミッドの下部の基盤の上にモザイク状や幾何学模様が施されているのが特徴です。
ウシュマルの建築美は近代建築の三代巨匠の一人、フランク・ロイド・ライトに影響を与え、日本の帝国ホテルのデザインの参考にもされたと言われています。
またアステカの遺跡にも面白い形のものがあります。トルーカにあるカリシュトラワカ(Calixtlahuaca)という遺跡は、カタツムリのようなユニークな円形をしています。
メキシコの現代建築家
メキシコでは優れた現代建築も多く見ることができます。
その中からオススメの建築家5選をご紹介します。名前は知らなくても建物は見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
1.ルイス・バラガン(Luis Barragan)
彼はおそらく海外で一番著名なメキシコ人の建築家でしょう。以前amigaでもご紹介しました。
【amiga turista】光の魔術師、ルイス・バラガンの世界へようこそ。グアダラハラ出身で、1980年には建築家にとって最高のPritzker賞を受賞しました。彼の設計した自宅「ルイス・バラガン邸」は世界遺産に指定されています。彼の建築はメキシコシティで多く見ることができますが、予約が必要なところが多いため、ツアーに参加することをお勧めします。
2.フェルナンド・ロメロ(Fernando Romero)
まだ若い建築家ですが、数々の国際的な賞を獲得しています。メキシコの大富豪カルロス・スリム・ヘル(Carlos Slim Helu)のコレクションを展覧するソウルマヤ美術館ムセオ・ソウマヤ(Museo Soumaya)は、16,000個もの六角形のタイルを外壁に使用し、曲線を用いた近未来的な美術館で、その外観だけでも見応えがあります。
3.アルベルト・カラチ(Alberto Kalach)
アルベルト・カラチも国際的に活躍している建築家です。メキシコシティのバスコンセロス図書館は、SF映画のような斬新な設計で話題を呼んでいます。
4.ペドロ・ラミレス・バスケス(Pedro Ramírez Vázquez)
ペドロ・ラミレス・バスケスはメキシコを代表する建築家です。代表作はメキシコシティの国立人類学博物館(Museo Nacional de Antropología)、グアダルーペの新しい聖堂(Santa María Guadalupe)などがあります。
5.テオドロ・ゴンサレス・デ・レオン(Teodoro Gonzalez de Leon)
代表作にUNAM の大学付属現代アート美術館(Museo Universitario de Arte Contemporáneo)や、チャプルテペック公園のルフィーノ・タマヨ美術館(Museo Tamayo)などがあります。
アイザック・ブロイド(Isaac Broid)
最後に筆者いち押しのアイザック・ブロイド(Isaac Broid)という建築家をご紹介します。
彼はテオパンソルコ(Teopanzolco)の複合施設の建築で海外の著名な建築の賞を複数受賞しました。
Teopanzolco(ナワトル語で「古き神殿の場所」)とは、メキシコシティの南、クエルナバカの街中にある遺跡のことです。この古代遺跡を保存する複合施設がコンペティションで募集され、選ばれた建物が昨年完成しました。街の少し高台にあり、ピラミッドと、クエルナバカの街の両方が見渡せる美しい文化施設です。
木をふんだんに使った展望台は、三角形の形で建物の屋根になっています。街が一望でき、反対側はピラミッドを上から見下ろすことができるので遺跡全体の形がよくわかります。
建物の1階は天井がとても高く、入り口はルーバー(建築様式のひとつ)になっており、内部からもピラミッドを見ることができます。
この建物の地下は劇場になっており演劇やコンサートに使われています。残念ながらピラミッドには昨年の地震の影響で今は立ち入ることができません。
建物を色々な角度から撮った映像が見られる下記のHPもぜひご覧下さい。
El Centro Cultural Teopanzolco施設情報:
【El Centro Cultural Teopanzolco】
住所:Río Balsas 22, Vista Hermosa, 62290 Cuernavaca, Mor
開館時間:11:00〜19:00、基本的に無休
電話:777-202-0111, 777-202-0112
まとめ
いかがでしたか?メキシコの人たちには古代マヤ時代から現代まで、建築への美意識が流れています。これからもメキシコ各地でお気に入りの建物を巡りたいと思います。皆さんもお気に入りの建造物、建築家を見つけてみて下さい!