メキシコの日系企業とその進出先

実は400年以上前から繋がりがあるメキシコと日本。そんな二国は今、ビジネス面でも重要なパートナーになっています。今回は、メキシコと日本の関係とメキシコに進出している日系企業についてまとめました。

出典 - http://www.dadaroom.com/blog/las-mejores-ciudades-para-vivir-en-mexico-si-eres-extranjero/

メキシコと日本の関係

出典 - https://www.fundacionjapon.es/jp/Actividades/Estudios-Japoneses/evento/66/2017-06-28

メキシコと日本が実は400年以上前から繋がっていることをご存知ですか?江戸時代初期1609年、フィリピン諸島総督ロドリゴ・デ・ビベロ率いる一団が、当時スペイン領であったメキシコへの帰国途中に嵐に見舞われ千葉県御宿沖に座礁しました。嵐によりやむを得ず日本に立ち寄ることになったビベロ一行ですが、日本では村人や役人から温かく迎え入れられ、徳川家康にも謁見しました。そしてメキシコに向けて出港する際には20数名の日本人が同行し、彼らはメキシコを訪問した初めての日本人となりました。こうして不運の事故から日本とメキシコの交流が生まれたのです。

その後、鎖国などによって両国の友好関係が途切れた時期もありましたが、1888年には日墨修好通商航海条約が締結されました。これは日本がアジア以外の国と締結した初めての平等条約でした。このように日本から見ると、メキシコは世界の中でも非常に早い段階から平等な交流が実現した国なのです。

出典 - http://www.kantei.go.jp/jp//koizumiphoto/2003/10/16mexico.html

2004年にはメキシコにおいて、小泉首相(当時)とフォックス大統領(当時)の間で日米経済連携強化のための協定(EPA)が署名され、2005年に発行しました。メキシコと二国間の自由貿易協定を結んでいる国は、アジア諸国では日本だけです。両国の貿易額はEPA発効後大幅に増加し、2015年の貿易総額(輸出額と輸入額の合計)は2004年の倍にまで達しました。また、2014年には安倍首相が日本の首相として10年ぶりにメキシコを訪れ、エンリケ・ペニャ・ニエト大統領(当時)との日墨首脳会談が行われました。

日系企業のメキシコ進出状況

メキシコにおける日系企業は、年々増加傾向にあります。2017年の日系企業数の前年比率は近年経済が急成長していて日系企業の注目を浴びているカンボジアに次いでなんと世界第2位に、企業数としても2007年に384社であったのが2017年には1,182社となりました。メキシコにおける日系企業の業種とそのメキシコでの拠点について見ていきましょう!

メキシコ進出日系企業の業種

業種別に見ると、最も多いのが「製造業」です。そして「卸売業」「運輸・通信業」と続きます。細かく見ると、「自動車部分品・付属品製造業」「自動車駆動・操縦・制動装置製造業」などの自動車関連の製造業が全体の10%以上を占め、その後に事業持株会社を含む「投資業」、総合商社など「各種商品卸売業」と続いています。

上記のデータからもわかるように、メキシコへ進出している日系企業で最も多いのが自動車関連の企業です。メキシコは米国に近い上、太平洋側の港からアジアやオーストラリアなどに商品を輸出できるというその立地を活かして自動車製造業を発展させてきました。過去10年間で、230億ドルを超える投資がメキシコの自動車市場になされていることからも、その力の入れようが伺えます。そして2011年6月には、マツダがメキシコでの新規投資を発表したことにより日系の自動車メーカーや自動車部品製造業のメキシコ投資ブームに火がつきました。その後ホンダ、日産、トヨタによる追加投資も発表され、多数のサプライヤーがここ数年でメキシコに進出しています。

日系企業の進出場所

現在メキシコに1,000社以上進出している日系企業。その進出先はどこなのでしょうか。主な日系企業進出先地域を解説します!

1.メキシコシティ

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メキシコ最大の都市メキシコシティ。 首都であるため政治、行政、司法の機能が集中しているほか、経済・金融の中心地でもあることから、メキシコシティには日系企業を含め多くの外資系企業が拠点を置いています。メキシコシティにも工業団地はありますが小規模であるため、メキシコシティにはオフィスを構え、生産は他州で行う傾向が強いです。そのため、メキシコシティは第三次産業が約90%を占めます。

メキシコシティにメキシコ法人を構える代表的な日系企業には、金融・保険業ではメキシコみずほ銀行があります。卸売業ではメキシコ住友商事、伊藤忠メキシコ、天然ガス火力発電事業(三井物産・東京ガス・中部電力・東北電力の合同出資会社)、JXTGエネルギー(ENEOS)などが挙げられます。完成車メーカーではトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、いすゞなど。その他の製造業ではヤクルト、ダイキン工業、大正製薬など。運輸業では、西日本鉄道などの日系企業が進出しています。この他にも多くの日系企業がメキシコシティにオフィスを構えています。

2.バハカリフォルニア州

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1965年にメキシコの関税フリー制度であるマキドーラ制度が導入され、早くから外資の参入が進んでいるメキシコの北西部。その中でも米国カリフォルニア州に接するバハカリフォルニア州の州都メヒカリや、最大都市のティフアナには、特に多くの工業団地が集まっています。メキシコのテレビ・通信機器の輸出額は2017年には世界第5位につけ、特にバハカリフォルニア州は世界のテレビ生産の4強の1つとされ「テレビバレー」と呼ばれています。この地域の主な産業セクターは電子、自動車、航空であり、日系企業ではトヨタ自動車、住友電装、矢崎総業などが進出しています。

3.ヌエボレオン州

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メキシコ北東部に位置し、メキシコ第3の都市モンテレイを有するヌエボレオン州はその乾燥し非常に暑い気候から農業に適さず、昔から製造業を中心に発展してきました。モンテレイを含む周辺 8 都市は「グレーターモンテレイ」と総称されていて、これら 8 都市には多くの工業団地が集中しています。世界第3のセメント会社Cemex、メキシコ全土に展開するコンビニエンスストアoxxoを運営するラテンアメリカ最大の飲料会社FEMSA、メキシコ大手銀行Banorteなど、メキシコを代表する大企業がその本拠地を置いていることからもモンテレイの重要性がわかります。

さらに、バハカリフォルニア州同様米国に近いということから、マキラドーラ制度の恩恵を享受しようとする外資の進出も早い段階から盛んです。主な産業セクターは、金属機械、家電、自動車、IT、航空など。アイシン精機、デンソー、豊田合成、東海理化、安川電機、日本精機、日東電工、TOTO、住友電装、ブリヂストン、古河電気工業など多数の日系企業が進出しています。

4.バヒオ地区

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バヒオ(Bajio)とはスペイン語で盆地を意味し、メキシコ中部にあるメキシコ高原の盆地地域一帯がバヒオ地区と呼ばれます。アグアスカリエンテス州、ケレタロ州、グアナファト州、ハリスコ州などから成るこの地域は、ここ10年ほどでメキシコに進出している日系企業の9割以上の進出先となっています。バヒオ地区への進出は2011年に87社であったのが、今や632社と急増しています。この地区のそれぞれの州に日系企業が多く進出しているのでそれぞれ見ていきましょう!

アグアスカリエンテ州

面積はメキシコにある32の州・連邦区中29位、人口27位と規模がとても小さい州でありながら、州内には多くの工業団地が集積しています。1982年に日産がメキシコ国内第2の工場を稼働させて以来、メキシコの中では日系サプライヤーや物流企業などの進出が最も進んでいる州の一つになっています。日系企業による直接投資が州内の直接投資全体の半分以上であるなど、日系企業の存在が大きいため、州としても日系企業を積極的に誘致しています。日産の他にはヨロズや三井化学などがアグアスカリエンテスに進出しています。

グアナファト州

メキシコの人口の6割、国内市場の8割、貿易の7割、自動車生産7割を占める「ゴールデン・トライアングル」の中心に位置するグアナファト州。バヒオ地区の中でも、経済の中心地とされています。マツダ、ホンダ、トヨタ(建設中)などを始め多くの日系企業が進出しており、それらによる投資は2011年にアグアスカリエンテス州を抜き、メキシコ国内で首位になりました。開発中の工業団地数はメキシコで最も多く、今後も多くの日系企業の進出が期待されています。また日本企業や日本人の増加を受けて、2016年にはグアナファト州最大の都市レオン市にバヒオ地区全体を管轄する日本国総領事館が置かれました。

ケレタロ州

バヒオ地区の最も南に位置するこの州はメキシコシティから2時間ほどであり、メキシコシティから見るとバヒオ地区の入り口にあたるということで、バヒオ地区の中でも立地的な優位性が高い州です。主要産業は自動車産業に加えて、米国国境のバハカリフォルニア州やヌエボレオン州同様の航空空宇宙産業が挙げられます。ケレタロ州へ進出している日系企業の傾向としては、バヒオ地区他州と比べ非製造業の割合が高くなっています。

サンルイスポトシ州

バヒオ地区の北端に位置し、メキシコシティと米国を結ぶ物流の要所であるサンルイスポトシ州。鉱山を中心に発展してきたことから、他の州と比べると工業化が遅れています。サンルイスポトシ州の主な産業としては、自動車産業、工業、豊かな自然を活かした観光産業が挙げられます。外資系の製造業が数多く進出していて、日系企業に関しても製造業の比率が高く、それらはほぼ全て自動車関連となっています。州内にはいくつも工業団地が形成されており、主なものには旭硝子、日本通運、山善などの日系企業があります。

ハリスコ州

ハリスコ州の州都グアダラハラはメキシコ第2の都市で、多くのIT関連企業や電子機器受託製造サービス企業が集まっていて「メキシコのシリコンバレー」と呼ばれています。さらに、日本や韓国、中国など40か国と投資協定を結んでいるメキシコ屈指の大都市です。ハリスコ州はテキーラの生産地であり、その原料であるアガベをはじめ、ライムや牛乳などの生産高もメキシコ1位なんです。このように、最新技術産業だけでなく、農業や加工食品、家具、靴、繊維なども盛んな産業として挙げられます。ハリスコ州には、ホンダや旭硝子、アルファなどの自動車関連企業に加え、日本通運、ヤクルト、日本ハム、花王など幅広い日系企業が進出しています。

サカテカス州

サカテカス州はメキシコの中央部北に位置し、国内8番目に大きな州です。都会故に道路、空路、鉄道のインフラが整っています。かつてサカテカス市は鉱山の都市として栄えましたが、現在の主な産業は、農業、畜産、林業、観光業などが挙げられます。サカテカス州に進出している主な日系企業は、自動車関連では小出鋼管、村上開明堂、長倉製作所、タチエス、アーレスティなど。物流関連では鈴江コーポレーションなどが進出しています。

最後に

日本ではまだまだ認知度が低いですが、実は日系企業進出数で世界TOP15に入っているメキシコ。さらにその数は年々増加傾向にあります。そしてメキシコのGDPは2030年には世界TOP10入りし、2050年には日本のGDPを超すと言われています。今回はそんなメキシコに進出している日系企業についてまとめてみました。メキシコの成長には今後も目が離せません!

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