私は、2000年頃からメキシコの年金に関するコンサルティングを始めたが、日本に帰国して60歳を迎えた元駐在員の皆さんからの年金受け取りに関わるご相談は後を絶たない。近年メキシコでは、外国人の年金受給や年金積立金の引き出し手続のプロセスがより複雑化している。実際、メキシコ人であっても一個人では太刀打ちできない面倒な域に達しているので、ましてや、外国に住む元駐在員の皆さんには残念ながら不可能といっても過言ではない。
メキシコ社会保障法では、「公務員を省く労働者を雇用する全ての法人は、従業員(社長も含む)をメキシコ社会保険庁(IMSS)*1に登録・加入させ相応の社会保険料を支払う義務がある。」と定められている。
IMSSに加入し、保険料を納めることで、以下の社会保障を受給することができる。
① 労災、疾病、産休、死亡、後遺障害といった傷害・疾病・死亡に関わる治療費、葬儀費。
② 高齢による退職者の積立金(いわゆる年金)。
(A) 退職年金積立金。
(B) 老齢年金積立金。
③ 住宅基金積立金(INFONAVIT)*2。
それでは、今回の主題である②に焦点を当ててお話ししよう。メキシコは1992年以前、IMSS が確定給付型で年金給付を行っていた。しかし、この方法によるIMSSの財政破綻が原因で、受給者の年金受給額は微々たるものだった。その為、1992年に年金制度を全面的に見直し、SAR(退職金積立制度)を施行した。このSARは、アメリカの401k制度に見倣った制度である。ご存知のように、401K制度は確定拠出型なので、確定給付型とは違い、給付額は年金の運用実績によって変わる。更に、1997年に社会保障法が大幅に改正され、SAR施行の為にAFORE(年金管理会社)の設立を促し、労働者の一人ひとりがAFORE指定の民間金融機関に個人アカウントを作ることを義務付けた。
*1:IMSS (Instituto Mexicano del Seguro Social): 一般会社員が加入義務のある健康保険や社会保険を管理する機関。公務員が加入義務がある機関はIsssteというもので、その他自営業者等についてはSeguro Popularに加入することが可能(義務ではない)。尚、本サービスは低所得者層向けサービスとして知られており、一般会社員でもマネージャークラス以上の社員に関しては、高額医療保険(Seguro de gastos medicos mayores)に加入するのが一般的である。また保険料に対する会社側の負担割合は法的に決まっておらず、社内規約や交渉等によって決定しているのが現状である。
*2 : INFONAVIT : 住宅基金は正確には労働者住宅金庫(INFONAVIT)法に基づくもので、目的は企業の従業員に対して住宅購入の便宜を与える制度。基金は本来、住宅金庫が直接管理している。
ニュースレターを購読したい方はこちら著者:滝本 昇
■受賞
1993年 平成5年度経済協力貢献者賞受賞(通産大臣賞)
■略歴
1964年3月 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒業
1968年8月 メキシコ、イベロ・アメリカ大学労務管理学科卒業
1964年~ 日本ピグメント(株)輸出営業課
1968年~ メキシコ日産(株)文書秘書課長・取締役会会長管理補佐
1973年~ チャベロ・ヤマザキ会計事務所代表社員兼プロコンデサ社社長
1976年~ コンセルサ社長(以降、法律事務所に引き継ぐ)
1989年~ タキモト・コルティーナ・ファレル法律事務所代表社員
2016年~ 事業サポートストラテジー社代表
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発行元
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