【インタビュー】移民の少年少女に基礎教育を~鈴木萌~

メキシコシティの移民難民保護施設「カフェミン」で移民の少年少女に算数を教える等のボランティア活動を行っている、鈴木萌さん。(47期「日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画」の留学生。)教職、ホンジュラスでの青年海外協力隊(現JICA海外協力隊)時の活動経験、カフェミンでのボランティア活動に対する想いに迫りました!

教職、そしてホンジュラスへ

大学卒業後、東京都公立中学校の社会科教諭として勤務しました。教壇に立ち生徒に国際平和などを教える中で、途上国の現状を知りたいという気持ちが強くなっていきました。教職8年目に青年海外協力隊の現職の教員が応募できる制度を利用し、ホンジュラスに派遣されることになりました。ホンジュラスでは、約2年間(2015~2017年)「小学校教育」という職種で、国の教育プロジェクトの一環として、初等教育の改善に携わりました。

ホンジュラスには、中学生や高校生の年齢でも足し算や引き算ができない少年少女が多くいました。ホンジュラスの農村部の学校では、小学生の先生でさえ九九が言えないという現状。教師生徒関係なく飲み食いしながらの授業は日常でした。また教科書は生徒の人数分足りていないので、前年度の教科書を使いまわしていました。新年度はみんなで教科書に書かれた解答や落書きを消すところから始まりました。そのため授業補助だけでなく、教師への研修を実施して教師の質の向上や授業規律の定着等を目指しました。またホンジュラスの同じ教育系隊員で話し合いを繰り返しながら副教材を作成したり、学力調査を実施したりしました。

高まる中米移民問題への関心と想い

帰国後は2年間、東京都で中学校の教員に戻りました。その間も中米の情報を追っていました。2018年10月頃にドナルド・トランプ現アメリカ合衆国大統領の中間選挙のキャンペーンに関連して、中米からの移民キャラバン問題が頻繁に報じられました。それをニュースで見ていて衝撃を受けました。基礎教育も受けられないまま移民としてメキシコに流れてきて、アメリカとの国境を封鎖されて押し戻され、親子離れ離れになりメキシコに滞留している人々が沢山いるということに心が痛みました。そこで何か私にできることはないかと考える様になりました。「もう一度中米の子どもたちの役に立ちたい」という想いが抑えきれなくなり、勤続11年の教職を思い切って退職しました。

来墨とカフェミンとの出会い

外務省が選考する「日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画」という制度を利用し、2019年8月末に来墨しました。現地で移民問題の現状を知るとともに、メキシコの大学や大学院で中米の移民問題などの専門的な授業を聴講し、理論的に学んでいます。

(写真:メキシコ国立自治大学)

独立記念日の週にメキシコ国立自治大学(UNAM)の外国人のためのスペイン語学校(CEPE)でティアンギス(Tianguis)という青空市場が開かれます。そこでエルサルバドルの民芸品を売っているエルサルバドル人の方と出会いました。私がホンジュラスで派遣されていた町がエルサルバドルとの国境から近かったこともあり、話が盛り上がりました。その方にメキシコシティにある移民難民保護施設「カフェミン」を紹介して頂きました。カフェミンの担当者に移民問題の実情を聞く中で、ボランティアとして協力したい旨を伝えました。カフェミン側も快く受け入れてくださり、ボランティア活動を行うことになりました。

【密着取材】移民難民保護施設「カフェミン」~移民女性と少年少女の自立に挑む~

移民の少年少女に基礎教育を

カフェミンでは、最初は折り紙やあやとり遊びをしていましたが、現在は子どもたちに基本的な算数を教える活動をしています。ホンジュラスでの協力隊の活動で算数を教えていたので、そのときのノウハウや教材を活用しています。子どもたち(年齢12~17歳)一人ひとりのレベルに合わせて計算プリントを配り、個別指導の様なスタイルで行っています。

(写真:学習風景。)

カフェミンにいる子どもたちの場合、日本の学校の様な一斉授業形式だと「やらされている」感じがして子どもたちが受け付けないし、学習レベルもばらばらなので難しいと考えました。子どもたちは「メキシコに住むかもしれない」、「親と連絡が取れて再びアメリカに向かうかもしれない」、「祖国に強制送還されるかもしれない」という状況にあります。その中で集中して授業を受けることは厳しいでしょう。義務にしたらやる気が無くなってしまうので、「何か面白そうなことをやってるな!」という感覚でフランクに参加できる様な形で行っています。

ボランティア活動を通して願うこと

16歳の全く九九が言えなかった女の子が六の段まで言えるようになりました。一方10歳で九九を全ていうことができる子もいる。(中には優秀だけど、移民せざるを得なかった境遇の子もいるのです。)その16歳の子に「他の人と自分を比べる必要はないんだよ」、「自信を持っていいんだよ」と伝えると「そうだよね!私こないだまで全く九九を言えなかったし✖ばっかりだったけど、今はこんなにできるんだよ!」と自ら言ってくれました。それは私にとって、とても嬉しいことでした。現在その女の子は隣接のカフェテリアで働いています。

(写真:使用しているプリント。計算ドリルの様な形式で行っている。)

算数を通して、何十人のうち一人でも、「勉強ってやれば分かるようになるんだ」という経験を持っていれば、将来何かのきっかけでもっと勉強しようと思う人も出てくるかもしれない。彼らがこの先どの様な人生を送るか分からないですが、少なくとも算数はできた方がいいはずです。基本的な算数を学習していれば、日常生活で買い物する時にお釣りを誤魔化されることもない。商売を始めることもできるかもしれない。私はホンジュラスでの経験があったので算数を教えることから始めましたが、算数に限らず、学習することは「面白い!」、「こんなにできるようになるんだ!」という気持ちを大事にし続ければ、その子が将来何かに挑戦する際に一歩踏み出すことが出来ると思っています。

追記

(他の留学生の協力も得てグループで活動していましたが、4月からカフェミンは新型コロナウイルスの影響でボランティア活動が停止されてしまいました。今度オンラインでの活動を実践予定だったりと、新たな方法を模索中です。)

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