非人道的な環境にあるラテンアメリカの子供たち
こんなニュースを見たことがあるのではないでしょうか。
「複数人からなるグループと移動していたにも関わらず、朝目覚めたら置き去りにされ、メキシコとアメリカの国境付近でさまよう少年」
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「密入国業者が高さ4mの壁の上からエクアドル出身の幼児、3歳と5歳の姉妹をアメリカ側に落とした衝撃映像」
これらのニュースは頻繁に国境で起こっている残酷な事実なのをご存じでしょうか。
メキシコやホンジュラスの闇を描いた映画「闇の列車 光の旅」のような出来事がメキシコとアメリカ間の国境で正に今起こっています。アメリカへの密入国は昔からある問題ですが、現在新型コロナウィルスの問題やホンジュラスやニカラグアを襲った2020年11月のハリケーン被害、トランプ政権時代の移民入国規制などの反動から国境付近に移民が急増しています。
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今年初頭と比較し子供の移民の数は9倍に
国際連合児童基金ユニセフはメキシコ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスなどの国々では新型コロナウィルスの影響により、約1,100万人の子供たちが学校に通えず、「勉強」・「安全」・「希望」などの子供の権利と言われているあらゆるものが失われていると述べています。元々、新型コロナウィルス以前からこれらの国々では500万人以上の市民が生存支援を必要としていました。それがパンデミックの影響で更にその数が倍増しているというのです。
メキシコからアメリカに渡ろうとする子供の移民の数は2021年の初頭と比較し、380人から約3500人と9倍になっています。
ではなぜ急激にメキシコ・ホンジュラス・グアテマラ・エルサルバドルからの子供の難民が増加したのでしょうか。
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難民急増の背景にあるメキシコの移民法とバイデン政権
現在難民の30%を子供が占めるようになった理由には、アメリカの政治転換とメキシコの法律が関連しています。
①メキシコの法改正
まず、メキシコ政府は移民法と難民法を改正したことで現在、移民収容所に子供難民を収容することを禁じています。以前まではアメリカに行かず、メキシコに留まることが多かったホンジュラス・グアテマラ・エルサルバドルからの難民がメキシコの法律の改正により、アメリカを目指さざるおえなくなったのです。
②バイデン政権による移民政策の緩和
トランプ政権時代は、中南米からの移民が厳格化されていましたが、
バイデン政権に交代したことで、移民政策の一部が緩和されました。
その影響により、多くの家族は助けを求めたり、米国内にいる親族と自分たちの子供を再会させてくれることを期待し、国境付近に急激に集中しているとBBCの南米派遣員は説明します。
また米国の法律では、親を伴わない子供に関して保護者が見つかるまで保護する場所を提供し、世話をすることが義務付けられていることも背景にあります。
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国境間の実態と今後の展望
中南米からアメリカへの旅は、最長2か月にも及ぶこともあると言われている過酷な旅です。その間に人身売買などの被害も多数発生しています。
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そんな過酷な状況を乗り越えてアメリカに辿り着いた中南米移民の未来は必ずしも保障されたものではありません。アメリカ政府は急増する移民の数に対応しきれず州の認可施設は逼迫しているのです。これに対し、ユニセフのラテンアメリカ・カリブ海諸国地域担当ディレクターのジーン・ゴウフ氏は「メキシコの移民の子供たちと母親の生活環境が今後、さらに悪化するのではないかと深く懸念している」と述べています。
更にメキシコ政府は米国境を目指す移民を取り締まるために南部国境に軍隊を派遣したことを発表しました。これにより、保護者を伴わない子供や家族が拘束される可能性が高いとされ多くの人は懸念を抱いています。
一方で移民問題の解決に向けて米国副大統領ハリス氏とメキシコ大統領ロペス・オブラドール氏は移民対策について協議し、5月7日に「戦略的パートナーシップ」構築の合意に至りました。両国は、この協議にて人身売買を取り締まることを強化すると述べています。
また、米国家安全保障会議(NSC)のロバータ・ジェイコブソン氏(メキシコ国境問題責任者)は、トランプ政権では打ち切りになっていたセントラル・アメリカン・マイナーズ
制度を再開することを発表しました。この制度は子供たちが母国で申請を行えばアメリカに住む家族や親族に合流できるというプログラムです。
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まとめ
深刻化する移民・難民問題の今に今回は焦点をあて解説致しました。
今後もメキシコ関連の時事問題をご紹介致しますので要チェックです!
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