【2014年以来初、1ペソ=8円台に突入!】
昨年の【メキシコ経済事情 2022】の記事では、メキシコの物価上昇やコロナ禍後のメキシコ経済成長の展望を特集しましたが、その中でも円安傾向にあるメキシコペソについても焦点を当てました。2022年7月時点では、1ペソが6.74円にまで円安が進み、約5年ぶりの水準となりました。そして、1年が経った2023年7月現在、1ペソは8.49円(7月5日時点)に達しています。
2014年から約9年振りとなる8円台を記録しました。
【メキシコ経済事情 2022】世界的な物価上昇やメキシコ経済、円安がもたらす日本人への影響をまとめました。【メキシコペソ対円の推移】
世界全通貨対比で円安が進むなか、メキシコペソ対円においても円安傾向が続いています。円安円高の為替相違に関しては一概にどちらが良いか悪いか、メリット・デメリットがあるかを語ることはできません。
このメキシコペソ対円についても、メキシコ在住歴やどのタイミングでメキシコに渡航したかなどで人それぞれ感じ方や捉え方が変わってくるものだといえます。
過去15年を振り返ると、2008年のリーマンショック以前は1ペソ=10.81円という水準で推移していました。
しかし、リーマンショック後に急速な円高・ペソ安の動きが起こり、2009年2月には過去最低の1ペソ=6.35円まで下落しました。
その後、2014年には一時的に8円台まで回復しましたが、以降は5〜6円台で推移していました。特に2013年から2019年は日系自動車メーカーや日系企業の進出が増え、円高・ペソ安はそれらの企業にとって追い風となりました。また、日本からの渡航者にとっても、メキシコの物価が安く感じられたため、日本人の旅行者が急激に増加したのもこの時期といえます。
JETRO (日本貿易振興機構)
しかし、2020年のコロナショックにより1ペソ=4円台まで下落しました。この期間には渡航規制もあり、かつ1ペソ=4円という未知の数字も相まって日本がとても遠く感じた方も多いのではないでしょうか?
また、筆者自身は2007年にメキシコに移住し、1ペソ=10.81円からのペソ暴落やコロナショック直後の1ペソ=4.4円という大暴落を経験しました。そのため、今回のペソ高(1ペソ=8円台)は個人的には「ようやくここまで戻ってきたか!」という喜びを感じています。というように、この円安ペソ高については、読者の皆様にとってもそれぞれに思い入れがあるのではないでしょうか?
【ペソ高の原因は?】
円安ペソ高の原因について見てみましょう。一つの要因としては、コロナ禍の終息と共にメキシコの経済活動が回復し、成長を続けていることが挙げられます。しかし、円安はメキシコペソだけでなく他の通貨に対しても世界的な傾向となっています。
世界的な円安の主な原因は、各国の金利引き上げの中で日本の金利が低いことが挙げられます。メキシコも同様に、メキシコ中央銀行は急速な物価上昇に対応すべく、政策金利を引き上げてきました。
また、米国との金利差を保ちつつ、ペソ相場の安定も視野に入れ、2023年5月18日の金融政策決定会合では、政策金利を11.25%で据え置くことが決定されました。
(注:政策金利とは、景気や物価の安定など金融政策上の目的を達成するために、中央銀行(日本では日本銀行)が設定する短期金利(誘導目標金利)のことで、金融機関の預金金利や貸出金利などに影響を及ぼします。)
メキシコの政策金利は2020年12月には4.25%、2021年12月5.5%、2022年11月10%そして2023年6月には11.25%と大きく推移しています。同期間で日本の政策金利は0.1%と変わっていません。各国の政策金利の設定における議論については今記事では触れませんが、この金利の差が円安ペソ高の大きな要因の一つとされています。
JETRO (日本貿易振興機構)
【今後の展望は?】
先述で少し触れましたが、メキシコの政策金利は、消費者物価指数上昇率(インフレ率)に基づいて決定されます。現在のインフレ率は高水準ではありますが、2023年に入り低下傾向にあります。メキシコ中央銀行はインフレの鎮静化を図るため、インフレ率が目標値の2%〜4%を上回る場合には政策金利を引き上げ、逆に下回る場合には景気刺激のために引き下げる方針です。メキシコのロペスオブラドール大統領も、インフレ率が少し下がり既に下降傾向にあると述べており、インフレが落ち着き次第、政策金利の引き下げが期待されています。
ペソ高が行き過ぎると、米国やカナダ向けの輸出にも悪影響を及ぼすとされており、メキシコ中央銀行はインフレ率を警戒しながら慎重に政策金利を設定していく方針です。
メキシコは世界14位のGDP規模を持つ経済大国であり、自動車、電子機器、航空宇宙などの製造業が盛んで、日本を含め多くの国際企業がメキシコを生産拠点として選んでおり、メキシコペソの動向や経済成長はこれらの国、企業にとっても重要な指標であり、注目しています。
【日本人への影響】
円安ペソ高は、日本人観光客にとってはメキシコ旅行費用の増加を意味します。コロナ規制の撤廃に伴い、メキシコへの渡航者数は増えつつありますが、メキシコの物価上昇と合わせて、「メキシコ=物価が安い」というイメージは薄れてきています。
一方、メキシコから日本へ渡航するメキシコ人や在墨日本人にとっては、1ペソ=4円台から8円台になった現状では、金銭的にみても日本がより近く感じられるかもしれません。例えば、1ペソ=5円時には1000ペソは5000円でした。しかし、現在の1ペソ=8円では8000円になります。この差はとても大きいですよね。
【日本産精米に追い風?】
今年4月にアミーガでも特集した日本産精米がメキシコでも食べることができると期待が大きく、その後の動向も注目されました。
5月には在メキシコ日本大使館、農林水産省、JETROメキシコ事務所の主催でワークショップが開催され、メキシコの多くの方々に日本産精米の質の高さ、美味しさ、そして調理例などを紹介し輸入解禁において良いスタートとなりました。
【メキシコ日本産精米の輸入を解禁】メキシコで以前から購入できるカリフォルニア米や他品種の米と比べても格段に美味しい日本産精米がメキシコで広く普及するうえで重要な要素の一つにその価格が挙げられていますが、解禁が始まった3月は7円台前半を推移していたメキシコペソは現在8円半ばとなっています。メキシコの政策金利は当面現状維持されるだろうとの見解があるなか、そうなれば、日本産精米のメキシコ国内における販売価格について割高感は低下することから、この円安ペソ高は日本産精米のメキシコ国内普及にとって追い風となると期待されています。
【まとめ】
いかがでしたか?今回は【メキシコ経済事情 2023】のテーマとして円安メキシコペソ高について紹介しました。
メキシコペソ対円の為替相場の変動は日本在住、メキシコ在住に関わらずメキシコに関わる全ての人にとって見逃せないトピックといえます。今後のインフレ動向がメキシコペソの推移に大きく影響するようです。amigaでは引き続き注目し、今後もその動向を皆様にお伝えしていきます。
最後に、メキシコの魅力は為替に影響されるものではないですよね。どうしても私達は「1ペソが◯◯円になった!」と為替の変動に一喜一憂してしまいますが、メキシコには沢山の魅力がつまっています。これからも日本とメキシコ間での相互の渡航が活発になることを期待しています。amigaではメキシコの魅力を沢山紹介していますので是非そちらも読んでみてくださいね。