『日本人としての自覚』TOYOTAを通じて『日本』を広めたい 久我 高輝

2015年4月15日にTOYOTAはメキシコのグアナファトで、新工場を建設すると発表しました。 そこで、今回はメキシコの最前線で活動している、TOYOTAの久我高輝さんへインタビューを行いました。

−生年月日、略歴をお願いします。

46歳。

幼少の頃は父の仕事の関係で、その後駐在を通じて計26年人生の半分は海外で過ごしました。上智大学経済学部卒業後、三井物産へ入社、9年勤めた後コロンビアの企業に転職。2年間勤務しながら夜間大学に通った後、トヨタに入社。今に至ります。

「海外で育ったからこそ芽生えた日本人としての強い自覚」

−どの様な国へ行かれたのですか?

幼少は欧州、駐在は中南米です。小6〜中3までは日本人学校、あとはインターナショナルやアメリカンスクールでした。この経験が海外生活の抵抗を減らす一方で、日本人としての自覚が芽生えるようになったベースだと思います。

特にきっかけとなったのは、高校時代、友人に「君は日本人としてどう思うんだ」と質問され答えられなかったことでした。当初、高校卒業後はアメリカの大学に入学するつもりでしたが、日本人としての自分と向き合わずにいた自分を知り、そのままの人生を送ることに不安を感じるようになりました。父が勤めていた日系企業・ブランドへの憧れもあり、将来的には日本での就職も見据えて日本の大学への進学を決めました。

「商社時代を経て、TOYOTAへ入社」

−転職をしようと思ったきっかけは。

商社時代メーカーの方との付き合いを通じて、「メーカーで働いてみたい」と感じ始めていました。

丁度その頃コロンビアのメーカーに転職する機会があり、同時に勉強をしたい思いもあったので、思い切って決断、一区切り付いた段階で今の会社のトヨタから声を掛けてもらい、再度転職しました。

−メキシコだから、特に大変ということはありませんか。

正に今やっている家探しとか、細かい大変なことはたくさんあるのですが、特に大きな苦労はないですね。

−仕事上では?

達観してしまっているので、気にならないです。笑 たしかに時間守らないとか言い訳をするなとか思うことはありますが、それでストレスを感じていたらキリがないですね。

「メキシコで新設される工場で採用されるTNGAとは」

リーマンショック以降に海外への投資が決まったのが、中国とメキシコでした。

メキシコで新設される工場で、TNGA※(Toyota New Global Architectureの略。「もっといいクルマ」作りを実現するための新しい仕組み。「車種毎に異なっていた基本部分の競争力を世界トップレベルに引き上げた上で、複数の車種を同時に企画・開発することにより共有化を図り、地域最適化・差別化で個性や魅力あるクルマづくりを目指す」。という新方針を世界で初めて採用するとのことですが、これはなぜでしょうか。

日本の既存の工場では既にTNGAのクルマづくりを始めていますが、海外の全く新しい工場で取り入れるのは初めてです。これからのもの作りのやり方を始める新たなきっかけとして、これまでのように量ではなく、質も重視することで予算を効率化、結果として地域にも還元できるような工場づくりを目指しています。

「思い通りいかないことを、冷静に理解することが必要」

−新方針を取り入れる中での苦労は。

ローカルでビジネスを行う上で「やる」といっていたのに進まないことなど、苦労は数え切れません。ただ個人としてはストレスを感じませんので、日本から見ると「なんでそんなに呑気なんだ!」と思われているかもしれません笑 しかし動かないものは動かないので、そういった環境を理解して取組む柔軟性も必要だと思っています。

−北米の景気が悪化し、苦戦している機械関連の企業も多いようですが、今後の見通しはいかがでしょうか。

少なくとも自動車は今後も需要が続くと考えています。目先の動向よりは、機敏な対応を繰り返しながら、ぶれずに進めていきたいと考えています。

「2000人雇用への挑戦」

−人材教育が一番大変だと思います。2000人を雇用されるとのことですが、どうやってマネジメントされるのでしょうか。

チャレンジングであることは確かです。メキシコの新工場では企業のカルチャーや正しいと思う理念を信じて強い思いで進めていけば、結果は必ず伴うと考えています。公表の2000人の求人を予定していますが、どういった 採用方法で進めるかの思案は、2019年の立ち上がりに向けて今から 取り組み始めています。

−具体的な案があれば、教えていただけますか。

具体的にお話しするのは難しいのですがたとえば一般の学校等教育機関で研修プログラムを実施し、卒業したらトヨタで働いてみたい人を募る方法等を通じて、最終的に2000人規模を定着させたいと思っています。この人数ですとそれぞれバックグラウンドが違うので、差異を最大限埋めるような採用方法を考えているところです。

−メキシコの就職事情は、日本とは大きく異なる部分もあります。

確かにメキシコでは、1ヶ月分の給料をもらってすぐ辞めてしまうケースさえありますが、長く働き続けるメリットは日系企業だからこそ伝えられることがあると思います。大きなことはできなくても、「トヨタに来てもらってよかった」と思ってもらわないと、地域の人への貢献や調和には繋がりませんので、信念を持って従業員の皆さんに接していこうと思います。すぐ結果が出ることでは勿論ないのですが…。

−役所の方も、日系企業が入ってくるのを歓迎しています。企業の方もメキシコ人向けにテレビ番組を見てもらったりする機会を増やし、「日本人とは何か」を知ってもらう機会などを設けているそうです。

面白いですね。当社は販売会社がメキシコシティにあるのですが、多くの日本を訪れたことのあるメキシコ人が「日本の新幹線はすごい」と言います。新幹線の速さではなく、時刻表通りに発車することに驚いているのです。そのようなことを知ってもらう良い機会だと思います。メキシコ人の感想を聞くと自分の国を誇りに思える時がありますし、日系企業として、もっと頑張ろうではないかという気持ちになります。

−その他、社内のロイヤリティーを高めるために何ができるでしょうか。

ヒントとして考えているのは、メキシコ人は殆どの人がカトリックであることもあり、家族を大切にします。これは組織への帰属意識が強いので連帯感は作りやすいですし、仕事にもその考え方を持ち込める余地はあると個人的には感じています。

「メキシコライフを楽しむには」

−ケレタロで楽しみにしていることはありますか。

先月引っ越してきたばかりなのでまだこれからですが、ケレタロはコンパクトな街という印象ですね。食事も美味しいですし、レストランや  周辺ワイナリーの探索、旧市街を見て回るのも楽しい街ですね。日本人も増えていますので日本食レストランがこれから増えていくのも期待しています。

−アメリカに駐在されていたこともあるそうですが、メキシコとの違いは。

駐在経験のあるトーランスは日系企業が多く、レストランや病院、スーパーで日本語が通じますので別世界です。メキシコは一般的に英語すら通じないので、そういった意味での苦労はあるかもしれませんね。

−奥様とお子様と一緒に赴任されているのですよね。ご家族での駐在のアドバイスがあればお願いします。

個人的には、駐在生活は家族と一緒の方が絶対いいと考えています。日本とは異なり家族で過ごす時間も自然に増えて家族同士の繋がりが強くなるメリットがあるからです。その上で一番いいのは、住む前に遊びに来てもらい、直に知ってもらうこと。メキシコって意外といいところだね、と思ってもらえればラッキーです。とは言っても、そう必ずしも思えてもらえない場合こちらでの生活を強要するのは難しいのも現実です笑 

−久我さんの場合は、途中で奥様を呼ばれたんですね。

私の場合、妻にはあえて素敵なところを 紹介して、最初に良いイメージをもってもらうことが出来て一緒に住むことになりました。当然来てみて異なる印象を受けたこともあります。例えば買い物に行ってこんな嫌な思いをした、という話もしますが、でも意外にこんないいところもあるよね、と前向きに捉え生活する姿勢・努力は大切だと思います。

−久我さんはメキシコがお好きなんですね。

・・・好きですね。さもなければ大きなプロジェクトを通じて、仕事に取り組むことは難しいと思います。「日本人として働く」誇りを持てること、メキシコというある意味ホットな国で働けるプラスαの楽しさの両方を味わえる仕事は、海外経験が長い自分にも合っていると思います。

−では最後に、今後の目標を教えてください。

仕事に関しては、今の仕事をやり遂げることです。プライベートについては、自分はもちろん家族にも楽しんでもらって、最後には「メキシコに来てよかった」と皆で思えるように、頑張っていきたいですね。

インタビューご協力頂きありがとうございました。

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