世界環境デー、メキシコでは何が行われる?
6月5日の世界環境デー(Día Mundial del Medio Ambiente)に合わせて6月1日から8日までキンタナ・ロー州でFeria Ambientalという環境フェアが開催されます。国連によりキンタナ・ロー州が世界環境デーの国家本部に選ばれたからです。
期間中に環境問題や環境保護に関する講演会や会議、アクティビティが行われます。国連環境計画や連邦局、州、自治体などからの参加が予定されています。今年のテーマは「プラスチック汚染の解決策」です。
メキシコ人の環境への意識
日本人から見ると全体的にメキシコ人の環境意識はあまり高いとは感じられません。
まず日本よりも街や道端にゴミが多く見られ、公共の場所でゴミをゴミ箱に入れない人がいるのが分かります。
また特に日本人がメキシコで生活をしていて驚くことの1つがメキシコのゴミ処理ではないでしょうか?日本のようにゴミ回収のルールは市町村により異なりますが、日本のように細かい分別はしていません。分別が何もなくペットボトルも生ごみも缶も燃えるゴミもすべて1つの袋にいれてゴミを出すところがほとんどです。
しかし缶や段ボールなどを持っていけばお金と交換してくれる場所もあり、外に出されているゴミから売れるものを分別して回収しお金と交換して生活している人々もいます。洗濯機やベッドのマットレスなど粗大ごみを回収しているトラックもよく走っており、要らなくなった粗大ごみを買い取ってもらえます。
スーパーで売っているシャンプーや洗剤などは日本に比べると詰め替え商品が少なく、毎回普通の容器の商品を買うことが多いです。
しかしメキシコシティーは日本より早くからプラスチック製品やビニールゴミ袋は有料ではなく禁止になっていました。スーパーマーケットで袋が必要な時は、エコバッグのような袋を購入する必要があります。また日本ほど過剰な包装はあまりされていません。
スーパーではなくティアンギス(青空市場)や市場で買い物をすると基本的に量り売りなのでよりゴミを出さずに買うことができます。
電化製品などは安く修理できるため、壊れたりしても直ぐ新しいものを買わずに修理してまた使うことができます。ソファなどの家具も修理したり革や布を張り替えてくれるお店が多いので繰り返し使うことができます。
日本ではあまり見かけないですが自分で容器を持っていくシャンプーやボディソープ、クリームなどのスキンケア用品などの量り売りをしているお店もあります。
メキシコシティーのEco biciのようなシェア自転車は多くの州で実施されています。
エコフレンドリーやサステナブルを謳ったホテルもあります。各ホテルにより環境に対する取り組みは異なります。水洗トイレではなく使用後はおがくずを入れて微生物の力で分解するバイオトイレを設置していたり、太陽光発電を使っていたり、雨水をためて使用したりと環境に配慮したホテルが各地にあります。
メキシコでは環境への意識が人それぞれで、差があります。ゴミ処理の方法など政府が変えていくしかない課題もあります。しかし自分が意識して買い物したり行動したらかなり環境へ配慮した生活ができます。これからは人々の環境への意識を高めて子供たちへ教育していくことが大切ではないでしょうか?
メキシコの環境問題
●大気汚染
メキシコで最も重大な環境問題として知られているのが大気汚染です。1992年にメキシコシティは世界で最も大気汚染が酷い都市だと国連で発表されました。
メキシコでの大気汚染がここまで深刻な原因の1つは大規模な工場など産業から排出されるガスなどの大気汚染物質と自動車からの排気ガスだと言われています。さらにその汚染物質排出を制限する規制や法律がまだ十分でないことがメキシコの大気汚染のもう1つの原因です。メキシコの汚染物質排出規制や法律は時代遅れで過度に許容されていると言われています。
大気汚染の解決策として、メキシコシティなど首都圏では自動車による排気ガス削減のため車両を制限する「ノーカーデー」を設けたり、排気ガス検査などの政策があります。
企業などに対しては揮発性有機化合物(VOC)の排出を制御するための機械の設置、原材料をより環境への影響の少ないものに置き換えることを促進する規制を設けました。
「ノーカーデー」反対デモ 渋滞招き環境・経済に更なる懸念深刻化するメキシコシティの大気汚染!しっかり対策を!メキシコ リチウム国有化へ。EV、ハイブリッド車など電動車普及への政策と展望●森林伐採
メキシコの森林伐採のスピードは世界5位と言われています。住宅地、工場、耕作地などにするためにジャングル、マングローブ、森林が失われています。特にメキシコ南部で多くの森林伐採が行われています。最近では「マヤ鉄道」の建設ためにユカタン半島の密林が伐採されることに多くの人が批判しています。
国家森林委員会(CONAFOR)と連邦環境保護検事局(PROFEPA)は各州の森林保護の代表の参加を募り森林の違法伐採を取り締まる活動をしています。違法な製材所を閉鎖したり木材、車両、工具の押収をしました。
また政府団体だけでなく民間でも植林活動をしている団体がたくさんあります。
カンクンでの移動が便利に?壮大な高速鉄道計画。マヤ鉄道(トレン・マヤ)とは!?●水質汚染
メキシコは環境への化学物質の流失が最も多く発生している国の一つです。産業など工場からの排水だけでなく家庭からの排水も川、湖、海岸まで広がります。
大気汚染のように排水規制が緩いのと排水を浄化するシステムなどの管理が整えられていないのが原因です。2014年の工業排水のうち約31%のみが処理されました。
まだまだ下水道の整備が十分とは言えませんが、下水道の整備と処理場の数は増加しています。1992年は394か所しかなかった処理場は、2014年には2,337か所の自治体の処理場と2,639か所の工業処理場にまで増えました。
また国内の川、湖、海岸など様々なところで水質調査を行いモニタリングしています。
●生物多様性の喪失
大気汚染、水質汚染、森林伐採などの環境問題が続き、多くの生物が絶滅の危機にひんしています。ウーパールーパーという名で日本でよく知られているメキシコサンショウウオも絶滅が心配されている種です。
2016年に生物多様性に関する国家戦略と2030年までの行動計画を発表しました。また、メキシコ・カンクンでCOP13(生物多様性条約第13回締結会議)が行われカンクン宣言が採択されました。生物多様性の保全と持続可能な利用を農林水産業や観光業において主流化すること、2010年に採択された愛知目標などの達成に向けた取り組みを強化するという内容の宣言でした。
カリブ海、バハカリフォルニア半島の諸島、タマウリパス山脈などを生物圏保護区とし、メキシコ固有種や絶滅の危機のひんしている種が生息している自然環境を守り保護される生物の個体数を増やす努力をしています。
2022年時点では185の自然保護区があり、生態系を保護したり、生物多様性の適応を可能にしています。
深刻化する環境汚染。100年後にはもう見られないかもしれない【メキシコ固有絶滅危惧種】つい他人に話したくなる!ウーパールーパーが秘める可能性SDGsに対する取り組み
SDGsはスペイン語でObjetivos de Desarrollo Sostenible(ODS)と言います。
2022年の国連からのメキシコのSDGsのための予算を見ると、1位は設定されている目標の13番の「気候変動に具体的な対策を」2位は3番「すべての人に健康と福祉を」3位は15番の「陸の豊かさも守ろう」予算別にみると環境問題に対する目標に力を入れているのがわかります。
民間企業でもSGDsへの取り組みをしている企業があります。
パン製造で有名なGrupo Bimboは環境保全と資源の正しい使用に取り組んでいます。Grupo Bimboはメキシコの研究機関であるCIMMYTと共同で再生農業を達成するための取り組みを始めました。持続可能な作物のトウモロコシと小麦を栽培することで農産地を支援することが目標です。この再生農業により土壌の改善とこれまで知られていなかった持続可能な技術などを農家に届けることができました。
メキシコでコカ・コーラを販売している大手財閥のFEMSAはメキシコで製造に使用するエネルギーの85%を風力や太陽光を使ったクリーンエネルギーで供給することを目標にしています。
大手スーパーのWalmart Mexicoは2021年に使用したエネルギーの52.5%を風力・水力・太陽光発電など再生可能エネルギーで賄いました。また冷蔵庫や冷凍庫から排出されるガスが環境への負担が少なくなるよう冷却機能を変えていったり、電気自動車を導入し地球温暖化への配慮をしています。
【実は進んでる?】SDGsメキシコにおける環境対策参考ウェブサイト
まとめ
メキシコにはまだまだ様々な環境問題があります。発展途上国として経済的に成長しながら環境問題にも目を配って問題を解決していくことが大切です。そのためには政府や企業の参加だけでなく国民一人ひとりが環境のためにできる行動をしていくことが必要です。また今ある負の遺産を次の世代に残さないよう教育していくことも大切です。
6月5日の世界環境デーもそのきっかけの1つになるといいですね。
Amigaではこれからもメキシコに関するニュースをお届けしていきます!